小説「新・人間革命」 力走56 2016年5月30日
山本伸一の激励は、高知研修道場を出発する間際まで続いた。
研修道場の玄関を出た伸一は、雄大な景色を生命に刻みつけるように、しばらく周囲をゆっくりと歩いた。
見送る同志に、大きく手を振って、車上の人となった。
彼は、それから足摺岬へ向かった。
そこでレストランや土産物店などを営む何人かの学会員を、励ましたかったのである。
“同志がいるならば、どこまでも行こう!”と、心に決めていたのだ。
車は、坂道を下って、国道を足摺岬に向かって進んだ。右手に青い大海原が広がっていた。
このお宅は、座談会などの会場になっているという。そこに、多くの会員が集っていた。
伸一は、皆と勤行したあと、外へ出て、一緒に焼きイカを?張りながら語り合った。
「ここは交通は不便かもしれませんが、空気もきれいで、美しく雄大な自然がある。そのなかで学会活動に励めるなんて、最高に幸せではないですか。私も住みたいぐらいです。
自分のいる場所こそが、使命の舞台です。大都会の方がいいと思うこともあるかもしれないが、大都会は自然もないし、人間関係も希薄です。
東京などに憧れて出ていった人たちが、懐かしく心に思い描くのは、結局、ふるさとの美しさ、温かさなんです。
彼方に幸せを求めるのではなく、自分のいるこの場所を、すべての面で、最高の地に、常寂光土にしていってください。自分の一念を変えることによって、それができるのが仏法なんです」
さらに伸一は、「私たちは、御本尊を通し、いつも心はつながることができます。
皆さんの健康と、ご活躍を祈っています」と言って、皆に別れを告げた。