【第23回】 幸の教養博士 万歳! (2015.6.16)


太陽は
創価の母の
異名なり
幸と平和の
光いやまし
本当に教養ある人とはどのような人だろうか。
スイスの哲学者ヒルティの答えは明快だった。
それは「常にあらゆる善に対して感激と熱意とを持っている」人なりと。
私には、創価の女性たちの姿と重なり合う。
来る日も来る日も、友の幸福と社会の平和という「大善」に向かい、感激と熱意を持って行動を貫いているからだ。
生命尊厳の仏法を源泉として、皆が仲良く希望に生きるための智慧を発揮し、価値を創造しゆく女性たちこそ「幸の教養博士」とはいえまいか。
今月の10日、結成64周年の記念日を迎える婦人部の皆様に、私たちは、感謝を込めて、万歳を轟かせたいのだ。
 
“新たな地球文明のリーダーを育成する大学” として高い評価を得ている、わがアメリ創価大学(SUA)では、先月、第11回の卒業式が晴れやかに行われた。
平和を願う世界中の母たちの期待に応え、皆、眩(まぶ)しいばかりに成長し、羽ばたいてくれている。
このSUAのキャンパスには、 “アフリカの環境の母” マータイ博士の名を冠したイチジクの木が、みずみずしい緑の葉を茂らせる。
10年前、来日中のマータイ博士とお会いした折、私が植樹を提案させていただいた木である。
マータイ博士は、ケニアで活躍する創価同窓の女性リーダーに、「世界中のどこに行っても、創価の人たちが一番、幸せそうですね」と語られていた。また生き生きとしたメンバーの表情に、「どうしたら、こんなに素晴らしい笑顔になるのですか」とも質問しておられたそうだ。
世界中を魅了した「マータイ・スマイル」の持ち主がこよなく愛されたのは、「創価の女性の笑顔」だったのである。
わが婦人部の「実践の五指針」には、「わが家は和楽の前進」「後継の人材を伸ばす」とある。
皆様の輝く笑顔ありてこそ、家庭にも、地域にも和楽が広がり、人材が育っていくのだ。
「実践の五指針」には、「祈りからすべては始まる」ともある。
日蓮大聖人は「ただ心こそ大切なれ」(御書1192㌻、「四条金吾殿御返事」)と仰せである。
心は、目に見えない。だが、その心一つで、目に見える現実も大きく動かしていける。妙法という生命の大法則に合致した、一人の心の革命によって、自分の人生も、社会も、国土も必ず変えていくことができる。
そう説き明かしたのが、日蓮仏法の「一念三千」の法理である。
自他共の幸福を祈る信心の発露のすべてが、「我が一念に納めたる功徳善根」(同383㌻、「一生成仏抄」)となる。全部「心」で決まる。
このことを証明する気高き劇を、それぞれが希望のヒロインとなって演じてくれているのが、婦人部の皆様方である。
「意志あるところ、必ず道あり」とは、オーストリア声楽家サイフェルト博士のモットーである。
博士は、最愛のご主人を亡くされるなど、つらく悲しい経験をご自身の成長の糧(かて)とされながら、人びとに勇気と歓喜の歌声を届けてこられた。
大聖人は、一人の母に「軍(いくさ)には大将軍を魂とす」(同1219㌻、「乙御前御消息」)と、強盛な信心の志に立つよう励まされた。
祈りとは、 “断じて為す” という意志であり、誓願である。それが母の胸にある限り、栄光の未来への大道は、必ず開かれゆくことを忘れまい。
 
サイフェルト博士が、私との対談の折、感動をもって語ってくださったことがある。
それは、ご自身の音楽の師と共演したいという長年の “夢” が叶った喜びであった。
師と弟子が同じ舞台に立つ。その感激はいかばかりか。いかなる分野でも、師弟の道は限りない向上の道となる。
戸田先生の薫陶なくして、今の私はない。ゆえに私は、 “恩師の夢を実現すること” を、わが生涯の夢としてきた。師への報恩とは、師の夢を叶え、師に喜んでいただくことだ――そう心に固く決めてきた。
戸田先生が先師・牧口先生の心を心として、強く願われていたことは、「すべての女性が幸福をつかむこと」であった。
戦争で最も犠牲になり、最も苦しめられた女性が、最も幸福になれる平和な社会を!
その悲願を懸けて、戸田先生は、第2代会長就任の直後に婦人部を結成されたのである。
さらに女子部を結成された戸田先生は、常々、「女子部は教学で立て!」と励まされていた。
今月4日、記念の佳節を刻んだ日本中、世界中の華陽姉妹は、「華陽会御書30編」読了運動を推進しながら、明るく、伸び伸びと、ロマン薫る対話に挑戦している。
“婦女一体” の麗しき前進に、恩師も、そして6日に生誕144周年を迎えた先師も、会心の笑顔で拍手を送っておられるに違いない。
婦人部の五指針には、「地域と社会を大切に」とも掲げられている。
婦人部の地域社会への貢献こそ、時代を照らす光である。今月、「部の日」を迎える団地部、また地域部、農漁光部、離島部にあっても、女性の活躍が目覚ましい。
地域の身近な隣人たちと「立正安国」の対話をたゆまず繰り広げる主役も、婦人部の友である。
グループ単位での婦人部総会がいよいよ始まっている。この少人数の集いこそ、地域社会の共生と共栄の直道であり、世界平和の縮図である。
文豪ゲーテも、互いの行動と体験を共有する、楽しい談話によって「ことばはそれだけひときわ実りゆたかなものとなり、精神を高めるものとなる」と訴えていた。
苦難を越えた母たち、女性たちの体験から紡(つむ)ぎ出される言葉には、勇気を呼び覚ます力がある。
五指針の最後には「生き生きと体験を語る」と示されている。
聖教新聞大白蓮華に対して、読者から特に大きな反響が寄せられるのも、体験談である。
東北の岩手県久慈市に、90歳になる婦人がおられる。
貧乏、家族の死……沢山、辛苦を味わった。だが断じて負けなかった。
“宿命に泣き流されてはいけねんだ。朗らかに挑戦していけば、どんな宿命も転換されていくものでねすか”――
幾十星霜、試練を一つ一つ乗り越え、生命の財(たから)と輝かせてきた “多宝の哲人” の至言である。母の姿は友の安心と希望の灯火(ともしび)となっている。
何があっても、たじろがない。嘆かない。たとえ、今が悔し涙の連続であろうと、無敵の祈りは、一切を栄光の歴史に昇華してゆくのだ。
 
重い障がいのある娘を育てつつ、 『母の肖像』 『大地』 等の名作を世に問い、平和運動に邁進(まいしん)したアメリカの女性作家パール・バックは叫んだ。「最も悲しみに満ちた行路を歩んでいる間に、人の精神はすべて尊敬に値することを知りました」
最も深い悲しみから立ち上がった人は、最も深い哲学を学んだ、最も深い慈悲の人だ。
最も大きな苦しみを乗り越えた人は、最も大きな境涯を開き、最も大きな幸福を広げゆく人だ。
この人間革命の体験を友に語り、分かち合う、母たちの行動が「幸福と平和と勝利の道」を創り開くのである。
広宣流布は、女性の力で成し遂げられる!」
恩師のこの確信は、私の胸にも、絶対の確信として輝き渡っている。
母の祈りは、皆の心を動かさずにはおかない。母の言葉は、友の胸を揺さぶらずにはおかない。
世界の女性リーダーの方々も、私たちの宝の友として連帯されている。
サイフェルト博士からは、つい先日も、「創価の婦人部との交流を通して学び合っていけることは、大きな喜びです」との伝言が届けられた。
インドネシアの故ワヒド元大統領夫人のシンタ・ヌリヤさんも、今回の婦人部総会に真心の祝福を寄せてくださった。
夫人は “女性は国の柱である” 等の英知の言葉を紹介されるとともに、「すべての人は母から生まれてきます。その人たちが人類を救っていくのです。母がいるからこそ平和になれるのです」と語られている。
さあ、強く朗らかに、また堂々と、自身の体験を、創価の正義を、語り抜こうではないか!
偉大なる幸の教養博士よ、万歳! 人間世紀の母たちよ、万歳!
 
幸福の
博士と生き抜け
恐れなく
希望の智慧
友を照らして
 
ヒルティの言葉は 『幸福論(第二部)』 草間平作・大和邦太郎訳(岩波書店)、ゲーテは 『ゲーテ全集8』 所収「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」登張正實訳(潮出版社)、バックは 『母よ嘆くなかれ』 伊藤隆二訳(法政大学出版局)。