小説「新・人間革命」  7月18日 宝冠4

翌五月二十三日の午前十時、山本伸一たちは、ソ連対文連を訪問。N・V・ポポワ議長やレドフスキー副議長、ソ日協会のコワレンコ副会長らと会談した。

 部屋に入ると、ポポワ議長の満面の笑みが目に飛び込んできた。

 「山本会長! また、対文連を訪問していただき、光栄です。お待ちしておりました」

 彼女は、伸一と固い握手を交わすと、峯子を力いっぱい抱き締めた。

 「嬉しい、嬉しい」と言いながら、頬をすり寄せる姿に、深い親愛の情が感じられた。

 懇談が始まると、ポポワ議長が歓迎のあいさつをした。

 「山本会長の第一次訪ソのことを、私たちは決して忘れません。両国の相互理解と信頼を深めるために非常に有意義な訪問でした。

 今回の訪問は、さらに大きな実りをもたらすものと思います」

 そして、伸一が、前回の訪ソのあと、新聞や雑誌に、多くの紀行文などを発表し、さらに、訪ソの映画を製作して、幅広くソ連を紹介したことに、心から感謝を述べた。伸一の誠意は深く伝わっていたのだ。

 また、ポポワ議長は、学会の平和運動に言及していった。

 「私は、学会の青年部が、山本会長の提案を受け、核兵器廃絶の一千万署名の運動を行ったことをお聞きしました。

 青年たちが民衆に根差した平和運動を展開していくならば、未来への平和の潮流が生まれます。山本会長の意志を受け継ぐ青年運動の前途を、私は心から祝福いたします。

 平和を愛する私たちの心は一つです。今日は、学会の平和への戦いを賞讃する意味で、対独戦勝三十周年を記念して、人類の敵であるファシズムとの戦いに勝利したソ連兵士の像を贈らせていただきます」

 それは、高さ四十二センチで、右手に剣を持ち、左腕でドイツの子どもを抱いている兵士のブロンズ像であった。力強さがあふれた、重厚な感じの像であった。