小説「新・人間革命」 6月 3日 敢闘1

時代も、社会も、時々刻々と変化を遂げていく。創価学会も、新しい人材が陸続と育ち、新しい会館や研修所も次々と誕生し、新時代を迎えようとしていた。
 しかし、いかに時代や環境が変わろうが、絶対に変わってはならないものがある。
 それは、広宣流布に生き抜く「創価の師弟の精神」である。
 山本伸一は、男女青年部が結成二十五周年を迎え、広宣流布の新しい時代に入った今こそ、後継の青年たちに、その精神を脈々と伝え抜いていかねばならないと考えていた。
 この一九七六年(昭和五十一年)の七、八月にかけては、夏季講習会、夏季研修会が、総本山をはじめ、全国各地の研修所や会館などで行われることになっていた。
伸一は、その講習会、研修会などで、多くの青年たちと対話しながら、「創価の師弟の精神」を訴え抜いていこうと、深く決意していた。
 七月二十三日、中部指導に赴いていた彼は、名古屋文化会館での中部最高会議のあと、全国から集って来た女子部「青春会」のメンバーと共に勤行し、指導・激励した。
 彼女たちは、前日の夜、三重県・ 白山町 に七月三日にオープンした中部第一総合研修所(現在の三重研修道場)で、第一回全国青春会総会を開催した。その報告を聞いた伸一は、ぜひ、会って励ましたいと思った。
 御聖訓には、「女子は門をひら(開)く」(御書一五六六ページ)と仰せである。一人の女子部を励ますことは、一家一族の幸福の門を開き、未来万代の勝利の門を開くことに通ずる。
 激励は、勇気の新風を送る。
 伸一は、夜には、中部第一総合研修所での諸行事に出席するため、出発の時刻が迫っていたが、時間をこじ開けるようにして一緒に勤行し、懇談のひと時をもったのである。
 「時間を無駄にすることのない人は、決して時間が足りないという不平は言わないものである。常に行動していれば、実に多くのことを達成できる」(注)とは、アメリカの第三代大統領ジェファソンの至言である。
 
■引用文献:  注 明石紀雄著『モンティチェロのジェファソン』ミネルヴァ書房