小説「新・人間革命」  5月29日 波濤39

 「動物的な力だけをくらべるならば、女性が男性よりも劣るのは明らかでありますが、力の意味を“道徳的な力”とする場合には、女性は男性にくらべて計り知れない偉大な力を持つものであります。もし、非暴力が人類の守るべき教義であるならば、女性は未来の創造者としての地位を確実に専有するでありましょう」(注)

 これは、インド独立の父マハトマ・ガンジーの言葉である。

 女性は、平和の創造者である。

 二十一世紀を「平和の世紀」「生命の世紀」「人間の世紀」とするために必要不可欠なものは、女性の力である。

 山本伸一は、この一九七五年(昭和五十年)の秋、未来のために、若い女性たちを育てることに、全精魂を注いでいた。

 「やあ、こんばんは!」

 九月九日夜、東京・信濃町創価文化会館五階の大広間に、伸一が、突然、姿を現した。

 集っていたのは、女子部学生局のメンバーであった。

 驚きの歓声があがり、大拍手が起こった。

 女子学生の組織は、以前は、女子部とは別の、独立した組織形態となっていた。しかし、同世代の女性が、分かれて活動するのではなく、同じ女子部のなかの学生局として一体化することになり、七二年(同四十七年)の六月、新しいスクラムで、前進を開始したのである。

 学内での活動は、従来通りだが、地域にあっては、女子部員として、女子部の役職にも就き、活動することになったのである。

 女子部員にとって、女子学生との触れ合いは、知的触発や斬新な発想が得られ、組織を大いに覚醒していった。また、女子学生にとっても、社会人の女性と、広く交流していくことは、社会の現実を知り、視野を広げていくうえで、学ぶことは多かった。

 伸一は、女子部学生局の発足から三年がたち、活動も軌道に乗ったことから、ここで、共に新たな出発をしようと思ったのである。