小説「新・人間革命」 勝ち鬨 四十三 2018年1月29日
バスに山本伸一と同乗した県書記長の山岡武夫が、岡城について語っていった。
周囲を山々に囲まれ、南に白滝川、北に稲葉川が流れ、深い渓谷が刻まれた台地は、そのまま自然の要塞となり、難攻不落の城であった。
義経への思いは、実を結ぶことなく終わったのである。
城は、十四世紀に志賀氏の居城となる。天正十四年(一五八六年)から翌年にかけての豊薩戦争では、島津の大軍が岡城を攻めた時、周囲の城が次々と落ちていくなか、青年城主・志賀親次が奮戦し、城を守り抜いたと伝えられている。
岡城は、明治の廃藩置県にともなって取り壊され、城館は失うが、苔むした堅固な石垣が往時を偲ばせているという。
伸一は、感慨深そうに語った。
志賀親次の奮闘は、竹田の同志の、さっそうたる戦いの勇姿と重なるね」
バスの車窓に、木々の間にそびえる、岡城址の石垣が見え始めた。
伸一は、歌を詠んだ。
「荒城の 月の岡城 眺めつつ
竹田の同志の 法戦讃えむ」
竹田の勇将は、衣の権威の横暴に敢然と戦い、民衆のための宗教の時代を開いたのだ。