小説「新・人間革命」大道 66 2015年4月28日

長野県の記念幹部会の最後に、山本伸一は、力を込めて訴えた。
「御仏意のままに進む信心の世界には、いっさい、無駄というものはない。
いかなることも、不屈なる闘魂と歓喜の信心がある限り、すべて、新しい価値創造の源泉となり、大福運となることを確信していただきたい。
私は、『〝新生・長野〟万歳!』と、声を大にして叫びたいのであります」
幹部会が終わると、彼は県の幹部に言った。
「今日の幹部会に参加できなかった方のために、明日二十四日に記念勤行会を開きましょう。
希望者が多ければ、何度でも行います。皆さんを励ましたいんです」
八月二十四日は、伸一の入会三十一周年の記念日である。
記念勤行会は、午後二時から行われた。会場の松本平和会館は、次々と集って来る参加者であふれた。
この席で彼は、入会の日を回想しながら、自身の心境を語った。
「あの日以来、広宣流布に一人立たれた戸田先生に仕え、自らも未曾有の大願に生きることを定めた激闘の人生でした。
元来、病弱であった私は、八月二十四日がめぐり来るたびに、〝今年も、よくぞ生き抜いてこれたな〟との実感をいだいていました。
その私が、こうして元気に広宣流布の指揮を執ることができる。広布に生きるならば、己心の仏の大生命を開くことができるんです。
これが、仏法の、御本尊の力なんです!」
午後四時には、二回目の勤行会が開催され、ここにも、多くの同志が詰めかけた。
伸一は、その後、近隣の学会員の激励などに回り、午後八時過ぎに松本平和会館に戻ると、また、たくさんの同志が待っていた。
三回目の勤行会で、彼は呼びかけた。
「どうか、自分を大切に、家族を大切に――そして、和楽の家庭を築いてください。私は、皆さんを守るために走り続けます!」
この日、彼は万感の思いを句に詠んだ。
「忘れ得ぬ この日は信濃で 指揮とれり」            (この章終わり)