小説「新・人間革命」 誓願 九十三 2018年7月16日


山本伸一は、皆の幸せを願いつつ訴えた。
「戸田先生は、『法華を識る者は世法を得可きか』(御書二五四ページ)との御文について、努力もせずに、『ご利益があるんだというような読み方は、断じて間違いである』と断言され、こう続けられている。
『自分の商売の欠点とか、改善とかに気のつかぬ者は、大いに反省すべきであろう。
されば、自分の商売に対して、絶えざる研究と、努力とが必要である。
吾人の願いとしては、会員諸君は、一日も早く、自分の事業のなかに、世法を識ることができて、安定した生活をしていただきたいということである』(注)
戸田先生の願いは、そのまま私の願いでもあります。
今、世界的に不況の風は厳しい。
しかし、私たちは、それを嘆くだけであってはならない。
『信心』によって、偉大な智慧と生命力を発揮して、見事に苦境を乗り切ってこそ、『世法を識る者』といえます。
信心をしていればなんとかなるという安易な考え方は誤りです。
信心しているからこそ、当面する課題をどう解決していこうかと、真剣に祈り、努力する
――その『真剣』『挑戦』の一念から最高の智慧が生まれる。
一切の勝利のカギは、この『信心即智慧』の偉大な力を発揮できるかどうかにある」
戸田城聖の生誕記念日である二月十一日――伸一が、戸田の広宣流布への歩みを綴った小説『人間革命』全十二巻の、「聖教新聞」紙上での連載が完結した。
一九六四年(昭和三十九年)十二月二日に沖縄の地で起稿し、翌六五年(同四十年)の元日付から「聖教新聞」に連載を開始。
途中、海外訪問が続いたり、体調を崩したりしたことなどから、長い休載期間もあったが、前年の九二年(平成四年)十一月二十四日に脱稿し、この二月十一日付で、千五百九回にわたる連載を終えたのである。
文末に伸一は、「わが恩師 戸田城聖先生に捧ぐ」と記した。
この書は、弟子・山本伸一の、広布誓願であり、師への報恩の書でもあった。
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 「天晴れぬれば地明かなり法華を識る者は世法を得可きか」(『戸田城聖全集1』所収)聖教新聞社