第1回 さあ 出発しよう! 2012.5.1
みんなが勝つために私はいます
陽気に力強く大道を歩む。
今から後は幸運を求めない。
この私自身が幸運なのだ
池田先生の新連載「未来対話──君と歩む勝利の道」がスタートします。聞き手は、未来本部の代表らによる「未来対話」編集委員会です。
池田名誉会長 「未来ジャーナル」の誕生、おめでとう!
こうして新しい新聞紙上で、最も期待し、信頼する未来部の君たちと対話できることが、私はうれしい。
私は、日本中、世界中から、毎日毎日、たくさんの報告やお便りをいただきます。
大切な同志の近況はもとより。各国の指導者や学識者の方々からのお手紙や連絡もあります。
また、いくつかの対談も、連載が続いています。
そうした中で、何にもまして私の心が弾むのは、中等部や高等部の皆さんが元気に成長している姿や一生懸命に努力している様子をうかがうことです。
ぐんぐんと伸びていく君たちの若き生命ほど、まぶしいものはありません。
もちろん、一生懸命に努力しても、なかなかうまくいかないこともあるでしょう。しかし、一生懸命であるということ自体が、素晴らしいのです。
自分では意識していないかもしれないけれど、生きることは戦いです。全細胞が、生きよう、生きようとしている。目に見えない病原菌とだって必死で戦っている。だから、毎日、成長するんです。
日蓮大聖人の仏法は、一生懸命、生きる人のためにあります。生きて生きて、生き抜くためにあります。幸福になるためにあります。勝つための信心です。
ですから、みんなが勝つために、私はいるんです。
本当なら、すぐにでもみんなのもとへ飛んでいき、語り合いたい。みんなが、今、悩み、考えていることを、一緒に考えていきたい。
一番大事な皆さん方を、少しでも励まし、力づけたいのです。
皆さん方のことを真剣に応援してくれている、お兄さんやお姉さんたちもまじえ、また、時には、お父さんやお母さん方もお招きして、お茶でも飲みながら、さわやかな緑の公園で楽しく語り合う。そんな思いで、この「未来対話」を始めましょう。
★☆
──中等部、高等部のメンバーは、本当にさまざまな悩みを抱えています。勉強や将来の進路、学校での人間関係、自分の性格や容姿のこと、両親のことなど……。厳しい経済不況も、メンバーの家庭に深刻な影響を与えています。「いじめ」の問題も根深くあります。最近は、インターネットを悪用したケースも増えています。
名誉会長 複雑な時代だね。本当に難しい問題ばかりです。
私の青春時代とは、今は世の中が大きく違います。
みんなは元気かな、大丈夫かなと、何をしていても、皆さんのことが心から離れません。
今から40年前に、私は、偉大な歴史学者のトインビー博士と対話を交わしました。
当時、80代だった博士は、ひ孫たちの世代が生きる時代のことを基準にして、物事を考えていると言われました。未来のために心を尽くしていくことが、若々しく生きる秘訣であるとも、微笑んでおられました。
私も博士と同じ年代になって、その気持ちがよく分かります。
私も、皆さんから、たくさん教えてもらいたい。そして、共々に未来へ進んでいきたいのです。
未来を見つめ、よりよくしていくために、貴重な鏡となり、糧となるもの──それが、歴史です。また先人たちの知恵です。
ですから、私が学んできた人類の精神の遺産、また戦いのなかでつかんできた「心の宝」を、皆さんにお伝えしながら、対話を進めていきたいと思います。
とくに私は、青春時代、「戸田大学」に学びました。毎日毎朝、人生の師である戸田城聖先生から万般の学問を教えていただいたのです。
先生は、それはそれは厳しかった。「大作、今、何を読んでいる?」とも、よく聞かれました。
一冊の本も、深く深く掘り下げて、そこに書かれた思想の真髄を教えてくださいました。
一つ一つが、ありがたい薫陶でした。それが、私の「宝」です。そのすべてを、みんなに贈りたいのです。
★☆
──ありがとうございます。
メンバーにとって、池田先生との大事な原点になると思います。とくに今回の大震災を通し、皆が共々に立ち上がる「言葉の力」があらためて見直されています。
名誉会長 本当にそうだね。
東北の被災地でも、中等部、高等部のみんなが、友だちや家族で励まし合いながら、苦難と戦い続けていることも、よくうかがっています。
あまりにも過酷な試練の中で、懸命に自分の思いを言葉にし、声をかけ合って、負けるものかと、前へ進んできました。
偉い。本当に偉い。私は、みんなを心からほめてあげたい。
人生には、言葉を失うような出来事がある。言葉では言い尽くせない悩みや苦しみもあります。
しかし、それでも言葉にして、少しでも分かち合うことができれば、そこから光が見えます。解決の道が開けます。言葉は心と心をつないでくれるからです。
この対話の副題は、「君と歩む勝利の道」だね。
私一人でもなく、今、この新聞を読んでいる君一人でも、あなた一人でもない。
どこまでも、私たちは一緒なんです。
私と、また良き友、良き先輩、良き後輩と共に、一歩一歩、勝利へ向かって歩いていくんです。
その意味から、今回は、ホイットマンの詩を選びました。
ちょっと難しいかもしれないけど、私は大好きなんです。一緒に読みましょう。
──はい。アメリカの民衆詩人ウォルト・ホイットマンの「大道の歌」からです。
「徒歩で、陽気に、わたしは大道を歩き出す、
健康で、自由に……」
「今から後わたしは幸運を求めない、このわたし自身が幸運なのだ、
今から後わたしはもうこっそり話などはしない、もうひきのばしなどはせぬ、何ものをも入用《にゅうよう》としない、
家の内での愚痴や、知ったかぶりや、あら捜したらだらの批評など飽き飽きした、
力強く、満足して、わたしは大道を旅する」(『詩集 草の葉』富田砕花訳、第三文明社)
名誉会長 「大道の歌」という題名も素晴らしい。明るいじゃないか。
「大道」は、英語のタイトルでは「オープンロード」です。「開かれた道」「自由な道」「広やかな道」という意義もあるでしょう。
みんなの未来も、この詩のように、大きく大きく開けています。だれ人たりとも、皆さんの行く手をさえぎることはできません。
私がこの詩を読んだのは、戸田先生とお会いして間もなく、皆さんより少しお兄さんのころです。
私の青春時代は戦後の混乱期です。それまでの価値観が崩壊した時代です。私たち青年は、何も信じられなかった。
戦争が終わって、皆、どうやって生きていけばいいのか。確かなものが見出せませんでした。
加えて、私は結核を患っており、医者からは「30歳までは生きられない」と言われていました。夕方になると、決まって微熱が出ました。本当に苦しい毎日だった。精神的にも、肉体的にも疲れ切っていました。その中で、ただ本だけが「確かなもの」として目の前にあったのです。
当時、本は、なかなか手に入らなかった。皆さんには想像もつかないかもしれませんが、長時間、本屋の前に並んでも買えないこともあったのです。ホイットマンの詩集『草の葉』は、そうした時に手に入れた、まさに「宝の一書」でした。
私はこの詩を読み、心に残った部分は暗唱しました。口に出すたびに、大詩人の魂が私の血潮を駆け巡るように感じました。そうやって、自分を励まし、鼓舞していきました。
師匠・戸田先生は、そんな私に最高の大道を開いてくださったのです。19歳で初めてお会いし、先生の「大道の旅」を、共々に歩ませていただきました。
この詩のように、私は本当に幸運でした。何よりも幸せでした。もう何も、いりませんでした。
先生の進んでこられた道が、私の道になりました。先生の弟子として、私は戦い、勝ちました。今も、その道を歩み続けています。私には、一点の後悔もありません。
★☆
──私たちも、「大道の歌」から「さあ、出発しよう! 悪戦苦闘をつき抜けて! 決められた決勝点は取り消すことができないのだ」という一節を池田先生に教えていただき、自分自身を励ましてきました。
名誉会長 ありがとう。この言葉も、中等部、高等部のみんなに贈りたい大切な宝です。
何人もの青年に、この言葉を書き贈ってもきました。
生きることは、悪戦苦闘の連続です。でも、みんなが勝つことは決まっている。みんなが幸せになるのは決まっている。
「決められた決勝点」は、だれにも取り消せない。
悪戦苦闘が続く時、そこを突破するには、ど真ん中を勇敢に突き進むことです。それが、最も近道であり、直道なんです。
もがくこともある。悩むことだっていっぱいある。しかし、それは、勝利の大道を、まっしぐらに前進している証拠です。
時には、くたびれて立ち止まることもあるでしょう。大きく深呼吸して、また歩き出せばいいんです。私たちは、いつでも一緒です。どこまでも共に行く旅路です。
どうせ悪戦苦闘するなら、楽しく朗らかに進もう──私は、そうしてきました。一歩も引きませんでした。いじめられても、いわれなき非難中傷を受けても。師子王である戸田先生の弟子ですから。
ホイットマンにも、良き仲間がいました。彼の健康にも尽くした近代医学の父オスラー博士は、こう語っています。
「勇気」に燃えて、そして「快活」に荒波を乗り越えた分だけ、多くの人を励ませるのです。
いよいよ、みんなの時代だ。みんなにも、それぞれの「決勝点」がある。今は分からなくても、意味が見出せなくても、一生懸命、粘り強く進み続けていけば、必ず見えてくるものだ。
君の、あなただけの「決勝点」が絶対にあります。
さあ、出発しよう! 私がついています。毎日毎日、祈っています。「勝利の大道」を決勝点に向かって、明るく胸を張って、歌を歌いながら前進しよう!
この「未来対話」を通して!
──よろしくお願いします。
聞き手の私たち自身が、まず中等部、高等部の皆さんと共々に、成長してまいります。