小説「新・人間革命」 宝塔47 4月28日

 “よし、ぼくも真剣に信心をしてみよう!”

 勝谷広幸は思った。

 彼は盲学校に復帰し、寮生活に戻ると、放課後は近くの学会員の家に行き、勤行をさせてもらうなどして、信心に励んだ。

 座談会に出ると、皆が息子や弟のように、温かく励ましてくれた。

 “これが学会の世界なのか! 信仰で結ばれた同志の世界なのか!”

 勝谷は感嘆した。

 さらに教学を学ぶなかで、大聖人は自分が幸せになるだけでなく、人びとを救済するために、広宣流布に生きよと教えていることを知った。

 皆が地涌の菩薩であり、末法衆生を救うために、この世に出現したと説いているのだ。

 “目が不自由なぼくも、地涌の菩薩なのだ。みんなを幸せにしていく使命があるのだ!”

 それは、彼にとって、この世に生を受けたことの、深き意味の発見であった。

 使命を自覚する時、人間の生命は蘇生する。その時、真の主体性が確立されるのだ。

 勝谷は、学会活動に参加すると、生命が躍動し、元気になっていくのを感じた。

 さらに、以前は、すぐにひがんだり、挫けたりしていたが、物事に前向きに取り組んでいけるようになっていった。

 やがて彼は、マッサージや鍼、灸の免許を取得。病院に勤務し、リハビリ治療などを行うようになった。

 また、視覚障害のあるメンバーと連携を取り合って励ましを重ね、「自在会」の結成にも力を尽くしてきたのである。

 山本伸一は、新しい脱脂綿を水に浸し、ほてった勝谷の顔も拭いた。

 勝谷は、なんとも言えない、さわやかな気分になった。

 「こんなことまでしていただいて、申し訳ありません」

 「よく頑張ってきたね。君の輝いた姿を見ればわかるよ」

 勝谷は、意を決したように語った。

 「先生。実は、もうすぐ子どもが生まれます。広宣流布のお役に立つように育てます」

 彼は前年の十月に、結婚していた。妻も大きなお腹をして、彼に付き添って参加していた。

 「おめでとう! 立派な広宣流布の後継者に育ててください」