【第1回】 夢は青年の特権なり   (2017年5月1日)

必ず開ける! 君の使命の舞台が
 
──新しい「未来対話」、本当にありがとうございます。未来部の友から、喜びの声が数多く届いています。
 
池田先生 みんなのためだったら、何でもしてあげたい。未来部の皆さんの前進こそが、私の希望だからです。
さあ、大いに語り合おう!
 
──今年度は「夢の翼」と題し、「仕事」や「職業」をテーマに、お話を伺いたいと思います。
 
池田先生 いいね! とても重要なテーマだね。
「あの仕事がしたい」「この職業に就きたい」と、夢に向かって挑戦する青春は、春の太陽のような朗らかな輝きがあります。
今、みんなは、どんな「夢」を描いているかな。
私の恩師•戸田城聖先生は、よく「青年は夢が大きすぎるくらいでいい」と言われました。
夢は「翼」です。世界のどこにだって、羽ばたていける。
夢は「スイッチ」です。自分の眠っていた力を目覚めさせてくれる。
夢は「灯台」です。苦しい暗闇の時も、進むべき道を示してくれる。
そして、夢は「青年の特権」です。夢に挑む限り、永遠に成長できるのです。
もちろん、夢は叶っていないからこそ夢です。実現するためには、現実の上で努力する以外にありません。
まだ、なかなか夢を持てないという人もいるでしょう。でも、焦らなくていいんです。
大事なことは、目の前の一つ一つの課題に一生懸命、取り組むことです。
その人には、自分らしい夢と出あうチャンスが必ず巡ってくるからです。
 
──伝統の夏季研修会では、 各分野で活躍される先輩方を講師に、未来部時代の体験や、仕事のやりがいなどを学ぶ「ドリームブース」が大好評です。
「海外留学なんて、諦めていた。でも、お話を聞いて、もう一度、本気で英語を勉強して、 世界の人と話してみたいと決意しました」「仕事への見方が変わり、将来への期待が膨らみました。必ず夢を叶えます」などの声が寄せられています。
池田先生 未来部のために尽くしてくださっている全て方々に、あらためて心から御礼を申し上げます。
社会には、たくさんの仕事があります。
皆さんの身の回りの物を見ても、多くの「仕事」でできていることが分かります。
洋服を手に取れば、原材料を作る仕事、生地を作る仕事、デザインをする仕事、裁縫の仕事、完成した服を運ぶ仕事、店で売る仕事
……どれか一つが欠けても、私たちは服を着ることができません。
どの仕事も、楽しいばかりではない。それぞれに大変な苦労があります。
でも、その仕事を通して、人々の笑顔を広げ、自分も笑顔になる。
「仕事」とは、皆の幸福を創り、自分も幸福になる「喜びの源泉」なのです。
「はたらく」とは、「はた (=そばにいる人)を楽にすること」と言った人がいます。
そこには、「人の役に立つ」喜び があり、誇りがあります。
また、「働」という字は「にんべん(人)」に「動」と書きます。
悩んでいる人、苦しんでいる人のために信念を持って行動することが、どれほど尊いか。
ゆえに、人々の幸福のために、より良き社会のためにと動き、 尽くし抜いている、皆さんのお父さんや、お母さん、おじいさんや、おばあさん、皆さんを支えてくれる学会のおじさん、おばさん、お兄さん、お姉さんは、一番、偉大な人たちであると、私は断言したいのです。
 
──挑戦する前から、「自分には無理だ」「できっこない」 と考えてしまい、夢を広げられない友もいます。
 
マータイ博士の言葉
ささやかな行動でも 何度も繰り返せば 世界を変えられる
 
池田先生 今は、情報があまりに溢れているから、あれこれ考えすぎて、一歩、踏みだせないこともあるだろう。
でもね、何でも、やってみないと分からないものだよ。
私も若き日、ある尊敬する先輩から、「池田君、何があっても、青春は、『当たって砕けろ』の勇気でいこうよ!」と励まされたことがあります。
今でも思い出す言葉です。
たとえ、君が、貴女が、自身を持てな くても、私は皆さんを信じます。皆さんの無限の可能性を信じます。
皆さんの無敵の勇気を信じます。
「できない」理由を探すよりも、「できる」と決めて、努力した方がいい。困難は多 いけれど、その分、「できた」 時の喜びはひとしおです。
仮に思った迎りの結果が出なかったとしても、努力したことは、必ず生きます。そこから新たな希望の道が絶対に開けます。
ともあれ、皆さんは若い。若さは、どんな財産にも勝る、最高の生命の宝です。
だから、失敗しても、くよくよしないで、 朗らかに粘り強く挑戦し抜いてほしい。
苦労しながら学び、使命の道を開いた一人として、私は、ワンガリマータイさんを思い起こします。
「もったいない(MOTTAINAI)という日本語を世界に広めた、アフリカの環境の母です。
20052月、聖教新聞社で1時間にわたって語り合いました。
太陽のように明るい笑顔と、人間への慈愛に満ちた姿は、今も脳裏に焼き付いて離れません。
 
──マータイさん は、ケニアの出身です。アメリカ留学をへて、母国のナイロビ大学で博士号を取得。アフリカの大地に木を植える「グリーンベルト運動」をしました。
独裁権力と戦い、逮捕・投獄されたこともあります。
2004年、「持続可能な開発、民主主義と平和への貢献」で、アフリカ人女性初のノーベ ル平和賞を受賞しました。
池田先生 マータイさんたちが推進した植樹は、開始以来、約30年間で、実に3000万本に上りました。「木を植える」 ことは、地味に見えるかもしれない。
しかし、その小さな行動の執念の積み望ねが、やがて世界をも動かしたのです。
「行動の人」「信念の人」であったマータイさんは語っています。
「私たちは、自分たちのささやかな行動がよい変化をもたらしていることを知っています。
私たちがこれを数百万回繰り返せば、世界を変えられるんです」
この不屈の精神は、幼少時代から、働きながら学び続けた努力に支えられていました。
マータイさんが生まれた頃、 ケニアでは、女性に教宵は必要がないと思われていたのです。
彼女も幼い日から、農作業や家事を手伝ってきました。
懸命に働きながら向学心を燃やし続けたマータイさんは、中学を卒業した後、全寮制の女子高校に進学します。
そこで、先生方から、大切な信念を教わりました。
「社会は本来善きもので、人は最善を目指して行動する」
私も 、強く深く共感します。
 どんなに悲惨な事件が続こうとも、どんなに悲観主義に覆われようとも、世界は、そして未来は、必ずより良く変えていける。
日蓮大聖人は、「仏の住む浄土といっても、汚れた国土を意味する穢土といっても、二つの別々の国土があるのではなく、そこに住む私たちの心の善悪によって違いが現れる」(御書384㌻)と教えてくださいました。
社会を、未来を、明るく、楽しく、希望に満ちあふれた世界に! その変化は、私たちの「心」からスタートするのです。
マータイさんは、未来を信じ、自身の可能性を信じて、挑戦に挑戦を重ねました。
結局は、心が負けなかったからこそ、世界を変え、現実社会で勝利を開くことができたのです。
私が出会い重ねてきた世界の一流の方々も、皆、不屈の楽観主義の闘士です。
環境がどうあれ、現状がどうあれ、〝絶対に乗り越えてみせる!〟〝必ず変えてみせる!〟という気概を持って、戦ってきた。
そして、〝世界はもっと良くなるはずだ!〟 と信じ、行動し抜いてきたのです。
いわんや、若くして仏法を持ち、日々の唱題で希望の太陽を胸中に昇ららせゆく、わが後継の皆さんは、どうか確信してほしい。
君が縦横無尽に活躍する使命の舞台が、必ず開けることを!
貴女の未来は、前途洋々と広がっていることを!
 
──若き日の池田先生も、戸田先生の事業が苦境に立たされていた日々に、未来を見つめ、奮闘されました。どんな思いで 仕事に励まれたのでしょうか。
池田先生 ただ「戸田先生のために」──その一点です。私は肺病を患っていて、医師からは「30歳まで生きられない」と言われた体でした。
でも、「師匠のために」と決め、真剣に祈りながら働くと、勇気も希望も、智慧も力も、そして、生命力も湧いてきました。
大きく活路を開くことができたのです。
先生が経営する出版社に入社し、少年雑誌の編集に携わった時は「正義を伝え、勇気を贈る記者になりたい」という、子どもの時の夢が叶ったようで、とてもうれしかった。
でも、戦後の不況で、先生の事業が思うようにいかなくなり、それまでと全く違う仕事することになりました。
私にとっては、苦手な仕事でした。
しかし、私は決めていました。
どんな仕事でも、世界一の哲学を持ち、世界一の師匠に薫陶を受けいるのだから、世界一の仕事をするのだ。世界一の戸田先生を、仕事で絶対に宣揚してみせるのだ、と。
日々、阿修羅のように働き、勉強も望ねました。
戸田先生の夢をわが夢として、一つ一つ実現してきました。これが私の誇りです。
大聖人は「御みやづかいを法華経とをぼしめせ」(御書1295㌻)と仰せになられました。
仕事を「法華経の修行」と思いなさいということです。
社会で奮闘する皆さんの先輩の指針にもなっている、希望の御金言です。
皆、「自分がいる場所が、わが使命の舞台だ」「仕事を通して人間して、社会に実証を示そう」と心を定め、会社や職場の発展を祈り、真剣に、誠実に、努力しています。
負けじ魂に燃えて働 く学会員には、経営者や識者からも、多くの称賛と信頼が寄せられています。
英語の「Work」とという言葉には「仕事」のほかに「勉強」「努力」といろ意味があります。
夢を持って一生懸命、働き、学び、努力できる人は、すでに勝利者です。
誰が何と言おうと、私は皆さんの未来の大勝利を確信しています。
右手にも左手にも勝利のVサイン、合わせれば「Work」のWサインになります。
この努力と栄光のサインを掲げて、日本中、世界中の同志と共に、私は、皆さんの成長を楽しみに待つています。
 
参考文献はワンガリ•マータイ著『UNBOWED へこたれない』小池百合子訳(小学館)、同著『モッタイナイで地球は緑になる』福岡伸一訳(木楽舎)、筑摩書房編集部著『ワンガリ•マータイ「MOTTAINAI」で地球を救おう』(筑摩書房