小説「新・人間革命」 陽光43 2月22日

四月九日の夜、「サンディエゴ・コンベンション」の大成功を祝い、文化祭などを支えたメンバーの代表八十人が集い、祝賀会が行われた。

 会場となったサンタモニカの中華レストランに、山本伸一と峯子が到着すると、文化祭の陰の立役者たちが勢ぞろいしていた。

 千三百着の衣装を仕立てた責任者や、延べ一万七千人分の食事を用意した部門の責任者もいた。

 資材などを運搬した輸送チームの責任者もいる。チーム全体の走行距離は延べ百十万五千マイル(約百七十七万八千キロメートル)になった。

 さらに、音楽や美術部門の関係者もいた。

 皆、喜びに頬を紅潮させていたが、どこか寂しさがあった。明日、伸一がハワイに出発すると聞いていたからである。

 そんなメンバーの心を察した伸一は、優しく包み込むように、最敬礼する思いで語った。

 「皆さんの力で、また一つ、アメリカ広布の新しい歴史が開かれました。本当にありがとうございます。

 私は、明日、ハワイに発ちますが、また、来年の『ハワイ・コンベンション』で、一段と成長した姿の皆さんと、お会いできることを、楽しみにしております。

 私の胸には、いつも皆さんがいます。私たちの心は、互いに題目で結ばれています。

 広宣流布をめざして、私と同じ決意で戦うならば、生命はいつも通い合います。それが、師弟不二です。

 また、仏法の師弟は三世常住です。ゆえに、皆さんとは、今世だけでなく、来世も一緒です」

 それから伸一は、自ら買い求めたリボンフラワーなどのプレゼントを、メンバー一人ひとりに、ねぎらいの言葉をかけながら手渡していった。

 「これを買ったので、私の財産は、全部、なくなりました。

 奥さんが、『明日から、どうやって暮らすつもりですか!』って怒るんですよ」

 そのユーモアに、どっと笑いが広がった。

 彼は皆に、決して寂しい思いをさせたくなかった。自ら陽光となって、笑顔の花を咲かせようと、懸命であった。

 「指導とは激励なり。励ましなり」

 これは戸田第二代会長の教えであった。