小説「新・人間革命」厚田 12 2012年6月28日
「わが同志と一緒に、どこかで静かに眠りに就きたい──この恩師の遺言を、生死不二の原理に照らしていうならば、再び新たなる生命を蘇らせ、共々に広宣流布に戦っていこうとの意味でありましょう。
その永遠の広布旅、師弟旅の象徴ともいうべきものが、この墓地公園であります。
恩師・戸田先生のお喜びもいかばかりであろうかと、思わずにはおれない心境であります。
それは、伸一の偽らざる心境であった。
彼は、誇らかに、宣言するように語った。
「創価学会の基盤も、これで完璧に出来上がったと言っても過言ではありません!
この恩師ゆかりの厚田の大地は、私にとって『心の故郷』であります。
これからも、この地を訪れ、生涯にわたって同志を守り、恩師の遺徳を偲びながら、広布開拓の歴史を創っていきたいと念願してやみません。
皆さん方も、苦しい時、辛い時、行き詰まった時には、この地を訪れて墓参し、唱題して、恩師の心をわが心とし、蘇生して帰ってください。
この日は、戸田講堂の晴れの開館の儀式である。伸一は、?今日は厳しいことは言わず、ここで話を終えようか?と思った。
しかし、広宣流布の道は常に険路である。この先、何が待ち受けているかわからないのが現実である。そう思うと、彼は、皆の覚悟を促さないわけにはいかなかった。