新社会人に贈る ㊤ (2012.5.22/23/24)

新しい人材の活躍こそ社会の希望
 
仕事と信心は別々ではない。仕事を最大に充実させる原動力が、信心なのです。
 
名誉会長 はじめに、先日(5月6日)の竜巻で被災された茨城、栃木の皆様方に、あらためて心からお見舞いを申し上げます。
 本当に甚大な被害でした。私も強盛に題目を送っています。
 わが尊き友が懸命に復旧に当たられている様子を、胸を熱くして、うかがいました。青年部をはじめ多くの同志が応援に駆けつけてくださっていることも、感謝に堪えません。
 
 ──池田先生と同じ心で、私たちも、全同志の健康、絶対の無事故を真剣に祈ってまいります。
 慌ただしく新年度がスタートして、はや2カ月、新社会人として生活を始めたメンバーも、数多く奮闘しています。また、新しい職場や新たな立場になった人もいます。
 今回は、ぜひ、フレッシュマンたちに励ましのエールをいただければと思います。
 
名誉会長 自分が希望する仕事に就いた人も、そうでない人もいるでしょう。でも、私は全ての新出発の友に、心から「おめでとう!」と申し上げたい。
 私のところにも、多くの報告や決意が寄せられています。それぞれが、本当に凛々しく清々しい。
 この真剣な新人たちの息吹こそ、職場を生き生きと発展させゆく力です。「新しい時代」の「新しい人材」が活躍しゆくことこそ、社会の宝であり、希望です。
 みんな、体調は大丈夫か。朝ごはんは、ちゃんと食べているか。睡眠はとれているか……。
 新社会人の皆さんが、健康で、元気はつらつと、悔いのない一日一日を前進していかれることを、私は祈りに祈り抜いています。
 先輩たちから大いに学びながら、たくましく明るく、新鮮な力を発揮していってください。
 もちろん、最初からうまくいく人なんていません。失敗もある。叱られることもあるでしょう。「この仕事は向いてない」と悩む時もあるかもしれない。
 でも、皆さんには、張り切って第一歩を踏み出した「初心」がある。大事なのは「今」の決心です。「これから」の行動です。
 この仏法の「本因妙」の精神を、アメリカのジャズ音楽家ウェイン・ショーターさんは、実践的に、「初心を忘れないこと」と捉えていました。「初心」を堅持していく生命は、みずみずしく創造力を湧き立たせていけます。
 皆さんには、「絶対勝利」の信仰があります。
 「未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ」(御書231ページ)と記されている通り、決意して行動を開始した人は、現状がどうあれ、すでに勝つ因をつくった人です。私は未来の勝利者の皆さんに、最大の祝福を贈りたいのです。
        †
 ──仕事で全く知らない土地へ移ったり、寮に入ったり、生活環境が大きく変わったりする場合があります。忙しくて学会活動はもとより、勤行・唱題も、ままならなくなることがあります。
 
名誉会長 新出発をした皆さんに申し上げたいのは、ともかく「焦らないで」ということです。また「粘り強く」ということです。要領が悪くたってかまいません。人と比べる必要もない。一つ一つ眼前の課題にベストを尽くしながら、足元を固めていくことです。
 自らやってみて、その上で、自分一人ではできないことがあれば、人に素直にお願いすることも、よく分からないことを率直に尋ねることも、社会人として大事な条件です。
 「教えてください」と、先輩たちにぶつかっていく青年は、ぐんぐん力をつけていきます。
 誰もが乗り越えてきた道なのだから、心配することはありません。何かあれば、信頼できる先輩に相談してください。
 御書には「助ける者が強ければ倒れない」(1468ページ、通解)と仰せです。学会は、最も心強い「善知識」の世界です。
 忙しくて、なかなか会合に出られなくても、思うように題目があげられなくても、同志と連携を取り合っていくことが、どれほど支えになり、励みになるか。まさに福運あふれる“幸福の安全地帯”です。
 だから絶対に離れてはいけません。少しでも縁していこうという心が大事です。
 新社会人の友を受け入れる地域の方々には、どうか温かく迎えていただくよう、お願いします。
 日蓮大聖人は、「御みやづかいを法華経とをぼしめせ、『一切世間の治生産業は皆実相と相違背せず』とは此れなり」(同1295ページ)と仰せになられました。
 自分の仕事を法華経の修行であると思っていきなさい。現実社会のあらゆる営みは、全部、妙法と合致するものなのですと、教えてくださっています。
 どんな仕事であれ、どんな立場であれ、題目を唱える自分自身が智慧を出し、力を尽くして、世のため、人のため、誠実に価値を創造していく。それは、全て「心の財」を積む仏道修行になります。
 仕事と信心は、別々ではない。
 むしろ、仕事を最大に充実させていく原動力が、信心であり、学会活動なのです。
 
 ──大聖人が門下に「御みやづかいを法華経」と教えられたのは、御自身に3度目となる流罪の迫害が加えられるかもしれないという緊迫した状況の中でした。
 
名誉会長 その通りです。大聖人は、もし3度の流罪となれば「百千万億倍のさいわいなり」(同ページ)と悠然と見下ろされながら、弟子たちに自らの使命の職場で、一歩も引かずに、断固として勝利の実証を示し切っていくように、励まされたのです。
 この御聖訓通りに戦って自身を鍛え上げてきたのが、学会の誇り高き伝統です。
 草創期、職場で信心に反対されることが多かった先輩たちは、「信心は一人前、仕事は三人前」と歯を食いしばって、両方とも頑張ってきました。「仕事で実証を示してみせる!」と祈り抜き、仕事をやり切ってきました。
 大変だからこそ、策によらず、真っ正面から腹を決めて祈って、人の何倍も努力し抜いたんです。
 さらに今も、「仏法即社会」「仏法即勝負」の戦いを毅然と続けている、わが社会部、専門部の方々の勝利の体験を、私は感銘深くうかがっています。
 仕事の姿勢には、その人の人生観も人間観も表れる。「何のために」生きるのかという一念が表れる。その最も深く、最も強く、最も正しい一念こそが、信心です。
 皆さんには、広宣流布という、世界の平和と人類の幸福を実現しゆく究極の大目的がある。「広宣流布」という世界一の大願に立って、自らの日々の仕事に全力で挑むこと──それが「御みやづかいを法華経」の心です。
 「世界一の大願」に向かって戦う一人の青年として、「この仕事で世界一の自分にさせてください」「世界一の職場にさせてください」「世界一の会社にさせてください」と大きく強く祈ることです。
 信心は、一個の人間としての実力となって発揮されます。真剣に祈り抜き、勉強し、精進し、創意工夫して、若いエネルギーを仕事にぶつけていく。そうして出た結果が、その時の最高の結果です。思うようにいかなければ、また祈って挑戦し、開拓すればいいんです。私もそうしてきました。
 世界一の師匠に薫陶を受けているのだから、世界一の仕事をするのだ。世界一の戸田先生を仕事で宣揚してみせるのだと、私は祈り、働きました。
 ともあれ、会社の大小や職場の環境で、自分の仕事や人生の勝ち負けは決まらない。全て自分です。自身の一念で決まるのです。
 仕事と活動については、また、じっくり語り合おう。
 
「朝に勝つ」人が人生の勝者です
 
単調で地味に見える基本を着実に身につけてこそ 大きく飛翔する力となる
 
 ──3月の語らいで、「あいさつ」の大切さを教えていただき、新社会人の皆さんにも、その実践を呼びかけていただきました。
 企業のトップの方からも、本当に創価の青年は清々しい、爽やかだ等の声が寄せられています。
 
名誉会長 「あいさつ」は、瞬時に心と心を結びます。相手が初対面であっても、苦手なタイプであっても、心は通い合う。
 相手があいさつを返さなくても、構いません。あいさつは、自分から先にした方が勝ちです。人を尊敬できる人が尊敬される人です。明るく誠実に、心を込めてあいさつできる人が、偉い人です。あいさつは境涯の芸術です。
 「おはようございます!」「こんにちは、よろしくお願いします!」「ありがとうございます!」
 どうせ、声を出すんだから、元気にやれば、お互いに気持ちがいいじゃないか。その生命の勢いが、一日の勝利の扉を大きく開きます。
 どんどん、あいさつしていくんです。どんどん、味方を増やすのです。相手の心の諸天善神を呼び起こすんです。もちろん、声が出せない状況なら、目礼でもいい。
 私が21歳で戸田先生の会社に入って実践したことがあります。
 一つは、元気いっぱいのあいさつで先輩方を迎えることでした。
 もう一つは、毎朝、始業時間の30分前には出勤して、職場を清掃することです。
 元気なあいさつが響く会社は、発展します。職場がよく整理されている会社は、事故が無くなる。
 戸田先生をお守りするために、先生の事業を発展させるために、誰に言われなくとも、私は実行しました。
 朝が勝負です。朝で決まる。
 戸田先生も「職場に遅れて来て、上司に叱られるような人間は偉くなれない。特に、新入社員として信用を積んでいくためには、朝早く出勤するべきだ」と語っておられた。
 一日に勝つための生命の暁鐘が、朝の勤行・唱題です。
 信心をしているからこそ、一日の出発を勝つ。そして、人生に勝利していくのだ──先生は、こう指導されたのです。
        †
 ──仕事で失敗して、すっかり自信を失ってしまうこともあります。
 
名誉会長 失敗は、敗北ではありません。いな、青年には、失敗や悩みは、前進の証拠です。前に進んでいるからこそ、向かい風がある。転ぶこともある。でも、それで下を向いてしまわない。また立ち上がるのです。
 アメリカの大事業家であり、映画人でもあったウォルト・ディズニーは語っています。
 「私は失敗した。だがそこで多くの事を学んだ。若いころにひどい目に会い、失敗する事は重要なんだって、思うね」
 
 ──30年前、先生は長崎で、大切なお皿を誤って割ってしまった人のことを通して、指導してくださったことがあります。
 取り返しのつかない失敗をしてしまった。どうお詫びしようかと身を小さくしていた人に、先生は「自分で悩んだのだから許されるんだよ」と励まされました。
 
名誉会長 そうだったね。これは、戸田先生の教えです。
 ある青年が電車に乗り遅れて、大事な会合に大幅に遅れてしまったことがありました。その人は青い顔をしてお詫びの言葉を探していました。戸田先生は厳しい方でしたから、どんなに叱られるかと、周りもドキドキしていた。
 すると先生は、「もういいよ。自分で悩み、苦しみ、それで償われているのだから、何も言うことはないよ」と語られました。
 先生は、反省している青年の心をくみとってくださったのです。
 
 ──池田先生は、戸田先生のエピソードを紹介され、「反省し、苦しんでいる人を、責めるような心の狭い人ではいけない。指導者は、人々の心をよく知っていかなければならない」と教えてくださいました。長崎の同志が大切にしているご指導です。
 
名誉会長 皿を割ってしまった人は、その失敗を原点として、本当にけなげに頑張ってきました。30年経った今も、その時のことを忘れず、「恩返しを」との心で後輩たちを励ましてくれている。私は「偉いな」と見守っています。
 若い皆さんは、失敗を恐れないでほしい。もちろん失敗したら、反省は大切です。だからといって落ち込んで、それにひきずられては、何にもならない。一切が勉強であり、いくらでも取り返せるんだから。クヨクヨしてはいけない。
 「失敗は成功の母」です。「挑戦しないこと」──それが、青春の唯一の敗北だと、私は思う。