小説「新・人間革命」 6月 1日 勇気51

山本伸一が「人間革命の歌」を作った翌日の七月十九日夜には、早くも各地の会合で、この歌が、声高らかに歌われた。
 なかでも、大阪・豊中市の関西戸田記念講堂で、夕刻から行われた第二十五回女子部総会は、「人間革命の歌」に始まり、「人間革命の歌」に終わったかのような、晴れやかな新出発の集いとなったのである。
 "山本先生が権力の魔性と戦い、魂魄を留めた、常勝の天地・関西に、そして、日本中、世界中に、二十一世紀に響け!"とばかりに、「創価の華」たる女子部員の、はつらつたる歌声が、こだました。
 参加者は、この日、雨の中を集って来た。やがて、小雨となり、開会前にはあがった。
 総会も終わりに近づいたころ、整理役員が場外に出て、空を見上げた。息をのんだ。
 "虹よ! 虹だわ!"
 美しい、大きな七彩の虹が、暮れなずむ空に懸かっていた。その知らせは、女子部長の田畑幾子から、全参加者に伝えられた。
 「ただ今、空には、美しい虹が懸かっております。
『人間革命の歌』にある『君も見よ 我も見る 遙かな虹の 晴れやかな』の通りになりました。山本先生と共に『陽出ずる世紀』へ旅立つ私たちへの、諸天の祝福であると思いますが、いかがでしょうか!」
 大歓声が起こった。皆が頬を紅潮させた。
 「人間革命の歌」は、瞬く間に、全国で、さらに、世界各地の同志にも歌われるようになっていくのである。
 この年の八月から十月にかけて、県・方面の文化祭が盛大に開催される。どの会場でも、歓喜に満ちあふれた「人間革命の歌」の合唱が響いた。
 文化は、人間という生命の大地に開く花である。新しき文化の創造も、未来の建設も、そして、人類の宿命の転換も、一人ひとりの人間革命から始まる。
この歌は、創価学会のテーマともいうべき、その人間革命運動の推進力となっていったのである。