小説「新・人間革命」大道 55 2015年4月15日

合唱指導を担当していた宮尾一志は、電話機を使って録音した「青葉の誓い」のテープを聴きながら、譜面に起こした。
聴き取りにくいところは、何度も巻き戻して再生した。
やっとの思いで、出来上がった譜面を複写し、男女青年部の合唱団二十人ほどに、米沢文化会館へ来てもらい、練習した。夜の部の開演時刻は、刻々と迫ってくる。
まさに、時間との戦いであった。
学会の強さは、このスピードにあった。何事も素早く手を打つ、迅速な行動で勝ってきたのである。
メンバーの胸には、先生が作詞だけでなく、作曲までしてくださった!という思いが、歓喜となってほとばしっていた。
夜の部の公演のフィナーレのあと、あいさつに立った東北総合長の青田進は、顔中に喜びをたたえて語った。
「本日、山本先生の作詞作曲による、東北の歌が完成しました! 曲名は『青葉の
誓い』です。それでは、発表いたします!」
場内に歓喜の拍手が爆発した。
合唱団が歌を披露したあと、皆で練習し、全参加者による大合唱となった。「青葉の誓い」が、初めて東北の天地に響き渡った。
  
 ♪青葉の森に 誓いたる
  我等の誇り 忘れまじ……
  
東北に、新生の歌声が轟いた。それは、人間讃歌の歌声であった。
東北の歌「青葉の誓い」は、八月八日付の「聖教新聞」に歌詞と楽譜が掲載された。
この日の昼、仙台では、婦人部、女子部の合唱団が青葉城址に集まり、歌の練習を開始した。
歌声は、希望の調べとなって、苔むした城の石垣に、生い茂る木々にこだまし、青空に広がっていった。
この「青葉の誓い」は、嬉しい時には、喜びの歌となり、悲しい時には、自らを鼓舞する勇気の歌となって、東北の同志の心に響き続けていくのである。