07年9月6日 聖教新聞 方面長協議会での名誉会長のスピーチ(下)-2

07年9月6日 聖教新聞
方面長協議会での名誉会長のスピーチ(下)-2

 「仮面の後ろに隠された嫉妬」 
 一、私がともに対談集を発刊した、ヨーロッパ統合の父・クーデンホーフ・カレルギー伯爵は、次のように洞察された。
 「ソクラテスは嫉妬から毒殺され、シーザーは嫉妬から刺殺され、アルミニウス(=ローマ軍を破った将軍)は嫉妬から撲殺されている。
 すぐれた者にたいするこのような闘争は、中世においても、近世においてもつづいている」(鹿島守之助訳『クーデンホーフ。カレルギー全集5』鹿島研究所出版会)
 「ヨーロッパの歴史においては、人間の嫉妬が偉大な指導者を倒して滅亡させている。この嫉妬は、幾千もの仮面のうしろに隠されているのである」(同)
 嫉妬が偉大な指導者を倒そうとする。これが歴史の語るところである。
 歴史観を養えば、複椎な現実も、すっきりと見えてくる。

無冠の民衆こそ偉大
キング博士 団結して変化を生み出せ!

 多彩な人々を生かし切れ! 
 一、中国の古典『法言』では、天下を争った項羽と劉邦を対比分析しながら、こう述べられている。
 「衆智を尽す者は勝ち、独力で戦う者は負ける」(鈴木喜一著『法言』、明徳出版社
 自分だけで、何から何までやろうとすれば敗れる。それは器の小さいリーダーのすることだ。
 多くの人々の知恵を集め、多彩な人々の力を十分に生かし切ってこそ、勝利は得られる。
 そのためにリーダーは、公平でなければならない。私利私欲や、小我にとらわれては、リーダー失格である。大きな人格を培ってこそ、将に将たる者の資格が生まれる。
 一、「人びとが互いに交わり合う場合には、味方を敵にするのではなく、敵を味方にするように振舞うこと」(ディオゲネス・ラエルティオス著、加来彰俊訳『ギリシア哲学者列伝(下)』岩波文庫
 これは、古代ギリシャの大哲学者ピタゴラスの言葉とされている。
 外交で勝つ。言論で勝つ。振る舞いで勝つ。その根本は誠実である。

 陰の人が偉い 
 一、アメリカの人権の指導者キング博士は、次のような体験を語っている。
 ──以前、キング博士が乗っていた飛行機が離陸する直前、故障が見つかった。しばらくすると、窓の外で、汚れた仕事着を着た6人ほどの地上整備員が、油にまみれて作業を始めるのが見えた。その後、修理は成功し、飛行機は無事に飛び立った。
 飛行中、しみじみと博士は思った。皆から注目される場所にいる人が偉いのではない。目立たないところで、汗と油にまみれ、だれからも賞讃ざれずに奮闘している、彼ら地上整備員がいるからこそ、巨大なジェット機は飛べるのだと──。
 私は、航空業界で活躍してこられた、わが空友会、地友会の同志と重ね合わせながら、このエピソードを心に留めた。
 キング博士は、この話を通して、日々の生活の中で人権の勝利のために懸命に戦っている、幾千幾万の「無名の戦士」たちへの感謝を語った。
 「人間進歩の道を計画することのできるすばらしいパイロットはいる。(中略)だがもし地上整備員がいなかったとすれば、人間の尊厳と社会正義への戦いは軌道に乗ることはないであろう」(クレイボーン・カーソン編、梶原寿訳『マーティン・ルーサー。キング自伝』日本基督教団出版局)
 キング博士の言葉通り、アメリカの公民権運動の勝利は、一握りのリーダーの手柄ではなく、無冠の民衆による不屈の団結のたまものだった。
 キング博士は叫んだ。
 「変化を生みだすためには、人びとは力をあわせていっしょに仕事ができるように組織しなければならない」(猿谷要訳『黒人の進む道』サイマル出版会
 「心のなかの強さと誠実さが、われわれをもう一度完全なものとするだろう」(同)

リーダーは謙虚に!一心不乱たれ!
戸田先生 汝自身に力をつけよ

 「一日見ず、三月の如し」 
 一、同志の団結が勝負を決する。
 戸田先生は、近代日本の夜明けを開いた志士の一人、高杉晋作がお好きだった。晋作といえば、「奇兵隊」が有名である。
 晋作の師匠・吉田松陰は、時代を変えるには民衆の力しかないと結論した。晋作は、身分を問わず有志を集め、民衆の部隊・奇兵隊をつくった。
 晋作が、同志の桂小五郎に送った書簡には、次の一節が見える。
 「一日見ず、三月の如し」(堀哲三郎編『高杉習作全集(上)』新人物往来社
 "一日会わないでいると、三カ月も会ってないように思える"との意である。同志を大切に思う真情があふれている。
 学会もまた、同志を大事にしてきた。位や権威ではない。同志の心と心の結びつきで勝ってきた。
 "自分さえよければいい"というのは権力の魔性だ。傲慢な人間、威張る人間は、学会に必要ない。
 「身軽法重(身は軽く法は重し)」である。「不自惜身命(自ら身命を惜しまず)」である。大事なのは「自分」ではなく「法」である。それが仏法だ。また、広布を進める唯一の和合僧団たる学会を護ることである。
 学会は、師弟の精神を根本として、全員が平等の世界だ。特権や差別など、断じて許してはいけない。学会は、どこまでも民衆のために存在し、民衆のために戦う団体として前進していくのだ。
 上の立場にある人間が、謙虚に、謙虚になっていくことである。
 リーダー一人一人が、断固たる自信と、崇高な信念を持ちながら、最高の礼儀と慈愛にあふれた指導者に成長していただきたい。

 皆が喜び勝てる名指揮を執れ 
 一、戸田先生は、よく言われていた。
 「汝自身に力をつけよ。汝自身に悔いなき信念を持て!」
 「力を持て! 全軍が勝利の方向に進めるよう、模範となっていけ!」
 広布の戦いに、全部、勝てるように、そしてまた、皆が喜んで戦い、勝っていけるように、しっかり祈って、名指揮を執っていただきたい。
 祈って祈って祈り抜いて、語って語って語り抜いて、礼を踏み、誠意を尽くし抜いていくのだ。
 気取りがあってはならない。師匠のため一心不乱に戦い、身を粉にして同志に尽くしてこそ、本物の弟子である。
 皆からよく見られようとお世辞を使ったり、人気取りに走るのは、本物ではない。それは見栄である。その点、戸田先生は、本当に厳しかった。要領があってはならない。ずるい幹部ではいけない。
 私は、戸田先生のもとで、先生に喜んでいただき、社会から「さすが学会だ」と讃嘆されるような前進を期していた。日本中の度肝を抜くような勝ち戦をしようと決めていた。そして、その通りに実行した。
 さあ、きょうから、全員が「勝利」を合言葉に戦っていこう!
 同志のため、日本のため、世界のために。
 そして、自分自身の栄光の人生と、創価の師弟の勝利のために!
 どうか、体を大事に。
 壮年部は、奥さんによろしく!
 婦人部は、ご主人によろしく!
 青年部は、お母さん、お父さんによろしく!
 同志の皆さんに、くれぐれもよろしく!(大拍手)
 (2007・8・28)

方面長協議会での名誉会長のスピーチ(下)〔完〕