小説「新・人間革命」 5月 31日 勇気50

午後九時過ぎ、山本伸一が呼んだ、植村真澄美と松山真喜子が本部に到着した。彼女たちが、事務室で待機していると、伸一は、大きなカセットデッキを抱えて姿を現した。
 「よく来てくれたね。ありがとう。
 『人間革命の歌』に、さらに手を加えたんで、感想を聞かせてくれないか」
 伸一は、テープをかけた。
 「どうだい。よくなっただろ」
 彼女たちが、「はい!」と言って頷くと、彼は、満面に笑みを浮かべた。
 「それなら安心だ。これでいくよ!」
 そして、事務室にいた幹部たちにも、テープを聴かせた。さらに、最高幹部や各方面・県などの中心者に、次々と電話を入れた。
 「『人間革命の歌』を作ったよ。みんなに勇気を送ろうと作った歌だよ。私の生命の叫びだ。今から、歌を流すからね」
 そして、電話口をカセットデッキの前に置き、テープをかけるのである。
 歌が終わると、伸一は言った。
 「私たちは地涌の菩薩だ。日蓮大聖人の直弟子だ。この歌を歌いながら、一緒に、この世の使命を果たすために、頑張ろうよ!」
 電話は、随所にかけられた。
 初めは一台の電話で行っていたが、途中から、三台の電話を同時に使って、各地の代表に、歌を聴いてもらった。
 伸一は、植村と松山に語った。
 「この歌の音程を少し下げてもらえないだろうか。皆が歌いやすいようにね。お年寄りにも、子どもたちにも歌ってほしいんだ。
 それから、明日、関西で女子部の結成二十五周年を記念する総会があるが、そこで、この『人間革命の歌』を演奏してくれないか。
 私の出獄の日を記念し、戸田先生の弟子として、地涌の菩薩の使命を果たし抜く誓いを込めて作った歌だ。だから関西の地に、真っ先に、この歌を轟かせたいんだよ」
 「人間革命の歌」は、低い音程に移調された。翌日午前中には、富士学生合唱団によって録音され、テープが全国に発送された。