小説「新・人間革命」 6月 4日 敢闘2

全国から集った「青春会」のメンバーと勤行した山本伸一は、皆に視線を注ぎながら、語り始めた。
 「人生には、生老病死の四苦がつきまとっています。生まれてくること、生きること――そこにも、常に苦しみがあります。
 生を受けても、経済的に豊かな家に生まれる人もいる。反対に、食べていくことさえ大変な、貧しい家に生まれる人もいる。
 また、健康な体で生まれる人もいれば、病をもったり、病弱な体で生まれてくる人もいる。両親の愛情を一身に受けて育つ人もいれば、愛情に恵まれない環境で育つ人もいる。
 そこに宿命という問題がある。これは、学問や科学では、割り切れない問題です。既成の宗教でも、解決できません。日蓮大聖人の大仏法にしか、この問題を解決し、乗り越えていく道はありません」
 伸一は、なんのための信仰かを、メンバーに心の底からわかってもらいたいとの思いから、女性の一生に即して、宿命について語っていった。
 「皆さんは、やがて結婚されるでしょう。娘時代は、どんなに華やかで、名門の大学を出て、周囲から賞讃されていたとしても、結婚によって、どんな人生を歩むようになるかは、わかりません。
 夫や舅、姑との不仲に悩む人もいる。夫の仕事が行き詰まらないとも限らない。あるいは、夫が病に倒れたり、死別することもあるかもしれない。
 さらに、出産しても、生まれてきた子どもに先天的な病があるかもしれない。将来、子どものさまざまな問題で、悩むこともある。
 また、自分自身が、難病などで苦しむことだってあります」
 苦悩なき人生はない。それらの苦悩、宿命との格闘劇が、人生といえるかもしれない。
 その宿命を転換し、人生を勝ち越えていく、勇気と力の源泉が、仏法であり、信仰なのだ。そして、苦悩に負けない自身をつくり上げる場こそが、学会活動なのである。