若芽 21 2013年 11月14日

山本伸一たちは、ヘルメットを被り、工事現場の責任者である鈴木元雄所長の案内で、小学校の校舎を一階から見て回った。
所長は、伸一と同世代の、メガネをかけた生真面目そうな壮年であった。
まだ、天井は張られておらず、何本もの鉄の管がむき出しになっていた。
セメントを塗る作業をしている場所もあった。
この六日後の十一月二十五日からは、創価中学・高校の校舎を使って、小学校の入学選考が行われる。
開校の日は、次第に迫ってきている。遅くとも三月中旬には、一切の工事が完了しなければならない。
かなりの突貫工事になり、関係者にご苦労をおかけするのではないかと思うと、伸一の胸は痛んだ。
伸一たちは、一階、二階と回り、三階に移動し、工作室から外に出た。
そこは、音楽室の上であった。
創価学園のグラウンドの向こうに、玉川上水に沿って延びる、武蔵野の雑木林が見えた。
伸一は、作業服に身を包んだ鈴木所長に語りかけた。
「私は、教育を自身の最後の事業と決めて取り組んできました。
東京創価小学校は、未来の社会を担う人材を育む場所です。
この学校から、二十一世紀の平和の指導者がたくさん育っていきます。世界にも羽ばたいていきます。
校舎は、その成長の舞台です。
東京創価小学校で学ぶ子どもたちの心には、この校舎とともに、人生の原点が、数々の思い出が、刻まれることでしょう。
着工が遅かったために、大変にご迷惑をおかけすることになると思いますが、どうか、ご尽力ください。無事故での竣工を、くれぐれもお願いいたします」
彼は、自分の思いを率直に語り、握手を交わした。鈴木所長の表情が引き締まった。
東京創価小学校を建設する意義に、深く感銘してくれたようであった。
物事の意義を深く理解し、共感することから、ますます大きな活力と闘魂が生まれる。