2008年4月23日 聖教新聞 創価学園 特別文化講座 創立者 ダンテを語る 1-1

2008年4月23日 聖教新聞


創価学園 特別文化講座 創立者 ダンテを語る 1-1


徹してこそ才能は花開く
難解な書物にも挑戦した若きダンテ
良書との出会いが人生を変える

一、若き日、私は、「四月」と題して、青春の躍動しゆく心を歌いました。

 四月
 花は 咲き乱れぬ
 そして 風と共に
 散りゆきぬ

 四月
 若人の 心の花よ
 咲き香れ
 若人の 前進の歌も
 舞いゆかん

 四月
 青春の月
 若人の月

 四月
 青年の月
 人生謳歌の月

 四月
 ホイットマン
 ゲーテ
 ミルトンも
 ダンテも
 みな 心より歌い
 戦い
 悩み 進みしは
 この四月

 ボンジョルノ!(イタリア語で、「こんにちは!」)
 新しい出発の月、4月に寄せて、創立者の私から皆さん方に真心からの贈り物があります。
 それは、皆さん方と語り合いたいと思って準備を進めてきた、第1回の創価学園「特別文化講座」の原稿です。
 本当は、ゆっくりと時間をとって、学園で講座を進めたいと願ってきたのですが、世界からの来客等が続いており、なかなか日程がとれません。
 そこで、新入生の皆さん方への歓迎の意義も込めて、発表させていただきます。
 第1回の「特別文化講座」のテーマに選んだのは、私が、皆さん方と同じ10代のころから愛読してきた、イタリアの大詩人ダンテ・アリギエリです。

 真の幸福とは?
 一、わが創価学園は、昨秋で創立40周年──。
 これまで、私が妻とともに、来る日も来る日も、祈り続けてきたことがあります。
 それは、「わが学園生よ、一人ももれなく、幸福の人生を!」「正義の人生を!」、そして「勝利の人生を!」ということです。
 それでは、真の「幸福」とは、何か?
 真の「正義」とは、何か?
 そして、真の「勝利」とは、何か?
 ダンテの生涯と文学は、このことを問いかけている。人間にとって、一番大事なことを教えてくれています。
 その意味で、私は、ダンテを通して、皆さんに語りたい。
 また卒業した同窓生の方々はもちろん、ともに未来を生きゆく、すべての中学生、高校生の皆さん、さらに後継の使命も深き、すべての男女青年の皆さん方のために語り残しておきたいのです。
 さあ、新緑光るフィレンツェの公園のベンチに座って、滔々と流れるアルノ川を見つめながら、ゆったりと懇談するような気持ちで、この講座を進めていきましょう!

ダンテは
自分に襲いかかった過酷な「運命」を人類のための「価値創造」に変えた人なのです

 トインビー博士が敬愛した作家
 一、かつて私は、20世紀を代表するイギリスの大歴史学者トインビー博士と、さまざまなことを語り合いました。
 2年越し、40時間にわたる対話です。
 「教育論」についても語り合いましたが、博士は、創価教育に対して、大きな期待を寄せてくださいました。
 そして、「文学論」がテーマになった折に、私が「好きな作家は誰ですか?」と尋ねると、トインビー博士が即座に名前を挙げられた人物がいます。
 その人こそ、ダンテでありました。
 それは、なぜでしょうか?
 ダンテが、自らの大きな苦難や不幸に断じて負けなかったからです。
 そして、その苦しみや悲しみを、世界の多くの人々の喜びや幸せへと転換していったからです。
 そうです。ダンテは、自分に襲いかかった過酷な「運命」を、人類のための「価値創造」、すなわち「創価」の「使命」へと変えた人なのです。

 不屈の人の顔
 一、ダンテは、1265年の5月から6月ころ、イタリアの"花の都"フィレンツェの貧し
い貴族の子弟として生まれました。
 家が貧しいということは、少しも恥ずかしいことではない。むしろ、恵まれない環境の中から、偉大な力ある人間が育っていくものです。
 ダンテが誕生した家は、復元されて、今に伝えられております。
 私も、27年前(1981年)の陽光まばゆい6月、その生家を青年たちと一緒に訪れました。
 石造りで、繁華街の一角にひっそりと立っていました。外壁には、厳しい表情を浮かべたダンテの胸像が埋め込まれております。
 ダンテの顔は、「終生不屈の闘争をなせる人の顔」(カーライル著老田三郎訳『英雄崇拝諭』岩波文庫)と言われます。
 人生は、すべて戦いです。なかんずく、正しい人生であればあるほど、激しい戦いの連続である。その使命の闘争を、最後の最後まで貫けるかどうか。ここに、人間としての勝負がある。
 わが創価学園の「学園魂」とは、不屈の「負けじ魂」です。
 皆さん方の先輩も、この負けじ魂で、戦い、勝ち抜いています。
 私は、ダンテも歩んだであろう、フィレンツェの細い路地の石畳を踏みしめながら、イタリアの青年たちとともに、大詩人の激闘の導き生涯に思いをはせました。

 学園の
  負けじ魂
    一生涯
  無数の花びら
    君の生命に

 伊(イタリー)で『神曲』の朗読会に喝采
 一、フィレンツェには、創価の友が喜々として集い合う、歴史と文化薫る「イタリア文化会館」があります。私も訪れました。国の重要文化財にも指定されている良緒ある建物です。
 ここには、1865年の"ダンテ生誕600年祭"に、フィレンツェ市庁舎に掲げられた「各都市の紋章」の記録をはじめ、600年祭に関する貴重な費料が保管されています。
 一、フィレンツェのあるレストランで、友人たちと語り合った時のことです。その建物の壁を指さして、「ここにもダンテの『神曲』の一節が刻まれています」と友が教えてくれました。
 ダンテが残した希望の言葉、鋭い警世の言々句々は、時代を超えて、今でも人々を照らしています。
 とりわけ、最近、「ダンテ・ブーム」ともいえる現象が、イタリアで起きているようです。有名な俳優が連続して開催した『神曲』の朗読会には、毎回、5000人もの聴衆が集まりました。
 この模様は国営テレビでも放映され、イタリアの総人口約5900万人のうち、実に1000万人以上が見たといいますから、すごいことです。
 さらに『神曲』の朗読を収めたDVDも、新たに制作されたそうです。
 約750年前の人物の作品に、21世紀を生きる人々が喝采を送る。
 ダンテの作品には、現代が渇望する深い精神性とメッセージが込められているのです。

一筋のこの道を進もう
正しし人生を!!負けない青春を!! 愛する人を失いダンテは悩んだ

 皆さんの勝利が父母の勝利に
 一、それでは、ダンテが直面した苦難について、具体的に考えていきたいと思います。
 ダンテは、少年時代に、最愛の存在を相次いで失うという深い悲しみを経験しています。
 ダンテがまだ5歳のころに、母が亡くなりました。さらに、母親の代わりに自分を育ててくれた祖母も、そして父まで失ったのです。
 また、理想の女性として慕っていた、ベアトリーチェも20代の若さで世を去りました。
 若き日から試練多き人生を生き抜いたダンテら偉人の姿を通して、文豪ヴィクトル・ユゴーは明言しております。
 「大きな樅は、唯だ嵐の強い場所にばかり成長する」(榎本秋村訳『ユウゴオ論説集』春秋社書店)
 その通りです。嵐を勝ち越えてこそ、大樹と育つことができる。これが万物を貫く法則です。

創価学園 特別文化講座 創立者 ダンテを語る 1-2に続く


ブログ はればれさんからのコピーです。