小説「新・人間革命」  11月18日 新世紀1

「新世紀――。

 それは、『平和の世紀』『人間の世紀』『勝利の世紀』『栄光の世紀』、そして『戦争なき世紀』『生命の世紀』だ」

 山本伸一は、立ち上がって、朗読するように、この言葉を口述し、妻の峯子に書き取らせた。

 一九七五年(昭和五十年)の五月三十日、第二次ソ連訪問から帰国した伸一の心は、新世紀建設への決意に燃えていた。

 世界平和をめざしゆく、わが創価学会には新しき前進の息吹がみなぎっていた。

 学会の強さは、民衆の団結にある。民衆の英知にある。地位や学歴など、一切の肩書をかなぐり捨てて、裸の人間として皆がスクラムを組み、時代建設の主体者となって、楽しく、勇敢に、和気あいあいと行進しているのが、われらの広宣流布運動である。

 「草莽崛起」(民衆の決起)は、吉田松陰の悲願であった。もし彼が、世界に広がる、わが創価の堂々たる民衆の陣列を目にしたならば、どれほど感嘆するであろうか。

 君よ、立て! 正義のために、広宣流布のために、そして自身の幸福のために!

 君よ、走れ! 民衆の勝利のために! 勇猛果敢な行動で、新時代の幕を開くのだ。

 その新しき前進のためには、新しき希望の目標が必要だ。呼吸を合わせ、緻密な計画を練り上げる、協議が大事である。

 伸一が、新世紀への飛翔のために、この時、最も力を注いだのが、東京各区をはじめ、各地の首脳幹部との協議会であった。

 日蓮大聖人は「謀を帷帳の中に回らし勝つことを千里の外に決せし者なり」(御書一八三ページ)と仰せである。帷帳とは、幕を張りめぐらした作戦協議の場所だ。その中で智慧を絞り、真剣に、緻密に作戦を練ることによって、千里離れた戦場の勝利を決するのだ。

 また、伸一は、協議を通して、各区や各県の中核メンバーの一人ひとりをよく知り、人の配置や、どんな人材がいるかを、自分の目で確認しておきたかったのである。