永遠なれ創価の大城 池田大作〉34 「人間革命」の大光 2018年9月15日


新たな師弟の大叙事詩を共々に
試練を越えて民衆勝利の太陽は昇る
 
何よりもまず、六日の未明、北海道を襲った最大震度七の激烈な地震で被災された方々にお見舞い申し上げます。
また六月の大阪北部の地震に続き、今月初め、関西・中部等で台風二十一号による暴風雨・高潮の災禍がありました。
二カ月前、中国・四国地方を中心に甚大な被害をもたらした西日本豪雨からの復興も途上です。
世界でもインドネシアの連続地震アメリカの頻発する山火事、ハワイの火山噴火など、災害が打ち続いています。
被災地域に早く安心の日が戻るよう念願するとともに、不屈の心で復旧・復興へ尽力されている全ての宝友に、懸命に題目を送っております。
私たちの祈りは「立正安国」の祈りであり「変毒為薬」の祈りです。
日本中、世界中のいずこの地にも通じていきます。
御本仏・日蓮大聖人は「わざはひ(禍)も転じて幸となるべし、あひかまへて御信心を出し此の御本尊に祈念せしめ給へ、何事か成就せざるべき」(御書一一二四ページ)と示されました。
苦難の時こそ、勇気と智慧と慈悲を奮い起こし、自他共の幸福、地域社会の安穏のため、「立正安国」「変毒為薬」の誓いの連帯を広げていくのが、創価の我らです。
季節の変わり目、北海道では厳しい冷え込みが始まっていると伺っています。わが同志の健康と無事安穏を、ひたぶるに祈念する日々です。
 
巌窟王の心継ぎ
 
過日、私は久方ぶりに山梨県を訪れた。
常に東京と一体で、いかなる広布の闘争にも、勇んで打って出てくれる「ああ感激の同志」こそ、わが山梨家族である。
婦人部を中心に題目の渦を起こしながら、明るく仲良く団結し、前進している息吹が頼もしい。
忘れ得ぬ功労の方々への追善も、妻と懇ろにさせていただいた。
山梨は、六十三年前、恩師・戸田城聖先生のもとで「水滸会」の野外研修を行った天地でもある。
今回、山中湖畔を車で走った際には、青年たちが相撲大会を繰り広げた場所も懐かしく見つめた。
――師匠の前での取り組みであった。皆、真剣勝負で闘魂をたぎらせ、ぶつかり合っていった。
先生も私も、前へ前へ突き進む「押し相撲」が好きだ。思い切って力を出し合う若人に、勝敗を超え、身を乗り出して声援を送ってくださった師の笑顔が忘れられない。
その黄金に輝く師弟の思い出の劇を、堂々たる王者の富士が、じっと見守っていた。
「強敵を伏して始て力士をしる」(同九五七ページ)。恩師は、この御文を通して、試練に挑む青年を励まされた。
過酷な宿命という強敵に、怯まず恐れず立ち向かってこそ、人間革命は成し遂げられるのだと。
戸田先生も愛読されていた、山梨出身の文豪・山本周五郎は語った。
「転んでも転んでも起きあがってゆく人を見ると、こちらまで勇気づけられる」
思えば、戸田先生の小説『人間革命』の主人公の名前は「巌九十翁」。
まさに転んでも転んでも起き上がり、師匠の正義を宣揚せずにはおかない不撓不屈の「巌窟王」の意義が留められていた。
そして私が続編として書き継いだ『人間革命』に登場し、恩師の逝去後の大前進を描く『新・人間革命』の主人公となるのは「山本伸一」――。
烈風にも揺るがぬ富士の如き、「巌窟王」の闘魂を受け継ぎ、踏まれても踏まれても伸びて、師弟勝利の大樹と聳え立つ決意が、「山本伸一」の名には込められている。
 
大歴史家の期待
 
英国の大歴史家トインビー博士からは、英語版の『人間革命』第一巻に真心あふれる「序文」を寄せていただいた。私たちがロンドンで対談を始める直前のことである。
その中で博士は、創価の師弟の「迫害に耐え抜く勇気」と「持続的な忍耐力」、さらに「行動をもって示す誠実さ」を讃えてくださった。
そして「創価学会は、既に世界的出来事である」とし、人間革命の運動が人類の精神的価値観を大転換していくことに、大いなる期待を寄せてくださったのである。
今、創価世界市民が、あらゆる試練を勝ち越えゆく「人間革命」の連帯で地球を結んでいることを、博士も笑顔で見守っておられるに違いない。
 
命の限り」と 
 
今月八日、小説『新・人間革命』の新聞連載が、全三十巻をもって、完結の時を迎えた。
沖縄での前作の起稿からは、五十四年に及ぶ執筆となる。
「命の限り」と覚悟しての挑戦であったが、全同志の真心に包まれ「更賜寿命」の大功徳で、牧口常三郎先生、戸田先生にお誓いした世界広布の大前進の中、連載の区切りをつけることができた。
弟子として感慨は無量であり、感謝は言葉に尽くすことができない。
あの地震直後の北海道では、婦人部をはじめ、同志の祈りと関係者のご尽力で、最終回の載った八日付紙面が印刷・配布されたと伺った。
あらためて、陰に陽に支え続けてくださった、日本中、世界中の全ての皆様に心から御礼を申し上げたい。
ありがたくも、「連載が終わって寂しい」との声も多く頂いている。
しかし、師弟して歩む我らの「人間革命」の挑戦に終わりはない。
私は、可憐な鼓笛隊の演奏会で目に留めた光景を思い出す。それは、舞台の奥で真剣に打楽器を叩く乙女が、演奏の際、楽器にパッと手を添え、余韻が残らないように工夫していた姿である。
「余韻にひたらず、常に新たな前進を!」――日蓮仏法の真髄は「本因妙」だ。
一つの「終幕」は、新たな戦いの「開幕」なのである。
まさに「月月・日日につよ(強)り給へ・すこしもたゆ(撓)む心あらば魔たよりをうべし」(御書一一九〇ページ)である。
  
二十五年前、『新・人間革命』の執筆を始めた直後の九月、私はアメリカの名門ハーバード大学で、「二十一世紀文明と大乗仏教」と題して講演を行った。
そこで訴えた一点は、宗教をもつことが人間を「強くするのか弱くするのか」
「善くするのか悪くするのか」
「賢くするのか愚かにするのか」――
この指標である。
変化の激流の中を生きることを運命づけられた人間が、より強く、より善く、より賢くなる
――どこまでも成長していく原動力となってこそ、「人間のための宗教」なのである。
そして、これこそが、我らの「人間革命の宗教」なのである。
この点、アメリカのデューイ協会元会長のガリソン博士も信頼の声を寄せてくださった。
“「人間革命」とは一人ひとりが、かけがえのない可能性を現実の中に開発し、社会全体に貢献していくのである。
ゆえに「人間革命」の理念を掲げるSGIは、「どこまでも成長する宗教」である”と。
 
誓願の旅は続く
 
『新・人間革命』に託した私の真情は、「戸田大学」で恩師から一対一の薫陶を受けたように、日本中、世界中の青年たちと、この書を通して命と命の対話を交わしたいということであった。
嬉しいことに、その願いの通り、今、いずこの地でも地涌の若人が「人間革命」の精神を学び、「山本伸一」の心を体して、人生と広布に、栄光の実証を威風堂々と勝ち示してくれている。
小説『人間革命』は、恩師が戦禍の暗闇を破って一人立つ、「黎明」の章で始まり、不二の弟子に受け継がれる「新・黎明」の章で終わった。
『新・人間革命』は、「旭日」の章で始まった。旭日が昇るように、創価の師弟は世界広布へ飛翔を開始したのだ。
恩師の分身として、仏法の慈光を世界へ届けるため、私は走った。
人間の中へ、民衆の中へ飛び込み、対話の渦を巻き起こしていった。そして、最後の章は、「誓願」として結んだ。
御書には、「願くは我が弟子等・大願ををこせ」(一五六一ページ)、「大願とは法華弘通なり」(七三六ページ)と仰せである。
師と同じ大法弘通の大願に立てば、力は無限に湧き出すことができる。それが、誇り高き地涌の菩薩の底力だ。
師弟の誓願の太陽は、母なる地球を照らし、未来永遠を照らす光源として、今、いやまして赫々と輝き始めたのである。
あの国にも、この天地にも、友がいる。民衆が待っている。
さあ、人類が待望してやまぬ「世界広布」即「世界平和」へ、新たな決意で、新たな出発だ。
我は進む。君も進め。
我は戦う。君も戦え。
我は勝つ。君も勝て。
我らは、共々に「人間革命」の大光を放ちながら、新鮮なる創価の師弟の大叙事詩を綴りゆくのだ! 君と我との誓願の旅を、永遠に! (随時、掲載いたします)
 
 
山本周五郎の言葉は『完本 山本周五郎全エッセイ〈増補版〉』所収「人生の冬・自然の冬」(中央大学出版部)。