小説「新・人間革命」 宝冠5  7月19日

ソ連対文連のポポワ議長の話を受けて、山本伸一は御礼を述べるとともに、今回の訪ソの決意を語った。

 「前回の訪問で私たちは皆様方と共同コミュニケを発表し、善隣友好の関係を強化し、文化、科学、教育分野における交流を拡大することを確認し合いました。

 今回の訪問には、創価大学民主音楽協会、富士美術館の代表が参加しております。それは、コミュニケに基づき、具体的に交流の拡大を図っていくためであります。

 両国の交流を口先だけで終わらせるようなことがあっては絶対にならないというのが、私の決意です。

私は真剣です。どのような障害も、反対も、恐れません。すべてを乗り越えて、必ず前進させていきます。誠心誠意、日ソの友好に全精魂を注いでまいります」

 すると、ソ日協会のコワレンコ副会長が、大きく頷きながら語り始めた。

 「山本会長が、生命の危険も顧みず、常に平和を主張し、人間と人間の友好に生き抜いてこられたことは、よく存じております。

私は、会長が第一回の訪ソ後、発表されてきた文章を読みました。ソ連と日本の友好を願う会長のお気持ちが脈打っていました。

 今、私は、山本会長と会うのが遅かったことを、非常に残念に思っています。

 会長は偉大な平和思想をおもちです。たとえば、核兵器に対しても『悪魔の兵器』と断言されております。

これは画期的な平和思想です。その思想の広がりが、創価学会の青年たちが集めた、一千万人の核兵器廃絶の署名であると思います。大変な壮挙です」

 アメリカと競い合うようにして、際限のない核軍拡の競争を続けてきたソ連の、党指導部のメンバーの発言である。ソ連もまた、平和を渇望しているのだ。

 伸一は、力強い声で応えた。

 「核の禁止については、さらに積極的な活動を続けてまいります。われわれ仏法者は、人間を重んじ、あくまでも人間のために、平和主義、文化主義を貫いてまいります」