2015-06-28から1日間の記事一覧

小説「新・人間革命」 革心49 2015年 6月26日

鄧穎超の母・楊振徳は、一九四〇年(昭和十五年)十一月、病のため、六十五歳で世を去る。 身なりも質素で、清貧に甘んじ、雑草のごとく強く、いかなる迫害にも屈することのない、気高き信念の生涯であった。 彼女は、娘にこう語ってきた。 「人は周夫人と言…

小説「新・人間革命」 革心48 2015年 6月25日

長征は肉体の限界を超えた行軍であった。 食糧もほとんどなく、野草、木の根も食べた。 ベルト等の革製品を煮てスープにした。 敵の銃弾を浴びるなか、激流に架かるつり橋も渡った。 吹雪の大雪山も越えた。 無数の川を渡り、大草原を、湿地帯を踏破した。 …

小説「新・人間革命」 革心47 2015年 6月24日

「長征」――それは、一九三四年(昭和九年)十月、蒋介石の国民党軍に、江西省瑞金の中央根拠地を包囲、猛攻撃された中国共産党軍が、陝西省北部へと移動していく大行軍をいう。大西遷ともいわれている。 行程は、広西、湖南、貴州、雲南、四川などの各省を経…

小説「新・人間革命」 革心46 2015年 6月23日

一九三一年(昭和六年)、中国共産党は、中央根拠地を江西省の瑞金に置き、中華ソビエト共和国臨時中央政府を樹立する。 だが、国民党軍は、大軍をもって、この中央根拠地を包囲したのだ。 周恩来も、鄧穎超も、瑞金にあって苦闘を続けた。 鄧穎超は、髪を切…

小説「新・人間革命」 革心45 2015年 6月22日

孫文亡きあと、国民党に亀裂が走る。共産党を敵視する右派によって、孫文の遺志を継いで国共合作を推進してきた、国民党左派の中心であった廖仲愷が暗殺された。 彼は、中日友好協会の会長となる廖承志の父親である。 鄧穎超は、廖仲愷の夫人・何香凝を支え…

小説「新・人間革命」 革心44 2015年 6月20日

鄧穎超は、中国の改革に生涯を捧げようと、共産主義の運動に加わる。 国民党と共産党は、協力して軍閥と戦うために、国共合作に踏み切った。 天津で彼女は、共産党と国民党の若き女性リーダーとなった。 一九二五年(大正十四年)三月、中国統一をめざした「…

小説「新・人間革命」 革心43 2015年 6月19日

共産主義に自らの進路を見いだした周恩来は、それを鄧穎超に手紙で知らせた。 彼女も、中国の改革を可能にする道を模索し続けていた。 そして、「あなたの考え、思想に完全に賛同します。 私はあなたたちと同じ道をともに進みたいと思います」(注1)と、…

小説「新・人間革命」 革心42 2015年 6月18日

鄧穎超は、北京から戻り、天津の女学校で教壇に立つことになった。 天津にあって、彼女が最も情熱を注いだのは、中国の封建的な思想、習慣、制度のなかで、自由も、尊厳も奪われ、「奴隷」のように生きなければならなかった多くの女性たちの解放であった。 …

小説「新・人間革命」 革心41 2015年 6月17日

天津では、男女学生が中心となって、帝国主義国家への抗議の声が大きく広がっていった。十万人の国民大会やデモ行進も行われた。 軍隊、警察の弾圧は激しくなった。同志が不当逮捕されるという事件も起こった。その抗議に行った周恩来も逮捕された。 学生た…

小説「新・人間革命」 革心40 2015年 6月16日

「覚悟社」の結成にあたって、周恩来が起草したのが「覚悟社宣言」である。 そこには、「革心」と「革新」の精神を根本にして、運動を進めていくことが述べられている。 社会の「革新」のためには「革心」すなわち、心を革めることが不可欠である――そのとら…

小説「新・人間革命」 革心39 2015年 6月13日

梅園新村記念館を参観しながら、山本伸一は、峯子に言った。 「周恩来総理は、本当に偉大な指導者であられた。今回は、北京で奥様の鄧穎超先生とお会いできるんだね。楽しみだな。 とう先生は、周総理と共に、新中国建設に人生を捧げてこられた。 「人民の母…

小説「新・人間革命」 革心38 2015年 6月12日

十六日の午後、訪中団一行は、梅園新村記念館を訪れた。 ここは、一九四六年(昭和二十一年)五月から翌年三月まで、中国の国民党と共産党の和平交渉が行われた折、周恩来らが事務所、宿舎とした場所である。 中国では、三七年(同十二年)に第二次国共合作…

小説「新・人間革命」 革心37 2015年 6月11日

山本伸一の平和建設への覚悟を聞いて、雨花台烈士陵園で出会った人たちは、大きく頷いていた。 伸一は、さらに言葉をついだ。 「私は、母親が、戦争で長兄が死んだことを知って悲嘆に暮れ、肩を震わせて泣きじゃくる姿を、今でも忘れることはできません。 同…

小説「新・人間革命」 革心36 2015年 6月10日

雨花台烈士陵園で山本伸一の一行は、殉難の記念碑に献花を行った。 赤やピンクのバラの花で飾られた花輪を持った二人の訪中団メンバーを先頭に、伸一たちは、記念碑に向かって石畳の上を歩いていった。 碑には毛沢東による、「死難烈士万歳」の文字が刻まれ…

小説「新・人間革命」 革心35 2015年 6月9日

南京に到着した翌日の九月十六日は、朝から美しい青空が広がっていた。 山本伸一をはじめとする訪中団一行は、午前十時過ぎ、市内にある雨花台烈士陵園へ向かった。 雨花台には、こんな言い伝えがある。 ─六世紀初頭、この丘で法師が経を読誦したところ、天…

小説「新・人間革命」 革心34 2015年 6月8日

午後六時半過ぎ、山本伸一たちが乗った列車は、南京に到着した。 南京駅では、何人もの江蘇省の関係者が、温かい笑顔で迎えてくれた。 南京は、江蘇省の省都で、古代から都となり、中華民国が成立した時には、臨時政府が置かれ、国民政府の首都にもなった。 …