小説「新・人間革命」  5月28日 波濤38

「波濤会」の写真展は、国内で着実に回を重ねる一方、一九九四年(平成六年)の十一月には、フィリピン・マニラ郊外のフィリピン大学で第二回の海外展が開催された。

 山本伸一は、この写真展に、自分の撮った写真十点を特別に出展した。

 以後、海外展は、中国、ベトナム、マレーシア、インド、ノルウェー、モンゴル、インドネシアと、伸一の写真とともに世界を回ることになるのである。

 また、二〇〇八年(同二十年)の六月には、イギリスのロンドンにある、IMO(国際海事機関)の本部でも開催された。

IMOは、船舶の安全や海洋汚染の防止など、海事問題に関し、協議や勧告などを行い、国際協力を促進する国連の専門機関である。

 海外十カ国目の開催となった、この写真展には、英国王室をはじめ、各国の大使など多くの来賓が訪れて鑑賞し、大好評を博したのである。

 「波濤会」は、外国航路の船員という仕事柄、日ごろ、学会活動に参加できず、悩んでいた青年たちに光を当てるところから始まったグループである。

しかし、使命を自覚した彼らは、逆境をはねのけ、世界広布の先駆者として立ったのだ。

 御聖訓には「生死の大海を渡らんことは妙法蓮華経の船にあらずんば・かなふべからず」(御書一四四八ページ)と仰せである。その幸福の哲理を携えて、彼らは走った。

 そして、海運業界に勇気の光を送る、希望の灯台となった。また、世界に平和と文化の橋を架ける、民衆交流のパイロット(水先案内人)となったのである。誰もが使命の人なのだ。誰もが勝利の人なのだ。

 山本伸一は、日々、祈り念じてきた。彼らの航海の無事と、人生の栄光と勝利を!

  

  人生の  波濤を越えて   黄金の朝