2008年12月27日付 聖教新聞 全国代表協議会での名誉会長のスピーチ 下-1
2008年12月27日付 聖教新聞
全国代表協議会での名誉会長のスピーチ 下-1
勇気を失うな!何が起ころうとも トルストイ
一、先日、私は、ロシアの文豪トルストイの玄孫(孫の孫)である、ウラジーミル・トルストイ氏と再会した。
氏は、私への「トルストイの時代」賞の授与のために、ロシアから、はるばる来日してくださったのである。
〈「トルストイの時代」賞は、ロシアの「国立記念自然保護区・L・N・トルストイの屋敷博物館"ヤースナヤ・ポリャーナ"」と国際慈善財団「L・N・トルストイの遺産」から贈られたもの。ウラジーミル氏は、同博物館の館長を務める〉
授与式のスピーチでも触れたが、トルストイは、私が青春時代から愛読してきた世界的な文豪である。
このレフ・トルストイが生まれたのは、1828年8月28日。本年で生誕180周年の佳節を迎えた。
トルストイの代表作として『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』は、とくに有名だ。また『人生論』『人はなにで生きるか』『光あるうちに光の中を歩め』なども、多くの人に愛読されてきた。
ロシアで発刊されているトルストイの全集は90巻。数多くの小説をはじめ平和論、教育論、宗教論など膨大な量の作品を残した。
その根底には、巨大な国家悪にも屈しない、強き人間愛がみなぎっており、今なお全世界の精神の宝として輝いている。
「万歳」の大歓声
一、それは、約100年前の1909年9月のことである。
モスクワを訪れていたトルストイは、再び故郷のヤースナヤ・ポリャーナヘ戻ることになった。
そして、トルストイが駅から故郷へと出発する日──。
この知らせを聞きつけた幾万もの民衆が、トルストイが出発する駅に、続々と集まってきたのである。
当時、トルストイは81歳。暴力が吹き荒れた時代に、「殺すなかれ」と繰り返し叫んだ。人類の良心の柱であった。
彼が駅前に姿を見せると、人々の間から「トルストイに栄光あれ! 偉大なる闘士万歳!」との大歓声が、わき起こった。
民衆の歓呼が響き渡る中、トルストイは列車へと向かった。
「ありがとう! みなさんのご厚意に感謝いたします!」
「本当にありがとう!」
列車の中から、トルストイはこう叫んだ。
この言葉に応えて、人々から再び歓声が上がった。
「ありがとうございます!」「万歳! 栄光あれ!」
やがて、列車が動き出した。人々もまた、列車の後を追いすがった。
列車は速度を増していく。しかし、それでもなお「万歳!」を叫びながら、列車を追いかけて、走り続ける人々がいたという。
〈シクロフスキイ著、川崎浹訳『トルストイ伝』河出書房新社から〉
トルストイは権力からは疎まれ、迫害された。しかし、世界の民衆からは絶大な支持を得た。
民衆からの敬愛と信頼。これに勝る人生の勝利と栄光はない。
どこまでも民衆とともに──私もまた、この信念で進んできた。
学会は、強き精神の絆で結ばれた庶民の団体である。だから強い。いかなる迫害の嵐が吹いても、絶対に倒れないのである。
〈ウラジーミル・トルストイ氏は、池田名誉会長について、月刊誌「潮」のインタビューで次のように語っている。
「(池田)先生はご自身の人生を通して、一貫して『善』を体現してこられた。『正義』を貫いてこられた。
素晴らしいことを語る人はいても、それを自身の人生を通して証明する人は稀である。
だからこそ、池田先生のことを世界中の多くの政治家も尊敬しているし、市井の人々や学生も敬愛してやまない」
「池田先生は、思想と行動が一致した、まさに師と仰がれるべき人物なのである」〉
トルストイ 精神の成長に真の幸福がある
青年よ良書に学べ!
自ら労苦を求め戦え
わが生命を磨け
一、とくに青年の皆様は、トルストイの作品をはじめ、大いに良書に挑戦していただきたい。世界的な文学作品を読んでほしい。
世間には、ただ刺激を売り物にするだけの悪書が多い。
トルストイは「良書が不良な、有害な、若しくは無用なる多数書籍の洪水中に隠れてしまうこと」を憂えていた(八杉貞利訳「書籍の意義に就いて」、『トルストイ全集第20巻』所収、岩波書店。現代表記に改めた)。
悪書を退け、良書に親しめ!──トルストイは、自分の子どもに対しても、このことを厳しく教えていた。
「魂の後継者」と呼ばれた娘のアレクサンドラは、ある時、父トルストイから、「いけない!」「どうしてあんたは、こんな本を取り出したのだね? ただもう魂を穢すばかりだよ!」と叱られたことを書き残している(八杉貞利・深見尚行訳『トルストイの思い出』岩波書店、現代表記に改めた)。
恩師・戸田先生も、くだらぬ雑誌など読んでいる青年がいたら、厳しく叱り飛ばしておられた。
トルストイは、アレクサンドラヘの手紙で綴っている。
「精神的な成長こそ、私たちが皆、成し遂げることである。そこにこそ、人生があり、真の幸福がある」
大事なのは、人間としてどれだけ成長しているかだ。
自身を鍛え、わが生命を磨いていく。そこにこそ、真の充実の人生が輝くのである。
傲慢から堕落が
一、さらに、トルストイの言葉を紹介したい。
きょうのような会合もまた、勉強の場だ。人生の向上の場である。そういう思いから、私は皆さんに、さまざまな箴言を贈っているのである。
トルストイは綴っている。
「私を信仰に導いたのは生の意義の探求だった。
すなわち、人生の正路の探求、いかに生くべきかの探求だった」(ピリューコフ著・原久一郎訳『大トルストイ』勁草書房)
トルストイは生涯をかけて、人生の正しき道を探求し続けた。
正しき人生を、どう生きるか──その間いに回答を与えるのが真実の信仰である。
また、彼は、こうも述べている。
「信仰は、いやしくもそれが信仰である限り、その本質からいって、権力の下に服従することはあり得ない」(同)
文豪の偉大な信念であり、普遍の哲学といえよう。
真の信仰者は、どんな権力からの弾圧にも絶対に屈しない。
偉大な精神の力は、いかなる権力にも勝るのである。
また、トルストイは綴っている。
「虚栄心の満足ほどむなしいものはまたとはない」(小沼文彦編訳『ことばの日めくり』女子パウロ会)
「労苦のないということは、悪である」(原久一郎訳『トルストイ全集第22巻』岩波書店、現代表記に改めた)
苦労をしなければ、人間は鍛えられない。また、本当に苦労をして戦ってこそ、真実の喜びや満足が得られるのである。
このことは、戸田先生も語っておられた。
またトルストイは、傲慢な人間は欺かれやすいと述べ、「傲慢な者は馬鹿だ」 (小西増太郎訳『生きる道』桃山書林)と記している。
その通りと思う。
「私は偉いのだ」などと傲り高ぶるところから、堕落が始まる。
どこまでも謙虚に、どこまでも誠実に、友のため、広布のために尽くしていく。それが真実の学会のリーダーである。
「たとえどんなことが起ころうとも、勇気を失ってはならない」(前掲『ことばの日めくり』)
これもトルストイの言葉だ。
我らもまた不屈の「勇気」を胸に、あらゆる困難を打ち破っていきたい。
文豪ショーロホフ氏との思い出
一、ロシアの文豪といえば、ミハイル・ショーロホフ氏(1905~1984年)との会見が思い出深い。
皆さんも、ご存じの通り、1965年にノーベル文学賞を受賞した。代表作に『静かなドン』『人間の運命』等がある。
私がロシアを初訪問した1974年(昭和49年)。9月16日の午後4時、モスクワの氏のお宅を訪ねた。質素なアパートの4階だったと記憶している。
対談は約1時間に及んだ。ロシア側の同席者は、モスクワ大学のトローピン副総長、ノーボスチ通信記者のドナエフ氏。通訳は、モスクワ大学のストリジャック先生であった。
氏は69歳。
私は46歳。
先日、来日した氏の令孫アレクサンドル・ショーロホフ氏(「国立M・A・ショーロホフ博物館・自然保護区」館長)も、46歳であった。
〈令孫は、ショーロホフ氏の生誕100周年を慶祝する「記念メダル」を、名誉会長に授与。
「深く尊敬する池田先生! どうか46歳の心のままで、いつまでもいつまでも、お元気で!」と念願した〉
全国代表協議会での名誉会長のスピーチ 下-2に続く
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全国代表協議会での名誉会長のスピーチ 下-1
勇気を失うな!何が起ころうとも トルストイ
一、先日、私は、ロシアの文豪トルストイの玄孫(孫の孫)である、ウラジーミル・トルストイ氏と再会した。
氏は、私への「トルストイの時代」賞の授与のために、ロシアから、はるばる来日してくださったのである。
〈「トルストイの時代」賞は、ロシアの「国立記念自然保護区・L・N・トルストイの屋敷博物館"ヤースナヤ・ポリャーナ"」と国際慈善財団「L・N・トルストイの遺産」から贈られたもの。ウラジーミル氏は、同博物館の館長を務める〉
授与式のスピーチでも触れたが、トルストイは、私が青春時代から愛読してきた世界的な文豪である。
このレフ・トルストイが生まれたのは、1828年8月28日。本年で生誕180周年の佳節を迎えた。
トルストイの代表作として『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』は、とくに有名だ。また『人生論』『人はなにで生きるか』『光あるうちに光の中を歩め』なども、多くの人に愛読されてきた。
ロシアで発刊されているトルストイの全集は90巻。数多くの小説をはじめ平和論、教育論、宗教論など膨大な量の作品を残した。
その根底には、巨大な国家悪にも屈しない、強き人間愛がみなぎっており、今なお全世界の精神の宝として輝いている。
「万歳」の大歓声
一、それは、約100年前の1909年9月のことである。
モスクワを訪れていたトルストイは、再び故郷のヤースナヤ・ポリャーナヘ戻ることになった。
そして、トルストイが駅から故郷へと出発する日──。
この知らせを聞きつけた幾万もの民衆が、トルストイが出発する駅に、続々と集まってきたのである。
当時、トルストイは81歳。暴力が吹き荒れた時代に、「殺すなかれ」と繰り返し叫んだ。人類の良心の柱であった。
彼が駅前に姿を見せると、人々の間から「トルストイに栄光あれ! 偉大なる闘士万歳!」との大歓声が、わき起こった。
民衆の歓呼が響き渡る中、トルストイは列車へと向かった。
「ありがとう! みなさんのご厚意に感謝いたします!」
「本当にありがとう!」
列車の中から、トルストイはこう叫んだ。
この言葉に応えて、人々から再び歓声が上がった。
「ありがとうございます!」「万歳! 栄光あれ!」
やがて、列車が動き出した。人々もまた、列車の後を追いすがった。
列車は速度を増していく。しかし、それでもなお「万歳!」を叫びながら、列車を追いかけて、走り続ける人々がいたという。
〈シクロフスキイ著、川崎浹訳『トルストイ伝』河出書房新社から〉
トルストイは権力からは疎まれ、迫害された。しかし、世界の民衆からは絶大な支持を得た。
民衆からの敬愛と信頼。これに勝る人生の勝利と栄光はない。
どこまでも民衆とともに──私もまた、この信念で進んできた。
学会は、強き精神の絆で結ばれた庶民の団体である。だから強い。いかなる迫害の嵐が吹いても、絶対に倒れないのである。
〈ウラジーミル・トルストイ氏は、池田名誉会長について、月刊誌「潮」のインタビューで次のように語っている。
「(池田)先生はご自身の人生を通して、一貫して『善』を体現してこられた。『正義』を貫いてこられた。
素晴らしいことを語る人はいても、それを自身の人生を通して証明する人は稀である。
だからこそ、池田先生のことを世界中の多くの政治家も尊敬しているし、市井の人々や学生も敬愛してやまない」
「池田先生は、思想と行動が一致した、まさに師と仰がれるべき人物なのである」〉
トルストイ 精神の成長に真の幸福がある
青年よ良書に学べ!
自ら労苦を求め戦え
わが生命を磨け
一、とくに青年の皆様は、トルストイの作品をはじめ、大いに良書に挑戦していただきたい。世界的な文学作品を読んでほしい。
世間には、ただ刺激を売り物にするだけの悪書が多い。
トルストイは「良書が不良な、有害な、若しくは無用なる多数書籍の洪水中に隠れてしまうこと」を憂えていた(八杉貞利訳「書籍の意義に就いて」、『トルストイ全集第20巻』所収、岩波書店。現代表記に改めた)。
悪書を退け、良書に親しめ!──トルストイは、自分の子どもに対しても、このことを厳しく教えていた。
「魂の後継者」と呼ばれた娘のアレクサンドラは、ある時、父トルストイから、「いけない!」「どうしてあんたは、こんな本を取り出したのだね? ただもう魂を穢すばかりだよ!」と叱られたことを書き残している(八杉貞利・深見尚行訳『トルストイの思い出』岩波書店、現代表記に改めた)。
恩師・戸田先生も、くだらぬ雑誌など読んでいる青年がいたら、厳しく叱り飛ばしておられた。
トルストイは、アレクサンドラヘの手紙で綴っている。
「精神的な成長こそ、私たちが皆、成し遂げることである。そこにこそ、人生があり、真の幸福がある」
大事なのは、人間としてどれだけ成長しているかだ。
自身を鍛え、わが生命を磨いていく。そこにこそ、真の充実の人生が輝くのである。
傲慢から堕落が
一、さらに、トルストイの言葉を紹介したい。
きょうのような会合もまた、勉強の場だ。人生の向上の場である。そういう思いから、私は皆さんに、さまざまな箴言を贈っているのである。
トルストイは綴っている。
「私を信仰に導いたのは生の意義の探求だった。
すなわち、人生の正路の探求、いかに生くべきかの探求だった」(ピリューコフ著・原久一郎訳『大トルストイ』勁草書房)
トルストイは生涯をかけて、人生の正しき道を探求し続けた。
正しき人生を、どう生きるか──その間いに回答を与えるのが真実の信仰である。
また、彼は、こうも述べている。
「信仰は、いやしくもそれが信仰である限り、その本質からいって、権力の下に服従することはあり得ない」(同)
文豪の偉大な信念であり、普遍の哲学といえよう。
真の信仰者は、どんな権力からの弾圧にも絶対に屈しない。
偉大な精神の力は、いかなる権力にも勝るのである。
また、トルストイは綴っている。
「虚栄心の満足ほどむなしいものはまたとはない」(小沼文彦編訳『ことばの日めくり』女子パウロ会)
「労苦のないということは、悪である」(原久一郎訳『トルストイ全集第22巻』岩波書店、現代表記に改めた)
苦労をしなければ、人間は鍛えられない。また、本当に苦労をして戦ってこそ、真実の喜びや満足が得られるのである。
このことは、戸田先生も語っておられた。
またトルストイは、傲慢な人間は欺かれやすいと述べ、「傲慢な者は馬鹿だ」 (小西増太郎訳『生きる道』桃山書林)と記している。
その通りと思う。
「私は偉いのだ」などと傲り高ぶるところから、堕落が始まる。
どこまでも謙虚に、どこまでも誠実に、友のため、広布のために尽くしていく。それが真実の学会のリーダーである。
「たとえどんなことが起ころうとも、勇気を失ってはならない」(前掲『ことばの日めくり』)
これもトルストイの言葉だ。
我らもまた不屈の「勇気」を胸に、あらゆる困難を打ち破っていきたい。
文豪ショーロホフ氏との思い出
一、ロシアの文豪といえば、ミハイル・ショーロホフ氏(1905~1984年)との会見が思い出深い。
皆さんも、ご存じの通り、1965年にノーベル文学賞を受賞した。代表作に『静かなドン』『人間の運命』等がある。
私がロシアを初訪問した1974年(昭和49年)。9月16日の午後4時、モスクワの氏のお宅を訪ねた。質素なアパートの4階だったと記憶している。
対談は約1時間に及んだ。ロシア側の同席者は、モスクワ大学のトローピン副総長、ノーボスチ通信記者のドナエフ氏。通訳は、モスクワ大学のストリジャック先生であった。
氏は69歳。
私は46歳。
先日、来日した氏の令孫アレクサンドル・ショーロホフ氏(「国立M・A・ショーロホフ博物館・自然保護区」館長)も、46歳であった。
〈令孫は、ショーロホフ氏の生誕100周年を慶祝する「記念メダル」を、名誉会長に授与。
「深く尊敬する池田先生! どうか46歳の心のままで、いつまでもいつまでも、お元気で!」と念願した〉
全国代表協議会での名誉会長のスピーチ 下-2に続く
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