【第18回】 感動とともに心は豊かに  (2013.10.1)

みんなは「幸福を創る大芸術家」
 ──2020年、東京でのオリンピックとパラリンピックの開催が決定しました。7年後ですので、まさしく今の未来部員の世代が主役となる祭典です。
名誉会長 夢が広がるね。
 先月、60カ国・地域から来日した、海外の広宣流布の青年リーダーたちも、未来部の皆さんとの出会いを心から喜んでいました。
 わが未来部の凜々しき成長こそ、世界の大いなる希望なのです。
 ──未来部員も、それぞれの「秋」に挑戦しています。「勉学の秋」「読書の秋」、そして「スポーツの秋」「親孝行の秋」「芸術の秋」……。
名誉会長 秋は、稲穂も黄金に輝く、一年の実りの季節です。
 近代オリンピックを提唱した、クーベルタン男爵は言いました。
 「努力は最上の喜びである」と。
 皆さんも、自分らしく努力を積み重ね、すがすがしい「実りの秋」としていってください。
 高き天空を仰いで、のびのびと大きく深呼吸しながら!
    
 ──未来部員と語り合って思うのは、「忙しい」と感じているメンバーが多いということです。
 「やることがありすぎて、目が回りそうです」という声も寄せられています。
名誉会長 そうか、今はみんな大変なんだね。たしかに、学校に行って、部活をして、勉強をして……。塾や習い事に通う人もいる。そして、未来部の活動への挑戦──。
 みんな、よく頑張っているね。本当に偉い。誰がほめなくても、私は最大にほめ讃えたい。
 忙しくて忙しくて、大変だろうけれども、青年がたくましく成長するのは、そういう時です。
 何にもすることがなくて、ただ、のんきにだらだらと過ごす。たまにはいいかもしれないけど、そういう日ばっかりだと、退屈で、あきてしまうし、充実もない。
 人間だけじゃない、すべての生命は常に成長する。命あるものは一瞬たりとも立ち止まらない。
 だから「忙しい」ということは「生きている」ということなんだ。その「忙しい」中で、どうやって、自分自身を励まし、元気づけながら、日々、新たに前進していくか。
 ここに人生の勝負がある。
 忙しいからこそ、賢く、ムダな時間をなくして、特に睡眠は十分にとるように心がけよう!
 睡眠不足では長続きしません。
 無理をしないで、あくまでも
 「健康第一」で!
     
フランスの大文豪 ビクトル・ユゴー
海洋よりも壮大なる光景、それは天空である。
天空よりも壮大なる光景、それは実に人の魂の内奥である。
 ──「時間を使え、時間に使われるな」と言われますが、心に余裕がないと、どんどん時間に追い込まれた感じになります。
名誉会長 そうだね。だからこそ、生命力が大事なんだ。
 その源泉が、勤行・唱題です。
 御書には、「日月天の四天下をめぐり給うは仏法の力なり」(1146㌻)とあります。
 大宇宙がたゆまずに運行する究極の力も妙法です。題目を唱える人は、その限りない力を、わが生命に漲らせていけるのです。
 忙しい朝は、三唱だけでもいい。心をこめて朗々と題目を唱えれば必ず通じます。
 みんなは、題目という最強無敵の武器を持っている。忙しい時こそ、題目を忘れず、太陽が昇るような満々たる生命力で、一日を出発してください。
 ──メンバーから、「忙しい中で、豊かな心を持つには、どうすればいいですか」という質問がありました。
名誉会長 向上しようと頑張っている生命には、あらゆるものを吸収していく力がある。縁するものから、より深い価値をつかむことができます。
 ゆえに、忙しいからこそ、良いものにふれる機会、美しいものを見るチャンスを大切にしてほしいんです。そこから、感動が生まれます。その感動が心の栄養になる。そうすれば、心がどんどん大きく豊かになります。
 私が、30年前、創価大学の隣に東京富士美術館をつくったのも、創大生をはじめ多くの若い人たちに、一流の芸術品を鑑賞してもらいたいという願いをこめてです。
 戸田先生は、よく「文学も、音楽も、絵画も、求めて一流にふれよ!」と言われました。
 先生は、私たち青年を、あらゆる角度から、「第一級の社会人」へ、「心豊かな民衆指導者」へと薫陶してくださったのです。
 時には、レストランで食事のマナーを教えてくださることもありました。
 「水滸会」や「華陽会」という人材グループでは、戸田先生のもとで、世界の名著を掘り下げて学び、指導者論や哲学論、歴史観などを教わりました。
 フランスの大文豪ビクトル・ユゴーの作品も、その教材の一つです。先生は常々、「ユゴーを読め」とおっしゃっていたんです。
     
 ──ユゴーと言えば、歴史的名作『レ・ミゼラブル』が有名ですミュージカルや映画にもなり、その歌は未来部の合唱団のメンバーも力強く歌っています。
名誉会長 私が初めて『レ・ミゼラブル』を読んだのは、たしか14歳か15歳の時、未来部の皆さんの年代でした。何度も読み返してきた一書です。
 創価大学には、ユゴーが闊歩しゆく姿のブロンズ像があります。その台座には、『レ・ミゼラブル』の有名な一節が刻まれている。
 すなわち、「海洋よりも壮大なる光景、それは天空である。天空よりも壮大なる光景、それは実に人の魂の内奥である」と。
 今回は、この言葉を皆さんに贈ります。
 自分自身の心こそ、大海よりも、大空よりも壮大な可能性を発揮していく原動力なのです。
 ──ユゴーは、激動の19世紀に、民衆へ魂の光を送り続けた偉大な闘士です。権力の迫害に屈せず、勇敢な闘争を貫きました。
名誉会長 そのユゴーも、幼少のころは体が弱かった。また何度も引っ越しせねばならない、なかなか落ち着かない暮らしでした。
 その中で、母はユゴー兄弟ににたくさんの本を読ませました。この読書が大きな力になったのです。
 私塾を開いていた老人からも、、多くのことを学びました。ラテン語ギリシャ語も教えてくれました。ユゴーは、後に、「幼年時代の三人の教師」として、母とこの老人と、そして美しい庭(自然)をあげています。
 また9歳の時、スペインを旅行して、そこで見た建築物や彫刻に感勤し、芸術の心が目覚めました。
 さまざまな良き人との出会いや書物との格闘、美しい自然や芸術との語らいが、ユゴーの心を深く、大きく、豊かに育んでいった。その心が、ペンからほとばしり、民衆への愛情あふれる世界文学へと結晶していったのです。
 ユゴーのように、青春時代に、素晴らしいものや、優れた人物にふれておくことが、どれほど大事か。自分自身の感動の体験が、やがて、多くの人を感動させ、喜ばせていく力をつけることにも、つながるのです。
     
 ──池田先生の『若き日の日記』を拝読すると、多忙を極める激闘の中で、心豊かに芸術にふれておられたことが記されています。
名誉会長 「一流にふれよ!」との戸田先生の教えの通り、努力しました。先生の事業を必死に支える一日一日だったから、それも真剣勝負の戦いでした。
 小さなアパートの一室では、よくレコードを聴いたものです。ベートーベンの交響曲第五番「運命」や第九番が流れると、その時だけは、狭い部屋が、荘厳な大殿堂に変わった(笑い)。後輩たちが来た時には、スッペの「軽騎兵」序曲などを一緒に聴いて、共に胸を高鳴らせた。
 時間のない中だからこそ、一曲の名曲も、一冊の名著も、一枚の名画も、若き生命に鮮烈に刻みこまれたのです。
 しかし、何と言ってもいって最高の「一流」とのふれあいは、戸田先生との対話でした。
 戸田先生は、天才的な大学者であり、青年をこよなく愛する大教育者でした。何ものも恐れない信念の師子王であり、庶民の母たちをこよなく大切にされる慈愛の人間指導者でした。その恩師に徹底して薫陶していただいたことが、私の最大の誉れです。
      
 ──「大きな心を持ちたいのですが、結局、自分のことばかり考えてしまって、親や友達に優しくすることができません。そんな自分が嫌になります」という悩みを語ってくれたメンバーがいます。
名誉会長 心配ないよ。誰だって、そうです。だからこそ、祈って、人間革命するんです。
 題目をあげて、祈れるということは、本当にすごいことなんだ。みんなは、自分の幸福を祈れる。と同時に、ご両親や兄弟、友達をはじめ、周囲の人々の幸せも、みな祈っていけるんだよ。
 心の大きさとは、何だろうか。
 それは、「一人の人のことを、どれだけ思いやれるか」、そのように思いやれる相手が「どれだけいるか」と言っでも良いでしょう。
 友のこと、みんなのことを深く広く祈っていけばいくほど、心は、どんどん広がっていくのです。
 私が出会った世界の一流の識者からは、必ずと言っていいほど、こうした心の大きさを感じました。世界平和を願い、人類のために行動する人は、その心もまた、世界を包み、人類を友とする広がりを持つのです。
 仏法では、「心は工《たくみ》なる画師《えし》の如し」と説かれます。心は素晴らしい画家のように、自在にあらゆるものを描き出すことができる、という意味です。
 若くして妙法を持《たも》った皆さんは、「希望の天才画家」であり、「幸福を創る大芸術家」です。思い描いた通りの自分になれないわけがありません。この心の力を自覚すれば、同じ一日であっても、計り知れない価値を創造し、偉大な未来を創造していけるんです。
     
 ──世界の識者が異口同音に感動されているのは、池田先生のもと、使命に目覚めた創価の友が、自身の力を最大限に発揮して、それぞれの地で良き市民として活躍していることです。
名誉会長 みんなのご家族の人間革命の姿は、世界の模範です。
 皆さんも、自身の大いなる夢に向かって思い切り挑戦してほしい。挑戦してみて初めて、自分の心の大きさも、偉大さも分かる。
 日蓮大聖人は、「心」の不思議さをケシ粒のような小さな中に入っても縮まることもなければ、虚空(大宇宙)の中に満たしても心が狭すぎるということもないと御書に仰せです(563㌻)
 どんなに窮屈な環境にいても、わが心は広々として縮こまることはない。反対に、見知らぬ広大な世界に飛び込んでも、心は自由に駆け巡ることができる。
 「心」は自由自在であいり、無限の力がある。その偉大な力を引き出すのが「信心」です。最高の自分自身を引き出す挑戦が「祈り」です。海洋よりも、天空よりも壮大な、無限の力と可能性を開きゆくために、仏法があるんです。
 君よ、大きな心を持つ、世界の指導者たれ!
 あなたよ、豊かな心で友を包む、幸福博土たれ!
 クーベルタンの言葉は鈴木良徳著『続・オリンピック外史』(ベースボール・マガジン社刊)。ユゴーの言葉は『レ・ミゼラブル(1)』 (豊島与志雄訳、岩波文庫刊)。辻昶著『ヴィクトル・ユゴーの生涯』(潮出版社刊)を参考にした。