小説「新・人間革命」 清新62 2016年年8月26日

山本伸一に励まされた蒲田支部の同志は、一騎当千の闘士となって二月闘争に走った。
皆が、途方に暮れるしかないほど深刻な悩みをかかえていた。
しかし、そのなかで私は信心で勝つ! 負けるものか!と、広宣流布の使命に奮い立っていったのである。
悩める人が、悩めるままの姿で決然と立ち上がり、友を励まし、広宣流布を進める──
そこにこそ真実の共感が生まれ、人びとは、最高の勇気、最大の力を得ることができる。そこにこそ地涌の菩薩の実像がある。
その戦いの帰結が、一支部で一カ月に二百一世帯という当時としては未曾有の弘教を実らせたのだ。
そして、より重要なことは、勇んで二月闘争を展開した同志は、功徳の体験を積み、歓喜と確信に燃え、苦悩を乗り越えていったという厳たる事実である。
どんなに大きな苦悩をかかえていても、友の幸せを願い、勇気をもって仏法を語り、励ます時、わが胸中に地涌の菩薩の大生命が脈打つ。
その生命が自身の苦悩を打ち破り、汲々とした境涯を大きく開いていくのだ。
創価学会とは励ましの世界である。励ましは慈悲の発露であり、この実践のなかに仏法がある。
広宣流布とは、励ましのスクラムを地域へ、世界へと広げゆく聖業なのだ。
伸一は今、熊本の婦人部本部長・成増敬子の抱負を聞きながら、二年前の一九七七年(昭和五十二年)五月の熊本訪問で、代表の幹部と懇談したことが懐かしく思い出された。
その折、成増が、「義母が四歳と二歳の子どもの面倒をよくみてくれているので助かっています」と、心から感謝している姿が忘れられなかった。
また、益城本部の婦人部本部長は、伸一が本部内を訪問した歴史を誇りとし、皆が喜々として活動に励んでいる模様を報告した。
阿蘇の婦人部本部長は、地域を幸せの園にしたいとの決意を込め、阿蘇にもスズランが咲くことを伝えた。
伸一は、熊本の同志が一人も漏れなく、強く生き抜いて、人生勝利の花を咲かせるように、日々、祈り続けてきたのである。