小説「新・人間革命」 12月10日 新世紀21

山本伸一は、このころ、人間共和の新世紀を築くために、各界の指導者や識者との対話に全力を注いでいた。

 七月十二日には、日本共産党宮本顕治委員長と都内のホテルで会談した。これは毎日新聞の連載企画で、平和論、組織論、文学・芸術論など、幅広い人生対談となった。

 二人の会談は、かつて伸一と対談した作家の松本清張の勧めによるものであった。

伸一が宮本との会談に踏み切った動機には、選挙の折などに起こる、公明党を支援する学会員と共産党員の間の、軋轢やトラブルをなくしたいとの思いがあった。

また、彼には、人類の未来のために、共存は不可能と言われてきた宗教とマルクス主義の、共存の可能性を見いだしたいとの強い思いがあった。

 松本の提案で、二人の対談の前に、まず、両者の代表を決めて予備会談を行い、双方の考えの合意事項を文書にすることにした。

 予備会談は前年の十月から数回にわたって行われ、十二月末に、相互理解への最善の努力をすることや、誹謗中傷を行わないことなどをうたった七項目を合意した。

この文書が、いわゆる“創共協定”である。協定の期間は十年である。

 この翌日、伸一は、松本清張邸で、初めて宮本委員長と語り合ったのである。

 その後、代表同士の話し合いのなかで、伸一と宮本が毎日新聞の企画による対談を行ったあとに、協定を発表することになった。

 そして、七月十二日の対談となったのである。語らいは「ビッグ対談」として、七月十五日から三十九回にわたって連載された。

 対談の連載が続く七月の二十七日には、“創共協定”が発表されている。

この協定が延長されることはなかったが、宗教とマルクス主義との共存という、伸一がめざした文明論的テーマは、中国やソ連などの社会主義国創価学会の、友情と信義の交流となって実を結んでいくのである。

 対話をもって世界を結ぶことこそ、仏法者である伸一の、人生のテーマであった。