小説「新・人間革命」 陽光38 2月16日

 「サンディエゴ・コンベンション」を終えた山本伸一は、四月八日の午後、マリブの研修所に戻った。そして、夕刻にはアメリカ本部を訪問し、本部の職員の激励に渾身の力を注いだ。

 このスタッフが、不眠不休でコンベンションの準備にあたり、労を惜しまずに働いてくれたからこそ、大成功に導くことができたのである。

 ゆえに伸一は、その職員たちを、最大に賞讃したかった。

 彼は、寸暇を惜しんで励ましの一文を認めた自著などを皆に贈呈し、ねぎらいの言葉をかけていった。

 「ありがとう。すべて皆さんのおかげで成功しました。

 高層ビルを支えているのは、鉄骨であり、鉄筋です。しかし、それは外からは見えない。その存在にさえ、気づかない人もいる。

 同じように、陰に徹して、広宣流布のため、同志のために奉仕するのが職員です。その生き方にメンバーは信頼を寄せてくださるんです。また、そこに、自身の大福運の道があります」

 それから伸一は、アメリカの中心者に言った。

 「これまで、アメリカは順調に発展してきた。しかし、本当の勝負はこれからです。

 さらに、大発展を遂げていくためには、中核の人材を大切に育てていくことです。

 また、中心者と本部の職員が団結していくことです。中心者が、本部のスタッフに信頼、尊敬されていなければ、やがて組織は崩壊します。

 職員には、アメリカの創価学会を体を張って守る責任があるし、皆、戦おうと決意している。

 だから、どうすれば、皆が気持ちよく、よい仕事ができるのか。また、どうすれば、皆が力を発揮することができるのか――を真剣に考え抜いていかなくてはならない。

 ところが、中心者が名聞名利に走り、権力欲をもつようになると、皆を生かすのではなく、自分のために利用しようと考えるようになる。

 そして、自分になびかない人や異なる意見を言う人は排斥してしまう。

 また、中心者が保身に陥ると、自分が泥をかぶらないためにどうするかばかりを考え、皆を縛り付け、自主性、主体性、頑張ろうという意欲を削いでしまう」