小説「新・人間革命」 薫風1 2012年 1月28日

 九州が  ありて二章の 船出かな
  
これは、創価学会が、「広布第二章」の大空へ新たな飛翔を開始した一九七三年(昭和四十八年)の三月、北九州市で開かれた第一回「九州青年部総会」を記念して、山本伸一が詠んだ句である。
句には、九州の同志が担うべき、広宣流布の『先駆』としての使命を、断固として果たし抜き、創価の牽引力になってほしいとの、伸一の限りない期待が込められていた。
七七年(同五十二年)五月二十二日の夕刻、北九州文化会館(現在の北九州平和会館)の庭で、この句碑の除幕が行われた。
伸一が見守るなか、同志の代表によって、句碑に掛けられた白布が取り除かれた。
石に刻まれた金色の文字が、鮮やかに光っていた。伸一の筆である。
薫風に、拍手が空に舞った。
伸一は、集っていた九州の同志に語った。
「いよいよ九州の時代が来たよ。
広宣流布は東京から始まった。そして、関西も立ち上がり、常勝の新風を送り、学会は大きく羽ばたいていった。
今度は、九州の出番だ。九州が立つ時が来たよ。これからは、
永遠に『九州ありての学会』『九州ありての広布』でなければならない。
九州の使命である『先駆』ということは、最後まで、常に『先駆』であり続けるということです。
最初は、威勢よく、先陣を切って飛び出しても、途中から疲れて遅れ始め、最後は『びり』になってしまうというのでは、意味がありません。
初めの勢いだけで、『先駆』であり続けることはできない。持続が大事です。そのためには、緻密な計画性に基づいた地道な努力が必要なんです。
したがって、『先駆』とは、『堅実さ』に裏打ちされていなければならないことを知ってください」
瞳を輝かせながら、皆が頷いた。