小説「新・人間革命」 6月30日 敢闘23

霧雨けむる仙石に
  未来を築く若武者の
  師匠に誓いし この意気は
  天にこだまし 地に響く……
   
 午後四時半、凛然たる歌声が響き、鳳雛会の大会が始まった。
 運営委員長の抱負、色紙贈呈などのあと、マイクに向かった山本伸一は、静かな口調で語り始めた。厳粛な声であった。
 彼は、初代会長・牧口常三郎が揮毫した「創価後継」の色紙を皆に贈ったことは、創価学会の未来を託したことであると述べ、力を込めて訴えた。
 「大聖人が『浅きを去って深きに就くは丈夫の心なり』(御書五〇九ページ)との一節を引かれて御指導されていることは、諸君もよく知っていると思う。これは、まさしく鳳雛会の諸君への指針といえます。
 自分の幸せのみを追い求める、安易な人生を送るのであれば、この御指導を心に刻む必要はありません。
しかし、広宣流布という崇高な目的に生きるならば、何があろうが、『我は深きについて、我が道を征く』との決意で、この丈夫の心で、生涯、使命の大道を歩み抜いていただきたい」
 語るにつれて、伸一の声には、ますます力がみなぎっていった。
 「今日、創価学会は、世界的な大教団、大平和・文化団体に発展しました。それは、諸君のお父さん、お母さんたちが、私と共に、歯をくいしばり、血の涙を流しながら、必死になって戦い抜いてくださったからです。
私たちは、日蓮大聖人の仰せ通りに、また、牧口先生の仰せ通りに、戸田先生に誓った通りに、すべてやり抜いてきました。
 今度は、諸君です。君たちが、この基盤の上に、十年、二十年、三十年と、さらに、学会を立派に育て上げていただきたい。
 人類の幸福のために、広宣流布の大拡大を成し遂げていくことが、諸君の久遠の使命であり、宿命なんです!」