【第6回】 朗らかに! 粘り強く!  2012.10.1

ベストを尽くせ! それが勝利
 
ドイツの考古学者 シュリーマン
才能とは 何よりも エネルギーと忍耐力のことである
 
 ──「挑戦の秋」です。全世界の未来部の友から一生懸命、努力する様子が寄せられています。クラブ活動や、さまざまなコンクールなどで活躍するメンバーのニュースも、数多く届いています。
 
名誉会長 うれしいね!
 お手紙も、たくさんいただいています。担当者の方からも、毎日、報告が届きます。この「未来ジャーナル」でも、「聖教新聞」でも、スポーツや音楽、美術、語学など、あらゆる分野で奮闘するメンバーが紹介されているね。
 努力を重ね、栄冠を勝ち取ったみんなの姿は、お父さん、お母さんや家族の誇りです。地域の学会家族も喜んでくれます。
 勝利は、皆を明るく元気にし、希望と向上の力を広げます。
 でも、道は無限です。もっと、もっと上達できる。さらに向上心を燃やして力をつけ、前へ前へ進んでいってください。
 
 ──残念ながら、頑張ったけれど、思うような成果が出なかったり、惜しくも目標に届かなかったりと、悔しい思いをしている友もいますが……。
 
名誉会長 勝敗は時の運だから一喜一憂する必要はありません。思いっきりベストを尽くしたら、それが勝利です。
 人間は誰だって、勝ったり負けたりして強くなる。鍛えられていくんです。だから、くよくよしてはいけない。「心」が負けなければいいんです。
 真の勝利者とは、勝っても負けても、にっこりと、いっそう強い根性を持って、次の勝利に向かっていく人です。
      
 ──メンバーから、クラブ活動では、「なかなかうまくなれない」「レギュラーになれない」という悩みを聞きます。
 
名誉会長 さあ、そこだね。
 「入門」という言葉が、あるよね。どんな分野であれ、基礎から始まって、奥は深い。その門に入ったからには、先生やコーチ、また先輩の教えを受け、基本の稽古や練習を重ねて、一つ一つ学んでいく以外にありません。
 それは、厳しいし、苦しい。地道だし、時間だってかかります。
 だから、始めた時の気持ちを忘れないで、へこたれず、あきらめず、じっくりと力をつけるんです。
 きのうの自分より、きょうの自分が、少しでも成長していれば、勝ちです。真のライバルは「きのうの自分」だよ。
 一生懸命、頑張っているのに、なかなか結果が出ない。それでも歯を食いしばって努力をする。その一番つらく、苦労している時が、実は一番、力がついている時なんだ。
 そうやって鍛えたことは、クラブ活動にとどまらず、一生涯の心の宝になります。
 たとえレギュラーになれなくとも、努力は無駄にならない。未来部時代、補欠として陰で頑張り抜いたことが力となって、社会の晴れ舞台で大活躍している友も、私はたくさん知っています。
      
 ──なかなか上達しないと、ついつい人と比べて、「自分には才能がないのでは」と、弱気になってしまうことがあります。
 
名誉会長 そんなわびしい気持ちに引きずられてはいけない。
 カラッと自分で自分を励ましながら、勝つための努力を、朗らかに、粘り強く、貫き通すんです。
 本当の才能とは、何だろうか。ドイツの考古学者・シュリーマンの言葉を思い出してほしいんだ。
 「才能とは何よりもエネルギーと忍耐力のことである」(ディヴィッド・A・トレイル著『シュリーマン──黄金と偽りのトロイ』周藤芳幸ほか訳、青木書店刊)
 全くその通りです。だから、誰にも才能はあるんだ。
 
 ──シュリーマンは、「トロイ遺跡の発掘」という夢を実現した人物ですね。確か、今年で生誕190年になります。東京・八王子の地を、訪れたこともあります。
 
名誉会長 そうだったね。
 自伝(『古代への情熱』岩波文庫)等によると、シュリーマンは8歳の時に、お父さんから一冊の本をもらった。そこに描かれた古代のトロイ戦争の絵を見て夢を広げ、その遺跡を「いつか僕が見つけてみせる」と決意したのです。
 ここから、長く険しい戦いが始まりました。
 幼くして最愛のお母さんを亡くし、お父さんが職を失ったので、高校へ行かずに働かなければならなかった。時間をこじあけて勉強しても、すぐ忘れてしまうほど、体は疲れはてていた。だが、夢を実現するには、語学が必要だった。彼は独自の学び方で、英語、ギリシャ語など十数カ国語を習得した。
 また、必死で働いて事業を成功させ、資金を蓄えていきました。実際に発掘に取りかかったのは、40歳を過ぎてからです。
 そして、それまで信じられていなかった「トロイ文明」や「ミケーネ文明」が実在したことを、見事に証明していったのです。
 まさに、「才能とは何よりもエネルギーと忍耐力のことである」ことを示した勝利の劇であったと言ってよいでしょう。
      
 ──シュリーマンは、自分の「やりたい夢」のために、語学や仕事など、「やらねばならないこと」も、我慢強くやり通したんですね。
 
名誉会長 だから勝った。
 人は「やらねばならないこと」をやり切れば、必ず「やりたいこと」の力に変えていける。
 皆さんは今、「勉学第一」ですから、「やらねばならないこと」は勉強でしょう。
 クラブが忙しくて、疲れてしまう場合もあるかもしれない。でも、将来の大きな夢を実現するために、今は積極果敢に、しっかり学んでおいた方が得だ。
 なんとか聡明に工夫して、クラブで鍛えた力を、勉強でも大いに発揮してもらいたいんだ。
 
 ──勉強とクラブ活動の両立に悩む未来部員から、たくさん質問が届いています。
 
名誉会長 確かに両立は大変だ。でも、以前、一人の女子学生から質問を受けた時、私は、こう答えました。
 「『二兎(二匹のウサギ)を追う者は一兎をも得ず』と言われる。しかし、力があれば、百兎でも千兎でも追ってごらん」
 質問してくれた乙女の顔が、ぱっと明るくなりました。
 みんなは若いんだから、それぐらい大きな心意気を持って、伸び伸びと自分の可能性を引き出してもらいたい。
 あれこれ迷っている前に、まず「やってみる」ことです。「どちらも、やり切ってみせる」と一念を定めて、祈り、知恵を湧き立たせて挑戦することです。そうすれば、試行錯誤し、悪戦苦闘しながらも、必ず道は開けてくる。
 私と対談したアメリカの歴史学者で、人権の闘士のハーディング博士は述べていました。──スポーツ選手は真剣にトレーニングを続けることによって、自分でも想像できなかったような能力を開花させることができる。同じように、私たちには無限の可能性がある。それなのに、自分で自分に限界を作ってしまってはもったいない、と──。
 みんなの可能性は宇宙大です。ましてや、若くして妙法を持っている皆さんです。
 戸田先生も、青年に、「まず肚《はら》を決めよ! 決まったら勇ましく進め」と、いつも言われていた。
 目の前の課題に、100%の自分で、思い切ってぶつかろう。
 「全てに100%で挑む」──これが、青春の勝利の秘訣です。
 もちろん試験前は、勉強に集中する。試合などの前は、練習には力を注ぐ。そうしためりはりを賢く作っていくことも大事でしょう。
 
 ──クラブ活動が忙しく、学会の会合になかなか参加できないということもあるようです。
 
名誉会長 「心こそ大切」です。少しでも会合に出ようという心が尊い。その人は、太陽の方向を向いています。必ず、明るく正しい成長の軌道を上昇できます。
 今回は参加できなくても、今の自分の目標や頑張っていることを、担当のお兄さんやお姉さん、また、未来部の仲間たちにも伝えてほしい。
 学会は「心」で結ばれた世界です。「題目」で結ばれた世界です。同志は、みんなの成長を祈り、応援してくれる応援団です。みんなの頑張りが、喜びとなって広がり、それが大きな力となって、みんなのところに返ってくる。同志との絆が、いざという時に、みんなを支えてくれます。
 時間がなくても、心はつながっていける。だから、都合がついた時は、胸を張って会合に参加してほしい。学会の会合は、行く前はたとえ気が乗らなくても、帰りは来た時より元気になれる!
 
 ──「部内の仲間と仲良くするには?」「クラブの雰囲気が悪くて、いやになる」という、人間関係の悩みも、多数、聞いています。
 
名誉会長 クラブもまた、一つの「社会」です。だから、目標や目的を共有して切磋琢磨できるライバルもいれば、どうしても気が合わない人もいる。競争や、時には、ヤキモチなどもあるかもしれない。
 今から50年以上も前、私は戸田先生と共に、宮城県仙台市青葉城址に登りました。戸田先生は、その堅固な石垣を見ながら、「学会は人材をもって城を築くのだ」と教えてくださいました。
 石垣の石は、二つとして同じものはありません。大きさも形も、バラバラです。しかし、それぞれの石の特徴を生かし、的確に組み上げてこそ、何百年も崩れない堅固な石垣ができます。
 クラブという団体も同じです。一人一人が、特徴や個性を生かすことで、思ってもみないチーム力が発揮できる。
 「団体」の中でこそ、「個性」は生きるのです。
 その見事なるチーム力を発揮するには、「仲間を尊敬する」ことです。お互いが信頼し、尊敬し合えば、自ずと団結は生まれます。
 偉大な仏法を持った皆さんは、友を励まし、友の長所を見つけていく太陽の存在になってほしい。
 雰囲気が暗ければ、自分が太陽になって、皆を明るく照らしてほしい。
 
 ──部の中心になったメンバーからは、「皆をまとめていくには、どうすればいいか」「部長として、どうあるべきか」という質問が寄せられています。
 
名誉会長 偉いね。そう悩むことが、すでに立派なリーダーです。
 皆をグイグイと引っ張るリーダーもいれば、陰で皆を支える「縁の下の力持ち」のリーダーもいる。青年らしく、自分らしくで、いいんです。全部が勉強になります。
 歴史上の信念のリーダーや、私が対談してきた世界の指導者に共通していることがあります。それは「熱意」です。結局は、「熱意」のある人が信頼される。
 「勝ちたい」「皆と成長したい」「部を団結させたい」「皆に喜んでもらいたい」という熱い思いが根底にあれば、さまざまな知恵が生まれる。
 その祈りを込めた題目は、必ず全体に通じていきます。
 私も、戸田先生から、さまざまなリーダー論を教わった。確信を持つこと、誠実を尽くすこと、心を配ること、力を磨くこと──。それを支えるのは「熱意」です。その信念です。祈りです。
 ともあれ、苦労した人が偉大になる。愛する未来部の皆さんが、良き友人と朗らかに粘り強く成長し、世界の大指導者に羽ばたく日を、心から楽しみにしています。