小説「新・人間革命」 奮迅 23 2013年5月30日
「善と悪のあいだには一瞬の休戦もない」(注)とは、十九世紀のアメリカの思想家ソローの箴言である。
広宣流布の活動は、仏の軍と魔軍との熾烈な攻防戦である。ひとたび戦いを起こしながら、油断し、手を抜けば、悪の跳梁を許してしまい、待っているのは敗北である。
ゆえに、全力で戦い続ける以外にない。
学会の草創期を担ってきた先輩幹部たちが、支部長をいかに支えるかに、勝敗の大きなカギがあると考えた彼は、そのメンバーの集いにも、万難を排して出席するようにしていた。
二月九日には、草創の足立支部出身者の代表からなる「足立会」の初会合に臨んだ。
当時、足立はB級であり、この年の十二月末時点での会員世帯数は五百であった。それに対して、たとえばA級の小岩支部は千世帯を超えている。
さらに、五七年(同三十二年)三月には?弘教日本一?の栄冠に輝くのである。
秀吉は、かつてタクシー会社を営んでいたが、戦争の激化とともにガソリンの入手が困難になったために、やむなく会社を整理し、溶接業を始めた。
だが、ほどなく、彼に召集令状が届いた。年老いた父母と三人が暮らしていくために、妻の多恵は、夫に代わって溶接業を受け継ぐことになった。
といっても、入営直前に、器具の扱いや溶接の仕方を、たった一日、教わっただけであった。