【第2回】 語学は「互学」   (2017年6月1日)

相手の側に立つ国際人たれ
 
──前回は、夢を持つことの素晴らしさや、働く意義などについて語っていただきました。
未来部の友から、「自分にしか果たせない夢を見つけます」「夢は大きく! そのために目の前の課題にベストを尽くします」など、数多くの決意の声が 寄せられています。
 
池田先生 うれしいね。未来は「待つ」ものではなく、「創る」ものです。みんなの心に描かれる夢や理想こそが、将来の自分を築く力であり、未来を照らす光です。
 
──今回のテーマは「語学」です。グローバル化が進む今、語学の力は、ますます重要になっています。
池田先生 みんな、語学が大事だということは、十分、分かっているよね。
だけど、いざ教材を開くと眠くなってしまうこともある……(笑い)
 
──英語の勉強について「苦手意識がある」「なかなか成績が伸びない」という悩みも、よく聞きます。
池田先生 壁に直面していると感じるのは、前進している証拠です。
そこで、あきらめないことだ。
自転車だって、みんな初めから乗れたわけではないでしょう。
乗れるまで練習を続けたから乗れたのです。転んでも手足をすりむいても、歯を食いしばって。
でも、いったん乗れるようになってしまえば、体が覚えてくれる。
勉強も同じではないだろうか。
私がお会いした世界的な学者の方が言われていたことがあります。
学んでいくと、「ここは越えられない」という壁にぶつかる。その時が勝負だ。
そこで踏みとどまって、もう一歩、また一歩と挑戦すると、パッと開けてくる、というのです。
とくに語学は〝世界へのパスポート〟です。習得すべき時を逃したら、もったいない。
うまくいかなくても、体当たりでぶつかれば、必ず身に付きます。
「若い今がチャンス!」と、学び抜いてほしいのです
 
──現在、日本では2020年の東京五輪へ向けて、外国人の観光客や留学生の倍増が目指されています。
英語を社内公用語とする企業もあります。
社会に出てからも、英語の勉強は欠かせなくなっています。
池田先生 国際化の流れは、 あらゆる次元で進んでいるね。
今はインターネットの普及によって、〝いつでも〟〝どこでも〟世界とつながる環境に暮らしています。
世界のインターネット情報は、ほとんどが外国語であり、半分以上が英語だともいう。
その意味からも、語学力があれば、自身の世界をそれだけ大きく楽しく広げていくことができます。
皆さんがリーダーとして踊り出る時代には、さらに社会は国際化、多様化、IT化が進み、 想像を超える変化が起きているでしょう。
その中で、世界中の人々と手を携えて、幸福と平和の方向へ社会をリードしていくのが、皆さんだ。
だから、語学は、ぜひとも自在に使いこなしてもらいたいんだよ。
 
──日本人は、英語を使う〝楽しさ〟よりも〝恥ずかしさ〟の方が先立ってしまうとい 指摘があります。
池田先生 これは、語学に限った話ではありません。気を付けたい〝心のクセ〟です。
よく「プラス思考」「マイナス思考」と言ううでしょう? 
ここでは、分かりやすく、「足し算思考」「引き算思考」と言い換えてみよう。
足し算思考では、自分が今いるところを〝ゼロ地点〟と見る。
だから、英単語を一つ覚えれば〝プラス1〟です。
一言でも外国人と会話ができたら、大きなプラスだ。上手に話せなくても、良い経験としてプラスにとらえればよい。
挑戦する限り、失敗はない。全てを向上の糧にできるからです。
一方で、引き算思考では、〝100点満点〟と比べて、自分がどれだ劣っているかを考えてしまう。
英単語を一つ覚えても、〝まだ一つ〟と感じる。
外国人と会話できても、うまく話せなかったことを気にして、クヨクヨする。やっぱり語学は苦手だなと、気持ちが重くなる。
引き算思考は、そういう傾向があるんじゃないかな。
そもそも、語学を身に付ける上でも、頭がいいとか、悪いとか、大したした違いなんか、ないんです。
私の師匠である戸田城聖先生は天才的な数学者でした。
でも、「頭がいいのと悪いのと、 どのくらいの差があるか」と質問されると、筆をとって半紙にサッと一本の線を引いて、「この線の『上』と『下』くらいの差しかないんだよ」とニッコリされました。
その「線一本」とは、何だろうか。
「やってみよう」「学んでみよう」という「挑戦する勇気」 だと、私は思う。
勇気ならば、 いくらでも出せる。いわんや、 皆さんには、勇気の源泉となる勤行•唱題があるじゃないか。
まずは一歩を踏み出してみよう。単語帳を開くことも、学校の先生に質問することも、勇気の一歩です。
英語の歌を聴くことだって、大きな前進だよ。
御書には「一は万が母」(498㌻)とあります。
全ては最初の一歩から始まる。地道な一歩また一歩の積み重ねがあって、万里の先のゴールに到達できるのです。
 
──ある未来部の先輩は、英語の教科書の音読•暗唱に挑戦したところ、成績がぐんぐん伸びたと語っています。
池田先生 努力の勝利だね。人間は、生まれた時から、言葉 のシャワーを浴びながら、その言葉をまねる中で、言語を習得していきます。この点からも、 正しい英文を繰り返し聞き、音読し、体で覚えていくことは、 大事な基本なんだね。
中国の外国語大学の先生方に、「人は何カ国語ぐらいまで、しゃべれるようになります か」と聞いたことがあります。
答えは、「78カ国語」です。
若いみんなは英語力を、いくらだって伸ばせるし、さらに幾つもの言語を習得できる。
マレーシア創価幼稚園では、かわいらしい世界市民たちが、マレー語と中国語と英語の3つの言語で学んでいます。
未来部の先輩の中からも、通訳をはじめ、数多くの語学のエキスパートが誕生しています。
今から45年前の5月、世界的な歴史学者アーノルド・J•トインビー博士と、ロンドンにある博士の自宅で対談を開始しました。
翌年もロンドンでお会いし、対談集を発刊しました。
ある日、トインビー博士が、バッキンガム宮殿の近くにある格式高いクラブの昼食に招待してくださったことがあります。
食事後、通訳がつかないで、博士と二人きりで話すことにな りました。
いや、この時ほど、もっともっと英語を勉強しておけばよかったと悔やまれたことはありません(笑い)。
それでも、博士は、ゆっくりと簡単な英語で話してくださいました。
私は、博士のお気遣いに感謝しつつ、身ぶり手ぶりを交えて語り、なんとか意思の疎通ができました。
「思いを伝えよう」という誠意は、必ず相手に伝わります。
それはそれとして、若い後継の皆さんには、私の分まで語学を磨いて、世界のどこへ行っても、堂々と自らの信念を語り、友情の輪を広げられる人になってほしいんです。
 
──東京•関西の創価中学校では毎年、アメリ創価大学SUA)での英語研修を実施しています。
同じ時期にブラジル創価学園の生徒もSUAを訪れ、合同の研修や交流会を行っています。
池田先生 うれしいね。これから、創価教育のネットワークを軸に青年の大交流時代が到来します。その主役は皆さんだ。
「百聞は一見にしかず」です。今は、いろいろな奨学金制度や、語学の研修プログラムなども充実しているから、学校の先生や、先輩に相談して、大いに活用してほしい。
世界のどこへ行っても、SGIの同志がいます。勤行と唱題を実践し、「ザダンカイ」を明るくにぎやかに開いています。
この世界広布の息吹を、心広々と呼吸してください。
地球は丸いのだから、皆さんがいる場所が「地球の真ん中」です。
だから、自分らしく、今いる場所で輝くことが、世界広布につながります。
何より、真の国際人のモデルは、皆さんのお母さんやお父さん、おじいさんやおばあさんです。
自分中心ではなく、世界の人々のため、平和のために、智慧と慈悲と勇気を発揮して行動している。
「人のため」「社会のため」という大きな心こそ、国際人の根本の要件なのです。
一次元からいえば、語学の習得は、「相手の側に立つ練習」ともいえます。
言語には、国や地域の文化•思想•歴史も詰まっていて、丸ごと学ぶことができるからです。
私も、SGIの同志を迎える時や、海外の方との会見の際には、相手の言語や文学などを事前に学び、その言葉であいさつし、その国の心を語り合おうと心掛けてきました。
「相手の側に立とう」「相手から学ぼう」という〝生き方〟を培うことが、語学を磨く醍醐 味です。
それは、お互いに学び合い、共に成長しゆく〝互学〟の道なのです。
 
──創価大学SUAは今、 世界から留学生を迎え、心豊かな国際人を育成するキャンパスとして大きく発展しています。
池田先生 創大は、やがて希望できる全ての日本人学生が、卒業までに留学・研修など海外 で学びを経験できる時代になります。
国際教養学部の学生も頼もしく成長している。
私も視察に伺った男子の滝山国際寮、女子の万葉国際寮にも、世界中から最優秀の学生を迎えています。
また、SUAでは、3年生になると、全ての学生がアメリカ国外へ留学することになっています。
全米でも、全学生が留学する大学は珍しいと言われています。
「世界民(世界市民)」を唱えられた牧口先生、「地球民族主義」を訴えられた戸田先生も、今の創価教育の発展の様子をご覧になられたら、どれほど喜ばれるだろうか。
世界に誇る創価教育の学びやも、そして世界の友との創価の大連帯も、一切、皆さんに託しゆく〝師弟の大城〟です。
私が世界に道を開いてきたのは、全て、皆さんのためです。
皆さんが、世界平和の大空へ、勢いよく雄飛する日を、私は楽しみに待っています。
さあ、今こそ語学の翼を鍛えに鍛えよう! 朗らかに挑戦だ!
The wise will rejoice while the foolish will retreat(賢者はよろこび愚者は退く)」。
これが我らの合言葉なり!