小説「新・人間革命」 2010年 5月29日 勇気49

山本伸一は、三行目の「正義と勇気の 旗高く」の個所は、音程を次第に上げていき、そして、「旗高く」は、繰り返して、強調しようと思った。彼は、歌を口ずさんでみた。
 音楽教師の青年が、譜面に手を入れ、歌いながらピアノを弾いた。
 「よし、これに決めよう!」
 伸一は言った。
 遂に、「人間革命の歌」が完成したのだ。一九七六年(昭和五十一年)七月十八日、午後八時四十分であった。
 早速、音楽教師に、ピアノを弾きながら歌ってもらい、それをテープに吹き込んだ。
 「この歌詞と譜面を、明日の聖教新聞に発表しよう。今なら、まだ、間に合うね」
 伸一は、こう言うと、録音された「人間革命の歌」のテープを聴いた。
 
 一、君も立て 我も立つ   広布の天地に 一人立て   正義と勇気の   旗高く 旗高く   創価桜の 道ひらけ
  
 二、君も征け 我も征く   吹雪に胸はり いざや征け   地よりか涌きたる     我なれば 我なれば   この世で果たさん 使命あり
  
 三、君も見よ 我も見る   遙かな虹の 晴れやかな   陽出ずる世紀は     凛々しくも 凛々しくも   人間革命 光あれ
    
 ホイットマンは歌った。
 「情熱、脈搏、活力、すべてにおいて測りしれぬ『いのち』をそなえ、奔放自在な振舞いができるよう神聖な法則どおりに造られた、陽気で『新しい人間』をわたしは歌う」(注)
 伸一は、その「新しい人間」への道を、歌い、示したかったのである。
 
■引用文献
 注 ホイットマン著「『自分自身』をわたしは歌う」(『草の葉』所収)酒本雅之訳、岩波書店