2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「新・人間革命」 革心40 2015年 6月16日

「覚悟社」の結成にあたって、周恩来が起草したのが「覚悟社宣言」である。 そこには、「革心」と「革新」の精神を根本にして、運動を進めていくことが述べられている。 社会の「革新」のためには「革心」すなわち、心を革めることが不可欠である――そのとら…

小説「新・人間革命」 革心39 2015年 6月13日

梅園新村記念館を参観しながら、山本伸一は、峯子に言った。 「周恩来総理は、本当に偉大な指導者であられた。今回は、北京で奥様の鄧穎超先生とお会いできるんだね。楽しみだな。 とう先生は、周総理と共に、新中国建設に人生を捧げてこられた。 「人民の母…

小説「新・人間革命」 革心38 2015年 6月12日

十六日の午後、訪中団一行は、梅園新村記念館を訪れた。 ここは、一九四六年(昭和二十一年)五月から翌年三月まで、中国の国民党と共産党の和平交渉が行われた折、周恩来らが事務所、宿舎とした場所である。 中国では、三七年(同十二年)に第二次国共合作…

小説「新・人間革命」 革心37 2015年 6月11日

山本伸一の平和建設への覚悟を聞いて、雨花台烈士陵園で出会った人たちは、大きく頷いていた。 伸一は、さらに言葉をついだ。 「私は、母親が、戦争で長兄が死んだことを知って悲嘆に暮れ、肩を震わせて泣きじゃくる姿を、今でも忘れることはできません。 同…

小説「新・人間革命」 革心36 2015年 6月10日

雨花台烈士陵園で山本伸一の一行は、殉難の記念碑に献花を行った。 赤やピンクのバラの花で飾られた花輪を持った二人の訪中団メンバーを先頭に、伸一たちは、記念碑に向かって石畳の上を歩いていった。 碑には毛沢東による、「死難烈士万歳」の文字が刻まれ…

小説「新・人間革命」 革心35 2015年 6月9日

南京に到着した翌日の九月十六日は、朝から美しい青空が広がっていた。 山本伸一をはじめとする訪中団一行は、午前十時過ぎ、市内にある雨花台烈士陵園へ向かった。 雨花台には、こんな言い伝えがある。 ─六世紀初頭、この丘で法師が経を読誦したところ、天…

小説「新・人間革命」 革心34 2015年 6月8日

午後六時半過ぎ、山本伸一たちが乗った列車は、南京に到着した。 南京駅では、何人もの江蘇省の関係者が、温かい笑顔で迎えてくれた。 南京は、江蘇省の省都で、古代から都となり、中華民国が成立した時には、臨時政府が置かれ、国民政府の首都にもなった。 …

小説「新・人間革命」 革心33 2015年 6月6日

九月十四日の午後三時、山本伸一たち訪中団一行は、蘇州から列車で無錫に移動した。無錫駅には、四、五十分で到着した。 ここでは、中国の四大湖の一つである太湖を遊覧しながら、無錫市の関係者らと、友誼の語らいが弾んだ。 翌十五日は、陶器の生産で有名…

小説「新・人間革命」 革心32 2015年 6月5日

山本伸一たちは、虎丘塔をバックに記念撮影し、塔の下の休憩所で、蘇州市の関係者と懇談のひと時をもった。伸一は言った。 「皆さんへの御礼の心を込めて、私が作詞した歌を披露いたします。 この歌は、日本の中国方面の友に贈る歌として作りましたが、今回…

小説「新・人間革命」 革心31 2015年 6月4日

九月十四日、山本伸一ら訪中団一行は、刺しゅう研究所を訪れ、千年の歴史をもつという、蘇州の刺しゅうができあがる工程を見学した。 最初に案内された部屋には、高さ二メートルの六面のびょうぶがあった。梅、山茶花、竹に鳥を配した、美事な構図と鮮やかな…

小説「新・人間革命」 革心30 2015年 6月3日

蘇州に向かう車窓には、のどかな田園風景が果てしなく広がっていた。二期作目なのか、緑の稲が風にそよいでいた。時折、水牛の背に乗った子どもたちの姿も見える。 縦横に走る水路に、白い帆をかけた小さな舟が、ゆったりと波を立てていた。 山本伸一たち訪…

小説「新・人間革命」 革心29 2015年 6月2日

復旦大学での図書贈呈式を終えた山本伸一の一行は、十三日午後、上海から急行列車で蘇州へ向かった。 当初、一行は、上海から無錫へ、直接行く予定であったが、「天上に天国あり、地上に蘇州、杭州あり」といわれる、江南の景勝地を案内しようとの中国側の配…

小説「新・人間革命」 革心27 2015年 5月30日

あいさつで山本伸一は、「人類の平和を守るフォートレス(要塞)たれ」との願いを込めて創立した創価大学で、中国からの留学生が真剣に勉学に励んでいる様子や、大学構内には、周総理を偲ぶ「周桜」が植樹されていることを報告した。 さらに、この四月から、…

小説「新・人間革命」 革心26 2015年 5月29日

蘇歩青学長は間もなく七十六歳を迎えると、山本伸一は聞いていた。 しかし、背筋をまっすぐに伸ばした、矍鑠とした姿は、とても、その年齢には見えなかった。 図書贈呈式は物理館の会議室で行われた。 復旦大学からは、学長のほか、副学長、図書館長、経済学…

小説「新・人間革命」 革心25 2015年 5月28日

九月十二日の夜、山本伸一たち訪中団一行は、雑技団の公演に招待された。 雑技は、曲芸などを行うもので、上海の雑技団の高い技術は、よく知られている。 何本もの棒の先で皿を回したり、額の上に大きな扇を立てたまま踊ったり、難度の高い、華麗な演技に会…

小説「新・人間革命」 革心24 2015年 5月27日

少年宮の責任者は、訪中団一行に語った。 「この少年宮では、放課後に、文芸、体育、科学技術、工芸、音楽などの教育を行っています。 現在、毎日、千人ほどの児童が通って来ております」 山本伸一たちは、合唱室、バイオリン室、民族楽器室、ハーモニカ室、…

小説「新・人間革命」 革心23 2015年 5月26日

「熱烈歓迎!」 楊浦区少年宮では、半ズボン・スカート姿の少年・少女たちが、ネッカチーフや花を振って、元気に訪中団一行を出迎えてくれた。 「謝謝!」(ありがとう!) 山本伸一、峯子をはじめ、一行も盛んに手を振って歓迎に応えた。 伸一は、「今日は…

小説「新・人間革命」 革心22 2015年 5月25日

人民公社の随所に、白地に赤い文字や、あるいは、赤地に白い文字で、スローガンが大書されていた。 上海の空港にも、「世界人民大団結万歳」と書かれていたが、人民公社にも、同じスローガンが掲げられていた。 山本伸一の目を引いたのは、「華国鋒主席と共…

小説「新・人間革命」 革心21 2015年 5月23日

十二日、朝食を済ませた山本伸一の一行は、上海の中心部から十五キロほどのところにある、周西人民公社を参観した。 一行が到着すると、公社の人たちは銅鑼を打ち鳴らし、子どもたちは風船や花を手に持って歓迎してくれた。 「山本先生が、中日友好に尽力さ…

小説「新・人間革命」 革心20 2015年 5月22日

孫平化は、一九一七年(大正六年)に中国東北部の奉天省(後の遼寧省)に生まれている。 その十五年後、日本は、この中国東北部に傀儡国家「満州国」を建国するのである。 日本の高校にあたる「高級中学」を優秀な成績で卒業した彼は、進学はせずに、「満州…

小説「新・人間革命」 革心19 2015年 5月21日

中国訪問二日目となる九月十二日、訪中団一行は、宿舎の錦江飯店で、中日友好協会の孫平化秘書長らと共に朝食をとった。 山本伸一と妻の峯子は、孫平化と円卓を囲んだ。孫の前には、焼いたメザシ、冷や奴、味噌汁などが並んでいた。 円卓に着いた孫は、驚き…

小説「新・人間革命」 革心18 2015年 5月20日

孫中山故居から宿舎の錦江飯店に戻った山本伸一たち一行は、上海市の関係者が主催する歓迎宴に出席した。 あいさつした伸一は、北京からわざわざ駆けつけてくれた、中日友好協会の孫平化秘書長の労に、深い感謝の意を表するとともに、「日中平和友好条約」…

小説「新・人間革命」 革心17 2015年 5月19日

孫中山故居の参観を終えた山本伸一の一行は、中庭に出た。 そこには、木々が茂り、青々とした芝生が広がっていた。 一行は芝生に腰を下ろし、しばし懇談の機会をもった。 山本伸一は、訪中団の青年たちに視線を注ぎながら語り始めた。 「孫文先生の生き方の…

小説「新・人間革命」 革心16 2015年 5月18日

北京に向かった孫文の体は、既に病に侵されていた。 一九二五年(大正十四年)三月、彼は、北京で五十八歳の生涯を閉じる。 彼の最期の言葉とされるのが、「現在、革命、なおいまだ成功せず」(注)である。 悪と戦い続けることが、革命の道である。 孫文亡…

小説「新・人間革命」 革心15 2015年 5月16日

日本の中華民国政府に対する二十一カ条要求がほぼ認められてしまったことは、中国の人びとにとって、最大の恥辱であった。 反日愛国運動の火は、中国全土に広がっていった。いわゆる「五・四運動」である。 また、日本は、この前年の一九一八年(大正七年)…

小説「新・人間革命」 革心14 2015年 5月15日

辛亥革命により、一九一二年(明治四十五年)一月、南京に、孫文を臨時大総統とする中華民国政府が誕生した。 清朝を代表して、この革命政府との講和にあたった内閣総理大臣の袁世凱は、清の宣統帝溥儀を退位させ、孫文に代わって、自分が中華民国の臨時大総…

小説「新・人間革命」 革心13 2015年 5月14日

宮崎滔天は、孫文という人物を知り、深い尊敬の念をいだく。 彼は、自らの半生を綴った『三十三年の夢』に、孫文への思いをこう述べている。 「彼、何ぞその思想の高尚なる、彼、何ぞその識見の卓抜なる、彼、何ぞその抱負の遠大なる、しかして彼、何ぞその…

小説「新・人間革命」 革心12 2015年 5月13日

孫中山の故居に立って山本伸一は、孫文と宮崎滔天、梅屋庄吉ら日本人との、友情を思い起こしていた。 孫文は、一八六六年(慶応二年)に清国広東省・香山県(後の中山市)に生まれた。 少年期をハワイのホノルルで過ごし、帰国後は、香港西医書院(香港大学…

小説「新・人間革命」 革心11 2015年 5月12日

山本伸一の一行は、宿舎の錦江飯店から、上海体育館の見学に向かった。この体育館は、円形のモダンな建物で、最新の設備を備えていた。 椅子席だけで一万八千人を収容でき、その椅子もボタン一つで自動的にセットすることができた。 案内してくれたのは、馬…

小説「新・人間革命」 革心10 2015年 5月11日

錦江飯店での交歓の席で、山本伸一は、中国人民対外友好協会上海市分会の責任者である孟波に笑顔を向けた。 孟波は一昨年、「中国上海京劇団」の副団長として来日していた。 伸一は、その折、信濃町の聖教新聞社と八王子市の創価大学で、彼と交流する機会が…