【第3回】 法律家 民衆を守る勇者 (2017年7月1日)
抜苦与楽の専門家《スペシャリスト》たれ
創価の人権闘争
「誰もが人間らしく幸福に生きる権利」が最も尊重される社会を
──みんなで「夢の翼」を広 ける連載は、今回からいよいよ、具体的な仕事や職業に光を当てていきたいと思います。
池田先生 愛する未来部の皆さんが、夢に向かって努力し、夢をかなえていくことほど、私にとってうれしいロマンはありません。
どの仕事にも、かけがえのない使命とやりがいがあります。
仕事を通して、自分の生命を輝かせ、人々と社会に貢献していくことができるからです。
だから皆さんが、この「夢の翼」で取り上げていく仕事に就かないとしても、それぞれの道で働いている人たちのことを学ぶ意義は大きい。
人知れぬ舞台で、世のため、人のために尽くしている偉い人が、いずこにもいます。
そうした意味でも、「夢の翼」では、その職業に徹して、尊い責任を果たしている人たちへの敬意と感謝を忘れずに語り合っていきたいと思うが、どうだろうか。
──はい! よろしくお願いします。
まず最初に取り上げる職業は、弁護士や検事、裁判官など、「法律に関わる仕事です。ニュースやドラマなどでも目にする場面があります。
池田先生 「法律」と聞くと、みんな、何を思い浮かべるかな。
「難しい」「堅苦しい」「近づきがたい」といったイメージがあるかもしれない。
けれど、法律は、私たちの暮らしを、見えないところでしっかり守り、支えてくれている。
日々の当たり前の暮らしは、法律があるからこ成り立っています。
例えば、未来部の会合を行い、自由に皆で集まって、学び合い、語り合うことができる。
これは今の日本の憲法で、言論や集会の自由が保障されているからです。
皆さんが毎日、学校で学べるのも、誰もが差別されることなく等しく教育を受けられることが「教育基本法」で定められているからです。
残念ながら、まだ世界には、十分に教育を受けられない子どもたちが、数多くいます。
──「いじめ」を防ぐための法律もあります。
最近まで、いじめは、①弱いものに対して一方的に、②継続的になされ、③相手に深刻な苦痛が生じた、④それを学校が事実確認した、という条件がそろって初めて認められていました。
これでは、誰かが苦しい思いをしているのに、いじめと認められないケースが出てきてしまいます。
そこで「いじめ防止対策推進法」が制定(2013年)されて、いじめられた側が心身の苦痛を感じているなら、インターネットでの行為も含めて「いじめ」と認定されるようになったのです。
池田先生 被害者が泣き寝入りせず、すぐに対策が取れるようになったんだね。
いじめの多くは「犯罪」です。絶対にしてはならないし、させてもならない。
また、いじめを受けたら、我慢しないで声を上げるべきです。人間の権利を軽んじてはなりません。
法律とは、「人権を守る」ものであり、「暮らしを守る」ものです。だから、とても身近で、なくてはならない存在なんです。
池田先生 みんなは「六法全書」という、分厚い本を見たことはあるかな。
法律のスペシャリスト(専門家)になることは、そうした膨大な法律を学び、使いこなしていく挑戦です。
未来部の皆さんの先輩で、弁護士になる夢をかなえたメンバーが、「法律家」とは、どんな仕事ですか?」と聞かれて、誇り高く 答えています。
「事件など、さまざまな問題にぶつかった時に、人の悩みを軽くしてあげる仕事です。人の生活を守る事です」と。
仏法で説く「抜苦与楽」すなわち「苦を抜き、楽を与える」という精神にも通じます。
法律は「剣」です。人をだます悪や、人間を不当に苦しめる原因を断ち切ります。
法律は「盾」です。襲い掛かってくる苦難や、思いも寄らないトラブルから厳然と守ってくれます。
法律は「地図」です。私たちの現状を知らせ、次に進むべき造を示します。
ゆえに、人生という〝冒険〟に臨む上で、法律を知ることは大いなる力です。
たとえ法律家にならなくても、法律を学ぶことは大切です。その学びを通して、人の意見に振り回されたり、その場の雰囲気に流されたりせずに、「自分の頭でじっくりと考える」という、未来を切り開いて いく力がつきます。
──弁護士を目指しているメンバーから、「創価の法律家の使命は?」「正義の法律家とはどういう人ですか?」と質問がありました。
池田先生 素晴らしい質問だね。
その際、 私は、長官が法律家を志したきっかけを尋ねました。
長官は、幼い日々を思い出すように原点を語ってくださいました。
田舎の生まれで、家庭が貧しかったこと。
そのために周囲から差別され、軽蔑され、 心ない言葉を何度も何度も浴びせられてきたこと。
まるで、押しつぶされるような思いで生きていたこと
「そのなかで、私は考えました 貧しい人々が虐げられ、 バカにされるような社会は、まちがっている、と。
それが、きっかけでした」
偉大な負けじ魂が、偉大な人生をつくるのです。
さらに、長官は言われました。
「『裁判官は、ピースメーカー(平和の創造者)であるべきだ』というのが私の持論なんです。
平和を促進すること──これこそ裁判官の本当の役割だと思います」と。
「創価の正義の法律家」の信念と響き合っています。
池田先生 峻厳なる創価の人権闘争の歴史です。当時の軍部政府は、国民に対し、自由に信仰することすら許さなかった。
人間が人間として生きていく最も根本の権利である、思想•信教の自由を押しつぶしてしまった。
悪法は、正義の人を弾圧する凶器となります。
牧口先生は牢獄にあって一歩も退くことなく信念を貫き、殉教されました。
牧口先生の獄中闘争は、まさに、「信教の自由」を守るための偉大な人権闘争だったのです。
皆さんが日々、勤行•唱題ができるのは、何よりも尊く、 価値のある「権利」なのです。
戸田先生は、よく言われていた。「世法(世間法)は評判」「国法は賞罰」「仏法は勝負」である、と。
皆さんのお父さん、お母さんは、よき隣人、よき社会人として世法•国法を尊重し、日々、仏法を実践して自他共の幸福の社会を築いています。
それは、人類が長い時間をかけて命がけで獲得してきた「人権」を、最も輝き光らせていく戦いです。
誰もが人間らしく幸福に生きる権利が尊重される、勝利の歴史を開いているのです。これ以上、尊い人生はありません。
──7月3日は、1945年、戸田先生が出獄された日です。
池田先生 15日間、勾留され、取り調べけました。当時の検察は横暴でした。
私に「罪を認めなければ、戸田会長を逮捕する」と迫ったのです。
悪いことなど、何一つしていないにもかかわらず、です。
苦悩しました。やっていないことを認めるわけにはいかない。
しかし、戸田先生の身に、もしものことがあれば……。
そして私は、戸田先生を守るため、いったんは罪を認め、裁判で正義を示し切ることを決意したのです。
戸田先生は、「裁判長は、必ずわかるはずだ」「最後は勝つ」と言われました。
弁護士は、私に、〝無実であっても、検察の主張を覆すことは難しい。
有罪は覚悟してほしい〟と告げました。
裁判では、 検事が事実を曲げてでも、私に罪をかぶせようとしました。
権力の魔性の底知れない恐ろしさです。
4年半に及んだ裁判で、私は堂々と真実を語り抜きました。
裁判長の判決は「無罪」──。 正義を満天下に示すことができました。
私は自らに言い聞かせました。
どれほど多くの罪なき市民が、不当な権力に苦しめられてきたことか、と。
そして、一生涯、信頼する青年たちと共に、 民衆を守り、民衆に尽くしゆくことを、誓ったのです。
以来、昨年までで300人以上が司法試験に合格しています。
池田先生 頼もしいね! 卒業後の大活躍の様子も伺っています。
日運大聖人は、「智者とは、世間の法から離れて仏法を行ずるのではない。
世間において、世を治める法を十分に心得ている人を智者というのである」(御書1466㌻、通解)と仰せになられました。
大聖人ご自身も、凶暴な権力から、民衆の正義を守るために、「問注」という当時の裁判を通して戦われ、見事なる勝利の歴史を刻まれています。
ともあれ、人間のため、民衆のため、正義のため──ここに真の法律家の魂がある。
皆さんの中から、そうした力ある法律家が一人でも現れれば、社会は必ず、変わっていきます。
未来と世界平和の扉を大きく開くのは、君たち、貴女たちの正義のスクラムなのです。