小説「新・人間革命」 共戦 56 2012年 1月20日

山本伸一が、心の強さを強調したのは、日蓮仏法は、いわゆる『おすがり信仰』ではなく、『人間革命の宗教』であることを、訴えておきたかったからである。
最後に、彼は、「信心の血脈なくんば法華経を持つとも無益なり」(御書一三三八p)との御文を拝した。
そして、日蓮大聖人の仰せのままに、広宣流布に邁進する創価学会にこそ、信心の血脈があることを力説し、結びとしたのである。
勤行会終了後、伸一は、中国方面の青年部の代表と、徳山駅前のレストランで食事をしながら懇談した。
彼は、二日前に、広島などから山口文化会館に応援に来ていた青年部の職員を、地元に帰すように指示した。
他県のメンバーを交えずに、山口県の職員や青年たちを、直接、訓練したかったからである。
しかし、帰って行った青年たちが、どんなに寂しい思いをしていたか、彼は痛いほどわかっていた。
だから、そのメンバーも、徳山での懇談会に招いていたのである。
伸一は、食事のマナーなどを、青年たちに教えながら、共に食卓を囲んだ。
食事のあとも、レストランの和室で、さらに、青年部の代表と語り合った。
彼は、女子部の幹部に言った。
「みんなも、やがて結婚し、婦人部に行くでしょう。子育てに追われ、生活に疲れ果てることもあるでしょう。
また、第一線の組織活動で、苦労することもあるでしょう。しかし、自分は、女子部員のリーダーであったという、誇りと気概を忘れないことです。
『私は、大事な学会の組織を託された!』『自分を慕ってくれた人たちがいる!』ということを忘れず、自身の原点として、頑張り抜いていくんです。
女子部時代に、中核として信心に励んだ功徳、福運は大きい。
だから、途中、いかに辛いこと、大変なことがあっても、信心を貫いていけば、必ず幸せになれます。人生の大勝利者になれます」
魂を注ぐ思いで、伸一は訴えていった。