小説「新・人間革命」  1月26日 潮流1

太平洋上に光が走った。黄金の太陽が刻々と昇り始めた。それは、世界平和の朝を開く、仏法の人間主義の旭日を思わせた。

 一九七五年(昭和五十年)の七月二十二日午後十時に日本を発った山本伸一は、一路、ハワイをめざしていた。二十五日から三日間にわたってホノルルで行われる、第十二回全米総会を中心とした「ブルー・ハワイ・コンベンション(大会)」に出席するためである。

  

  師の写真  胸にいだきて  平和旅 

  

 伸一が初めて、世界への平和旅を開始した六〇年(同三十五年)十月二日、彼の上着の内ポケットには、恩師・戸田城聖の写真が納められていた。

 戸田は、世界の民衆の幸せと平和を願い続けた。晩年、病の床にあっても、「メキシコへ行った夢を見たよ。……行きたいな、世界へ。広宣流布の旅に」と語り、心は世界を駆け巡っていた。

 しかし、彼は海外に一度も出ることなく、愛弟子の伸一に「世界に征くんだ!」と遺言し、五十八歳の生涯を閉じた。

 世界の国々を訪問する伸一の心には、いつも戸田がいた。恩師を案内する思いで、平和旅を続けてきたのである。

 海外訪問の第一歩を印した、初のハワイ訪問から、早十五年を迎えようとしていた。あの日、ハワイの空港には、出迎える予定であったメンバーの姿さえなく、座談会に集った人も、わずか三十数人にすぎなかった。

 そのハワイで、アメリカ全土からメンバーが集い、州知事まで出席して、全米総会が行われるのだ。まさに隔世の感があった。使命に目覚めた同志の敢闘が時代を変えたのだ。

 「その使命に対する抑え難い信念によって火がつけられた、決然とした人々からなる小さな団体は、歴史の流れを変えることができる」(注)とは、ガンジーの卓見である。



引用文献

 注 ガンディー著『私にとっての宗教』浦田広朗訳、新評論