大白蓮華 2013年(平成25年)9月号(No.765)


この世で果たさん使命あり

 創価学会名誉会長 池田大作


 大いなる人生には大いなる悩みがある。大いなる悩みがあるからこそ、大いなる境涯(きょうがい)が開かれるのだ。

 ロシアの魂の巨人トルストイが、行き詰まった時に、心がけていたことがある。それは、「自分は何のために生きているのかを思い出すこと」である。そうやって、常に自分自身の原点に立ち返ることで、苦悩を見下ろし、乗り越えてきたというのである。
 トルストイは、「人間は本来の使命に目覚めた時、あらゆる悩みを解決できる」と結論している。

 人は誰もが、それぞれに、かけがえのない使命を持って生まれ出でた。その使命を深く自覚できれば、それだけ心は深くなる。その使命に強く徹すれば、それだけ生命は強くなるのだ。

 有名な「諸法実相抄(しょほうじっそうしょう)」には、「いかにも今度・信心をいたして法華経の行者にてとをり、日蓮が一門となりとをし給うべし、日蓮と同意ならば地涌(じゆ)の菩薩たらんか」(1360ページ)と仰せである。

 この日蓮大聖人の仏意のまま、広宣流布の大使命に不退の誓願で立ち上がったのが、創価の師弟である。
 わが師・戸田城聖先生は、軍国主義の弾圧による法難の獄中にあって、「仏とは生命なり」と覚知(かくち)され、「われ地涌の菩薩なり」と師子吼なされた。
 戦争の魔性によって命が蹊順(じゅうりん)され尽くした濁世(じょくせ)に、先生は究極の「生命尊厳」「人間革命」の哲理を掲げられた。
そして、荒れ果てた大地から、一人また一人、地涌の菩薩を呼び出していかれたのだ。

 広宣の
  幸の花々
   勝ち誇れ
  地涌の同志が
    祈り進みて

 先生は、苛酷(かこく)な現実と戦う庶民を励まし続けた。
 「我々は妙法を弘めるために、わざわざ苦労多き姿で生まれてきた地涌の菩薩だ。肚(はら)を決めれば、必ず心の底から勝ったと言える日が来るんだよ」
 妙法と一体の地涌の生命には、恐れるものはない。いかなる宿命も使命に変えて、自分らしく人間革命の舞を喜び舞いながら、悩み苦しむ友どちに、無限の希望と勇気と自信を送っていけるのだ。

 根室海峡(ねむろかいきょう)を臨(のぞ)む天地で戦う北海広布の母がいる。夫に先立たれ、最愛の子息も不慮の事故で失った。
 それでも、けなげな母は断じて負けなかった。

 ♪地よりか涌きたる 我なれば 我なれば
  この世で果たさん 使命あり……

 「人間革命の歌」を胸に響かせ、広大な天地を聖教新聞の配達に走り、美事なる信頼と仏縁を広げてこられたのだ。5人の娘さんも立派に成長された。
 「苦難のおかげで、最高の使命に目覚めることができました。報恩の心で、もっともっと妙法を弘めたい。折伏こそ幸福の源泉です」と微笑まれる。
 こうした尊き母たちの祈りに包まれて、新たなる「大法弘通慈折広宣流布」の天の時が到来した。

 法華経には、地涌の菩薩の一人一人が率いる巻属(けんぞく)はガンジス河の砂の如く量り知れないと説かれる。
 久遠からの宿縁の友が躍り出てこないわけがない。
 今こそ、我らの確信の声で呼び起こし、今世の大使命を共々に悔(く)いなく果たしゆこうではないか!