小説「新・人間革命」 陽光18 1月23日

 山本伸一は、慈悲について戸田城聖の指導を通して論じ、「私たち凡夫の場合は、勇気をもって行動することが慈悲に変わるのである」と力説した。

 そして、慈悲と勇気の実践である広宣流布に生き抜くことの大切さ、尊さを訴えたのである。

 「人間革命といっても一言すれば、地涌の菩薩の使命を自覚することが肝要であり、喜び勇んで広宣流布に生きる姿こそが人間革命であります。

 たとえ、名誉や財産があろうとなかろうと、真実の法をもって、人のため、社会のために尽くす人こそ、真実の“尊貴の人”であり、その人の生命は菩薩であります。

 最も苦しんでいる人に救済の手を差し伸べ、蘇生させてきた団体が創価学会です。また、そのために命をなげうってきたのが、歴代の会長なのであります」

 スウェーデンの女性教育者エレン・ケイは「最も偉大なる英雄は、権力や光栄のために闘う人ではなく、他人を助けるために闘う人である」(注)と記している。

 まさに創価の道こそ、最も偉大なる英雄の大道といえよう。

    

 伸一は、四月三日は、欧米環境設計協会のチーフコンサルタントと会談し、建築の理念、人間と建築などについて意見を交換した。

 少しでも時間があれば、あらゆる分野のリーダーと会い、対話し、平和への友情のネットワークを広げようと、心に誓っていたのだ。

 翌四日には、「サンディエゴ・コンベンション」に出席するため、サンディエゴ市に向かった。この市はロスから南へ約二百キロにあり、メキシコ国境に近く、海軍基地もあった。

 サンディエゴは初夏を思わせる気温であった。

 沿道のヤシが、南国情緒を感じさせた。

 伸一は、五日には、市庁舎の訪問、サンディエゴ会館の開所式への出席が予定されていた。

 そして、「サンディエゴ・コンベンション」第一日の六日には、パレードや花火大会が、第二日の七日には、サンディエゴ・スポーツアリーナで氷上文化祭、さらに、第十一回全米総会が開催されることになっていたのである。



引用文献: 注 エレン・ケイ著『戦争平和及将来』本間久雄訳、大空社=現代表記に改めた。