第九の怒涛

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         第九の怒涛

 ロシアの名画 国立ロシア美術館蔵  アイヴァゾフスキー作 「第九の怒濤」
1850年 221X332cm 油彩、キャンバス

嵐の夜が明けた。難破船の折れたマストに船員が必死にしがみつく。そこにまた頭上をはるかに越える大波が、今にも襲いかかろうとしている。遠く波影に見え隠れする投げ出された同胞。生死を分ける窮地の瞬間、力の限りにかけ合う励ましの声と声・・・。大画面のリアル感に「あきらめるな!」との船人たちの叫びが聞こえてくるようだ。


「第九の怒濤」とは一番大きな波のこと。波の周期は一説に「3大8小」といわれ、小さい波が8回続くと、次に大きな波が3回訪れる。その最大の波を指す。船人は壮絶な戦いに疲れ果ててもなお、大波と正面から向き合っている。波を避けて逃げようと迂闊に旋回すると、横波を受け転覆するからだ。波に勝つには、波を迎え撃つしかない。

人生行路で嵐に遭ったら・・・作家のヘッセは言う。「苦痛の世界を通り抜ける最短の近道は、苦痛の真ん中を行くことだ」。やはり大海原に漕ぎ出した以上、目指す勝利の港へ正面突破で突き進むことである。最大の困難に勇んで立ち向かい、突破口を開く。そこに、すべてのカギがある。「第九の怒濤」の彼方には、黄金の旭日が戦う人を照らしている。さぁ、凱歌の帰還へ!・・・名画は希望のメッセージを放っている。