小説「新・人間革命」大道 30 2015年3月17日

山本伸一は、次いで、「ただ世間の留難来るとも・とりあへ給うべからず」(御書一一四三p)について、講義していった。
「信心をすれば、世間から、怪訝な目で見られ、非難、中傷されることもあるでしょう。
でも、それは、経文に、御書に説かれた通りではありませんか。したがって、そんな「世間の留難」を恐れ、翻弄されて、一喜一憂してはならないと仰せなんです。
この御文のすぐあとには、『賢人・聖人も此の事はのがれず』とあります。
正義を貫けば難がある──これは、道理なんです。
したがって、何を言われようが、どんな仕打ちを受けようが、「御書に仰せの通りだ。いよいよ難が競い起こってきたな。よし、戦うぞ!」と心を定めて進むんです。
そして、堂々と、『わが道』を、『この道』を、『創価の正義の大道』を走り抜いてください」
皆、目を輝かせて、話に耳を傾けていた。
伸一は、さらに、「苦をば苦とさとり楽をば楽とひらき苦楽ともに思い合せて南無妙法蓮華経とうちとな(唱)へゐ(居)させ給へ」の箇所について語った。
「人生には、迫害の嵐、宿命の嵐が吹き荒れ、苦悩に苛まれることもあります。
『苦』に直面した時には、その現実をありのままに見つめ、逃げたり、退いたりするのではなく、「よし、信心で打開しよう」と、ひたすら唱題に励んでいくことです。
また、楽しい時、嬉しい時にも、感謝の心をもって御本尊に向かい、題目を唱え、歓喜を、さらなる歓喜の要因としていくんです。
苦楽ともに唱題し抜く。その弛みなき精進のなかに、持続の信心のなかに、宿命の転換も、人間革命もあるんです。
「題目を唱えることが、楽しくて、嬉しくてしょうがない」と実感できるようになれば本物です」
強盛な信心とは、強盛な祈りであり、持続の唱題である。
「唱題第一の人」は──揺るがない。臆さない。退かない。敗れない。
胸中に、不屈の闘魂と歓喜の火が、赤々と燃えているからだ。