小説「新・人間革命」人材城 44 2012年5月31日

熊本県の代表メンバーとの懇談会で、県長の柳節夫から、五木の同志の報告を聞いた山本伸一は語った。
「五木に伝わる子守唄の守子のような境遇の子どもたちを、なんとしても幸せにしたいというのが、牧口先生の思いであり、創価教育の原点です。
また、それが学会の心です。断じて不幸をなくそうという、牧口先生の、この心を知ってほしいんです。
五木の皆さんには、こうお伝えください。
『やがて、村の多くの集落が湖底に沈んでしまう日が来るにせよ、一日一日、力の限り、広宣流布に走り続けてください。
地域の人びとの胸に、妙法の種子を植え続けてください。
集落は湖底に消えても、妙法の種子は、幸せの花を咲かせ続けていきます』と」
「はい!」
答えたのは、五木を擁する人吉本部の、婦人部の幹部であった。彼女は、伸一に、五木の現況を語った。
「五年前に、先生の激励の手拭いを届けていただいた六月八日を、『五木の日』とし、毎年、この日にはセミナーを開き、地域広布の活動を推進しています」
「ありがとう。すごいことです。一つ一つの思い出を大切にし、それを未来の前進の糧にしていく。そこから、勝利の力が生まれていきます。
五木に行きたいな。ここから五木までは、どのぐらいかかりますか」
「車で三時間ほどです」
「三時間ですか。それなら、今回は行けないな。本当は、皆さんのお宅を、一軒一軒回って、激励したいんです。
五木の皆さんとは、私は、直接、お会いして語り合ったことはないが、一念はつながっています。まだ見ぬ皆さんの顔が、私の胸にありありと浮かんできます。
これが真の同志なんです。これが師弟なんです」
そして、伸一は、「五木の同志に、句を贈ります」と言って、色紙にペンを走らせた。
「忘れまじ 六月八日の 花の顔」