【第9回】ネパールのヒマラヤ  (2018年1月1日)

 
目標を立てて、さあ出発!
 
みなさん、新年おめでとう!
2018年が始まりました。
みなさんは、21世紀の始まりの時期に誕生した希望の王子であり、王女です。
ですから、みなさんの成長とともに21世紀は明るくかがやいていくのです。
新しい1年も、目標を決めて、いっしょに元気よく出発しよう! 
目標に向かって挑戦すれば、大きく前進していける。
勇気を出して挑んだ分だけ、夢に近づいていく。
毎日が楽しく、じゅう実する。山だって、高く登れば登るほど、広くすばらしい景色をながめられるのと同じです。
できることからでいい。新しい何かに思い切り挑戦してみよう。山の頂上を目指して一歩また一歩と登っていくように!
 
みなさんは「ヒマラヤ」という名前を聞いたことがありますか?
この地球上で一番高い8848メートルのエベレストをはじめ、日本一の富士山の2倍以上も高い山また山が、たくさんならんだ大山脈です。
このヒマラヤがそびえ立つ国の一つが、ネパールです。
199511月、私はネパールの首都カトマンズを訪れました。
大学での行事が終わった夕方、友人が「ヒマラヤが見えるかもしい」と、郊外の丘へ案内してくれました。
でも、着いた時は夕焼けの空のもと、山は雲にかくれていました。
私たちの姿を見て、遊んでいた子どもたちが集まってきました。みんな、きれいな目をキラキラとかがやかせていました。
その時です。山をおおいかくしていた雲が、まるでカーテンが開くように晴れました。
夕日は、まもなくしずもうとしています。
その最後の光に照らされ、黄金にかがやく巨大な山が、堂々と姿を見せてくれたのです。
「今だ! 今しかない!」
私はカメラを向けました。
 
いつも悠然とそびえ立っているヒマラヤの山々。ふだんは口数の少ない、いげんのあるおじいさんです。
でも時折、やさしいまなざしで、村の子どもたちに語りかけてくれます。
──やあ、みんな元気かな。
高いところから失敬、失敬。
きょうは雲が晴れて、みんなが暮らす村も、みんなの顔も、よく見えるわい。
じゃが、高いところは楽しい事ばかりではないぞ。風は強いし、雪は積もる。それでも、こうやって負けずに立っているんじゃ。
そうそう、きょうはみんなに、わしのすばらしい、負けじ魂の友だちの話をさせてもらおう。
それは「アネハヅル」というわたり鳥たちじゃ。
体が1メートルにもならなほどの、ツルの中では一番小さな鳥じゃ。
地面が平らなところでは、そんなに高く飛ぶことも、できはせん。
ところが、このツルたちは冬になると、ものすごい挑戦を始めるのじゃ。
この高いヒマラヤの山を越えて、暖かい国に向かっていくんじゃよ。
おどろいたことに、ふだんはそんなに高く飛べないこの子たちが、一生けんめいにつばさを広げて羽ばたきながら、山のまわりに吹く強い風をとらえて、みんなでいっしょに、どんどん高い空へと上っていくのじゃ。
「大丈夫かい? 
そんなに小さな体では、8000メートルもある、わしの頭の上を飛び越えていくのは、とても無理じゃろう」
わしは、思わずそう言った。
しかし、たくさんのツルたちは言うのじゃ。「それでも、やってみなければ分からないよ」と。
ツルたちは、はげまし合うように、空で一列になり、少しずつ高く、高く上っていく。
時にはうまく風に乗れなくて地面に押しもどされることもある。でも、あきらめることなく、また高い空へと挑んでいくのじゃ。
上空は水がいっしゅんで氷になるマイナス40度。酸素も、うすくて息苦しい。
風は嵐のように激しい。でも、つばさを広げたアネハヅルたちは、負けない。何度だって挑戦する。
どれくらい時間がたった時じゃったか。ツルたちはとうとう、1羽、また1羽と、次々にわしの頭を飛び越えていったのじゃ。
「なんと、ついにやりおった!」
わしは思わず、はく手を送った。ツルたちは自分に勝った喜びにあふれ、太陽をあびて金色《こんじき》にかがやき光っている。
そして、晴れやかな笑顔で手をふって、暖かい国を目指して、空の向こうへと舞い飛んでいった。
みんなも、きっと同じじゃよ。大きな目標に向かって進めば、それだけ大きな力が出るもんじゃ。
みんなの挑戦を、わしは、ずっと見守っておるぞ──。
 
ネパールは、仏教を最初に説き始めたブッダ釈尊)が生まれた国です。
ヒマラヤの写真を撮ったあと、私は、集まっていた子どもたちに呼びかけました。
ブッダは、偉大なヒマラヤを見て育ったんです。あの山々のような人間になろうとがんばったのです。
堂々とそびえる勝利の人へと自分をつくり上げたんです。みなさんも同じです。
すごいところに住んでいるんです。必ず、偉大な人になれるんです」
早いもので、もう23年になります。
当時、出会いを結んだネパールの少年少女たちも、みんな立派な青年に育ちました。
世界で大活躍する様子を伝えてくれる友もいます。
今、私の何よりの楽しみは、少年少女部のみなさんが、ヒマラヤのようにそびえる「勝利の人」へと成長していく姿を、思いえがくことです。
みなさんが、この1年、どんな夢を広げるだろう、そして夢に向かってどんな目標をかかげて、挑戦し羽ばたいてくれるのだろうと考えるだけで、私の心は、はずみます。
みなさんが、がっかりしたり、くやしい思いをしたりしている時も、私は、ずっとずっと、みなさんを信じ、応援し、題目を送り続けていきます。
さあ前進だ! 向上だ! 飛翔だ! 自分自身の夢に向かって、いっしょに挑戦を開始しよう!
 
池田先生とヒマラヤの国・ネパール
 
池田先生は19951011月にネパールを訪問し、名門トリブバン大学で講演を行うとともに、同大学から名誉文学博士号を受けられました。
その翌年、先生は東京・関西創価小学校の入学式に送ったメツセージで、ヒマラヤを飛び越えていくアネハヅルの話を通して、次のように語っています。
「みなさんには、絶対に負けない『勇気のつばさ』『希望のつばさ』があります。何があっても、がんばりぬく人が、一番、偉いのです」
先生は97年に、ネパールを舞台にした創作童話『ヒマラヤの光の王国』も作られました。今では中国語(繁体字)と韓国語に翻訳され、アニメにもなっています。