小説「新・人間革命」 薫風2 2012年 1月30日

山本伸一は、山口訪問を終え、北九州文化会館に到着するや、直ちに、記念植樹、記念碑の除幕式に臨んだのである。
それから彼は、館内を回った。北九州文化会館は、一月に開館した新法城である。
伸一は、九州の幹部らに言った。
「北九州は、先駆の使命を担う九州のなかでも、その先駆となってきた。そこに、立派な文化会館ができた。
また、九州各県に次々と新しい文化会館が誕生している。大発展の基盤は着々と整いつつある。この文化会館を活用して、青年をどんどん育成していこう。
いかなる世界でも、青年を本気になって育てなければ、未来の発展も、勝利もない。すべてを、青年のために注ぎ尽くすんだ」
ほどなく、三階の和室で、伸一を囲んで懇談会が行われた。参加者は、男子部を中心とした九州方面や福岡県の幹部ら十数人であった。
懇談が始まると、福岡県男子部長の安宅清元が、襟を正して語り始めた。
「本部幹部会の司会では、ご迷惑をおかけし、大変に申し訳ありませんでした!」
安宅は、四日前の五月十八日に福岡で行われた五月度本部幹部会で、司会を務めた。
しかし、疲れていたのか、声に張りがなく、元気がなかった。
集った人びとも、『晴れの本部幹部会の雰囲気には、そぐわない司会である』との感じをいだいたようだ。
さまざまな折に、直接、各地の青年たちを育成したいと考えていた伸一は、今、この時が、訓練の絶好の機会だと思った。そして、安宅に、あえて、厳しい口調で言った。
「そんな声では、みんなが、やる気をなくしてしまうよ。司会交代!」
何度も司会を経験している、東京から同行してきた青年部の幹部に代わった。
安宅は、『本部幹部会という重要な行事で、なんという大失態を演じてしまったんだ』と思うと、生きた心地がしなかった。
しばらくすると、伸一が笑顔で言った。
「司会復帰! 先輩のやり方を見て、どうすればいいか、学んだね」