◇ 随筆 人間世紀の光 No.206 人類の平和の大道 ㊦2009-10-3

若く新しい力を!

 私は大胆に、若く新しい人材を登用した。そこから、新たな広宣流布の前進の息吹が生まれるからだ。

 「法自ら弘まらず人・法を弘むる故に人法ともに尊し」(856㌻)と御書に仰せである。

 人で決まる。一番大事なのは「人事」だ。

 「地区」といっても、ネバダにいる同志は、夫妻を含めても4、5人であった。

しかし、オライエさんは、私の心を心として、広布開拓の情熱に燃え、学会活動を続けた。一人の友に会うにも、車で片道12時間かかることもある広大な天地を、勇んで駆け巡った。

 再会は5年後。40人の使命のスクラムに拡大した感動を報告する、誇らかな笑顔は忘れられない。

 その後、香港などでも活勤し、太平洋に輝くサイパンでは、ジョセフさんは初代の支部長として和楽の団結を広げてくれた。

 晩年、彼が過ごしたネバダ州ラスベガスには、この夏、待望の新会館が誕生した。その喜びの拍手は、世界広布の開拓者であるご夫妻への喝采でもあった。

 御聖訓には、「心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ他《た》をも勧んのみこそ今生人界の思出なるべき」(御書467㌻)と説かれる。

 妙法を唱え、広宣流布に生き抜いた人生は、人間として尊極無上にして永遠不滅の栄光に包まれるのだ。

 通訳や翻訳の労をとってくださっている方々など、国際本部の健闘も尊い

 私と妻は、世界広布の功労の友へ、深き感謝の祈り日々絶やすことはない。

        

 世界まで   功徳は残らむ    薫るらむ   あなたの歴史は    万花と咲きつつ



 初の海外訪問の折、私は南米ブラジルにも向かった。戦後、日本から開拓移住した友らが待っていてくださった。

 私は、厳しい現実のなかでの、皆の悪戦苦闘を伺いながら、「勇気と智慧を振り絞り、信心で勝で!」と全身全霊で励ましていった。

 広布とは、究極すれば、地球上のどこでも、妙法を持つ一人が決然と立ち上がることである。そして自分のいる場所で勝つことだ。

 ゆえに真心の激励を重ね、一人ひとりの己心の「地涌の菩薩」を呼び覚まし、一人ひとりを徹して強くするのだ。

 「日蓮一人はじめは南無妙法蓮華経と唱へしが、二人・三人・百人と次第に唱へつたふるなり、未来も又しかるべし」(同1360㌻)

 創価の師弟は、この方程式通りに進んできた。だから世界へ「地涌の大連帯」が広がったのだ。

 その前進の礎には、婦人部の方々の強く深い祈りがあったことを、私は誰よりもよく存じ上げている。

 「真実の聖者は、大抵は台座の上に置かれているよりも、群集の中に隠れているものだ」──これは行動する女性作家ジョルジュ・サンドの卓見である。

 人材の王国として躍進するブラジルSGIは、未来部育成の模範でもある。

 この9月には、新たな陣列となった未来部が朗らかに大会を行った。

 ブラジル未来部のシンボルマークはライオンだ。

 「師子王の子は師子王となる」(御書1216㌻)──世界各国でも、御聖訓に仰せの通りの信心の継承が進んでいる。

 「世界へ」というヨコの広がりと、「青年へ」というタテの広がり。そのたゆみなき展開こそ、世界広布の生命線である。



夫婦同道の平和旅

 「世界広布」即「世界平和」への第一陣となる旅から4年後(1964年)の10月2日、私は、7度目の海外訪問に出発した。

 この前日、私の妻も先発隊の一員として日本を発っていた。そして2日午後、香港経由でタイのバンコクに到着した私と合流したのである。これが妻の最初の世界旅となった。

 私の体調を案じた執行部の勧めで、妻が同行するようになったのである。私たち夫婦しての平和旅も、10月2日が出発点だ。

 強行軍の旅行中、妻は、ある時は栄養士のように、またある時は看護師のように、私の食事や健康管理に気を配ってくれた。

 かつて、戸田先生が地方指導に行かれる時、妻は毎回、人知れず駅や空港まで馳せ参じていた。東奔西走される先生のご健勝を祈り、お見送りをした。

 恩師は、そうした妻を、ただ一人の“送迎部長”に任命され、「いずれ全世界に行けるようになるよ!」と労ってくださったことが、思い起こされる。

 その通り、北中南米にも、欧州にも、ロシアにも、中国や韓国にも、東南アジアやインドにも、中東やアフリカにも、世界中に、友情の種、平和の種を、共に蒔いてきた。

 海外での会見や行事には、夫婦同伴の出席が多い。妻の微笑みの人間外交には、大いに助けられた。

 ただ妻は、華やかな場よりも、時間が許す限り、けなげに戦っている現地の婦人部や女子部の方々との懇談を強く望んだ。一人でも多くの同志を励ましたいと、一心不乱であった。

        

 タゴールトルストイゴーリキーをはじめ東西の文人と交友を結んだロマン・ロランは断言した。

 「われわれは すでにもう、地球の一つの面から他の面へわたって、精神の一家族をつくりだしているのです」

 私たちは、仏法の人間主義で結ばれた地球家族だ。久遠の使命に目覚めた世界広布のパイオニアだ。

 「かくて あたらしき力もて われらが務をはたさん!」とゲーテは歌った。

 新たな時代は、新たな人材と共に開くのだ。

 太陽の仏法は燦然たり。晴れ渡る大空のもと、妙法の正義の旗を掲げ、勇敢に朗らかに前進だ!

 明年は「世界平和の日」50周年、そして栄光燦たる創立80周年である。

 さあ、希望の明日へ、世界192力国・地域の創価家族と肩組み、歓喜の歌を響かせよう!

 次なる勝利と幸福の大叙事詩を、私と君たちとで、地球を舞台に、堂々と綴り始めようではないか!



 万年の   修行はこの時     含まれむ   広宣流布の     山を登れや



 ガンジーの言葉は『ガンディー「知足」の精神』森本達雄編訳(人間と歴史社)。セザンヌは順にベルナール著「回想のセザンヌ」(『世界教養全集12』所収)有島生馬訳(平凡社)、リウォルド編『セザンヌの手紙』池上忠治訳(美術公論社)、ガスケ著『セザンヌ與謝野文子訳(岩波書店)、ギャスケ著『セザンヌとの対話』成田重郎訳(東出版)。セザンヌの弟子の言葉はトンプキンズ・ルイス著『岩波 世界の美術 セザンヌ』宮崎克己訳(岩波書店)。セザンヌヘの批判はオーグ著『〔知の再発見〕双書92セザンヌ』村上尚子訳(創元社)。ジョルジュ・サンドは『我が生涯の記』加藤節子訳(水声社)。ロランは『ロマン・ロラン全集35 書簡・日記』宮本正清訳(みすず書房)。ゲーテは『ゲーテ詩集2』竹山道雄訳(岩波書店)。