小説「新・人間革命」  3月16日 潮流42

 ワイキキの海は、青く澄み渡り、砕ける白い波が、陽光に光っていた。

 七月二十六日は、コンベンションのメーン行事となる全米総会が開催される日である。午前中、山本伸一は、ハワイ州のジョージ・アリヨシ州知事ドミニカ共和国のカルロス・ラファエル・ゴイコ・モラレス副大統領の訪問を受け、宿舎のホテルで会見した。

 伸一は、自分の方から出向いて、御礼を言おうと思っていただけに、その気遣いに、いたく恐縮した。

 アリヨシ知事とは、この年の一月、伸一が州政庁を表敬訪問し、創価学会の目的や歴史、平和・文化運動などについて語り合っていた。その折、七月にハワイで全米総会などを開催することを伝えた。知事は、全面的に協力を約束してくれたのである。

 伸一は、まず、アリヨシ知事との再会を喜び、今回のコンベンションに対するハワイ州の協力に心から感謝した。

 「誠にありがとうございます。ご厚意は、生涯にわたって忘れません」

 知事は、満面に笑みを浮かべて答えた。

 「会長がお元気なので大変に嬉しい。今後とも、どのような協力も惜しみません」

 続いて伸一は、ゴイコ・モラレス副大統領が昨夜、長時間にわたる前夜祭に出席してくれたことに対して、丁重に御礼を述べた。

 副大統領は、恐縮しながら言った。

 「とんでもないことです。すばらしい行事でした。まだ、感動が冷めません」

 御礼と感謝の言葉によって、信頼と友好の絆は強まっていく。人に対して、どれだけ「ありがとう」と言えるか、感謝の言葉を語れるか――実は、そこに人徳が表れるといっても過言ではない。

 伸一は、ハワイのアリヨシ州知事ドミニカ共和国のゴイコ・モラレス副大統領に、平和を象徴するものとして、平安朝時代の風物が描かれた日本画を贈呈した。

また、副大統領からは、ドミニカの国旗が伸一に贈られ、短時間だが、心通い合う交流となった。